上 下
251 / 321

249.すごく気持ちいいキス ※微

しおりを挟む
 外の光が反射する明るい場所で、僕はセティとキスしてる。人前じゃないから、唇のキスもいいんだね。こうしてキスしてる間に、全部食べられちゃえばいいのに。セティは痛くないよって言ったけど、ちょっとだけ怖かった。僕が違う形になるんじゃないかな。

「触れていれば声が聞こえる」

 セティの声、水の中なのに聞こえる! 閉じた目を開けたら、ゆらゆらと黒髪が漂っていた。セティの後ろに広がる黒髪がすごく綺麗。僕の髪も同じ色で、ふわふわと周りを泳いでる感じだった。ここのお水は優しい。気持ちよくて時間が分からなくなるの。

 セティはどんどん奥へ泳いでいく。底は見えなくて、抱っこされた僕は離れないようにしがみ付いた。凄いな、登ってきた山の中身は水だったのかも。深くて、山の高さより潜った気がした。

 ふっと明るくなって、次に眩しくて目を手で覆う。

「着いたぞ」

 ざばっと水の音が聞こえた。水の中にいた時は聞こえなかった水音、続いて僕は水から出た。ゆっくり目を開けたら、そこは森みたいな風景が広がっている。山を突き抜けちゃったの?

「くくっ、イシスは面白いことを考える」

 大きい山の中身は全部、あの温かい水かと思った。その向こう側は山の反対側じゃないみたい。ここはどこだろう。さっきは眩しかったのに、今は気持ちいい木陰にいる。足元に水があって、下から湧き出ていた。僕がいるのは石で出来たお風呂みたいな場所だ。

「おいで、イシス」

「うん」

 もうすでにセティに抱っこされてるけど、石の階段に座ったセティの上に乗る。セティの膝にいつも通り跨って、目の前で手を広げた腕の中に飛び込んだ。肌が直接触れるの、僕は好き。気持ちいいし、セティとの間が近いよね。腰に回された手が、ぐいっと僕を引き寄せた。

 セティと密着したら、隙間がなくなって嬉しい。僕とセティが混ざって一緒になるのが、食べられるってこと? 考えていたら、セティのキスが僕の唇を塞ぐ。吸われて舐められた。唇をはくっと開けた途端に、セティの舌が入ってくる。厚くてぬるっとして、とても甘い。

「ふっ、ん……うっ」

 夢中になって吸った。甘い、美味しい。僕の口の中を全部舐める舌を追いかけて、僕はセティの口の中もいっぱい舐めた。零すのがもったいなくて、一生懸命啜る。お腹の奥がじくじくして、少しだけお尻を動かしたら、背中をセティの手が撫でた。

 ぞくっとする。

「んっ、うぅ」

 変な声が出ちゃう。でもセティの唇が僕の声を吸い取った。気持ちいいよ、溶けちゃいそう。このままセティに吸い込まれたらいいな。ずっと幸せが続くと思う。

「あっ」

 がくんと体から力が抜けちゃった。何? 今の、体が僕じゃないみたい。疲れたし、怠いの。セティの首に回した腕も、重くなっちゃった。抱き締め直したセティの体が温かくて、僕はもう一度腕に力を入れる。離れたくなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

きみと運命の糸で繋がっている

くるむ
BL
魔物と元人間の魔物が織りなす和風ファンタジー。 誰にも渡さない、自分だけが彼を守ってやれる。 その気持ちは、愛情なのか恋情なのか。 執着にも似た強い思いと様々な思惑が交差して、思いもよらない事態を引き起こしていく。 クール系過保護×甘えん坊 ※受け(藤)が攻め(朔也)以外に、襲われるシーンがあります。

【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)
BL
【概要】 哀れな魔力なし転生少年が可愛くて手中に収めたい、魔法階級社会の頂点に君臨する霊体最強魔法使い(ズレてるが良識持ち) VS 加虐本能を持つ魔法使いに飼われるのが怖いので、さっさと自立したい人間不信魔力なし転生少年 \ファイ!/ ■作品傾向:両片思い&ハピエン確約のすれ違い(たまにイチャイチャ) ■性癖:異世界ファンタジー×身分差×魔法契約 力の差に怯えながらも、不器用ながらも優しい攻めに受けが絆されていく異世界BLです。 【詳しいあらすじ】 魔法至上主義の世界で、魔法が使えない転生少年オルディールに価値はない。 優秀な魔法使いである弟に売られかけたオルディールは逃げ出すも、そこは魔法の為に人の姿を捨てた者が徘徊する王国だった。 オルディールは偶然出会った最強魔法使いスヴィーレネスに救われるが、今度は彼に攫われた上に監禁されてしまう。 しかし彼は諦めておらず、スヴィーレネスの元で魔法を覚えて逃走することを決意していた。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした

ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!! CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け 相手役は第11話から出てきます。  ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。  役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。  そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

【完結】前世は魔王の妻でしたが転生したら人間の王子になったので元旦那と戦います

ほしふり
BL
ーーーーー魔王の妻、常闇の魔女リアーネは死んだ。 それから五百年の時を経てリアーネの魂は転生したものの、生まれた場所は人間の王国であり、第三王子リグレットは忌み子として恐れられていた。 王族とは思えない隠遁生活を送る中、前世の夫である魔王ベルグラに関して不穏な噂を耳にする。 いったいこの五百年の間、元夫に何があったのだろうか…?

処理中です...