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262.黒い神様に食べられちゃう
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桃を半分あげると言ったら、ぱかっと二つに割れた。すごいんだよ、指でなぞるみたいにしたら割れたの。柔らかいのに潰れないんだ。真似してみたけど、僕には出来なかった。
笑いながら半分を受け取った黒い神様は、僕の黒髪を褒めてくれる。
「綺麗な色だ」
「ありがとう! 僕ね、セティと同じ色に生まれて幸せなの。セティを知ってる?」
「タイフォンだな」
「そう、タイフォン神様だよ」
桃を齧ると、いつもより酸っぱかった。まだ熟してなかったのかな? 黒い神様は気にしないで食べた。
「あなたも神様?」
「そう、だな。一応神に属する存在だ」
難しい。属するとか存在って何だろう。神様に一応ってあるの? それにこの神様には僕の声が聞こえてない気がする。セティは僕が思ったことに、直接返事をするから。
「タイフォンが好きか? 優しくしてくれるか」
「うん、すっごく大好き。優しいし、綺麗だし、僕に愛してるって言う。やっと食べてもらえたの」
にこにこしながら聞いていた神様が動きを止めて、「食べた」と繰り返す。だから頷いて、詳しく説明を始めたら途中で止められた。神様だから食べ方は知ってるよね。舐められるのも食べられるのも、キスも大好き。全部セティがいい。
両手を広げて説明し、桃を食べ終えた種を地面に埋めた。種を植えると出てくるんだって。ガイアが教えてくれたの。僕は豊穣神になったから、植えて「また会おうね」と声をかける。それがお仕事になった。
僕の大切なお仕事は、セティに食べてもらうこと。セティのお嫁さんでいること。豊穣のお祈りをすること。前はトムのお世話もしてたよ。お仕事の説明をしたところで、黒い神様が僕に近づいて額にキスをした。
額と頬は平気、唇はダメなの。だから唇は手で押さえておく。神様だけど間違ったら大変だから。頬にもキスされて、唇を隠した手の上にも……。
びっくりした。ここはダメなのに! セティ、ごめんなさい。僕、黒い神様に食べられちゃうかも。突然怖くなり、セティを呼ぶ。
唇にキスされそう、どうしよう。セティ! 僕を抱き締める黒い神様の腕の中で、必死だった。その声が届いたのか、水の中からざばっとセティが現れる。泳いできたの? 驚きすぎて固まっていると、セティが舌打ちして濡れた髪をかき上げた。
「オレの伴侶だ、さっさと離せ」
「わかってる、奪う気はないよ」
「食われそうだと泣きながら、オレに助けを求めてきたぞ」
黒い神様は僕の額にもう一度唇を押し当て、腕を緩めてくれた。すぐにセティが後ろから僕を抱き寄せる。そのまま抱っこされて、首に手を回して抱き着いた。
「それで今頃何の用だ?」
「ひどいな、お前は俺で俺はお前だ。勝手に切り捨てておいて、知らないは通らない。それも伴侶を見つけたなら、なおさらだ」
恐る恐る振り返った先で、黒い神様は怖い顔をしていた。
笑いながら半分を受け取った黒い神様は、僕の黒髪を褒めてくれる。
「綺麗な色だ」
「ありがとう! 僕ね、セティと同じ色に生まれて幸せなの。セティを知ってる?」
「タイフォンだな」
「そう、タイフォン神様だよ」
桃を齧ると、いつもより酸っぱかった。まだ熟してなかったのかな? 黒い神様は気にしないで食べた。
「あなたも神様?」
「そう、だな。一応神に属する存在だ」
難しい。属するとか存在って何だろう。神様に一応ってあるの? それにこの神様には僕の声が聞こえてない気がする。セティは僕が思ったことに、直接返事をするから。
「タイフォンが好きか? 優しくしてくれるか」
「うん、すっごく大好き。優しいし、綺麗だし、僕に愛してるって言う。やっと食べてもらえたの」
にこにこしながら聞いていた神様が動きを止めて、「食べた」と繰り返す。だから頷いて、詳しく説明を始めたら途中で止められた。神様だから食べ方は知ってるよね。舐められるのも食べられるのも、キスも大好き。全部セティがいい。
両手を広げて説明し、桃を食べ終えた種を地面に埋めた。種を植えると出てくるんだって。ガイアが教えてくれたの。僕は豊穣神になったから、植えて「また会おうね」と声をかける。それがお仕事になった。
僕の大切なお仕事は、セティに食べてもらうこと。セティのお嫁さんでいること。豊穣のお祈りをすること。前はトムのお世話もしてたよ。お仕事の説明をしたところで、黒い神様が僕に近づいて額にキスをした。
額と頬は平気、唇はダメなの。だから唇は手で押さえておく。神様だけど間違ったら大変だから。頬にもキスされて、唇を隠した手の上にも……。
びっくりした。ここはダメなのに! セティ、ごめんなさい。僕、黒い神様に食べられちゃうかも。突然怖くなり、セティを呼ぶ。
唇にキスされそう、どうしよう。セティ! 僕を抱き締める黒い神様の腕の中で、必死だった。その声が届いたのか、水の中からざばっとセティが現れる。泳いできたの? 驚きすぎて固まっていると、セティが舌打ちして濡れた髪をかき上げた。
「オレの伴侶だ、さっさと離せ」
「わかってる、奪う気はないよ」
「食われそうだと泣きながら、オレに助けを求めてきたぞ」
黒い神様は僕の額にもう一度唇を押し当て、腕を緩めてくれた。すぐにセティが後ろから僕を抱き寄せる。そのまま抱っこされて、首に手を回して抱き着いた。
「それで今頃何の用だ?」
「ひどいな、お前は俺で俺はお前だ。勝手に切り捨てておいて、知らないは通らない。それも伴侶を見つけたなら、なおさらだ」
恐る恐る振り返った先で、黒い神様は怖い顔をしていた。
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