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239.同じものを半分って嬉しい
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「イシス」
名を呼ぶから、僕は顔を上げる。じっと見つめるセティの目が優しくて、紫色がすごく綺麗。食べてる飴もきらきらしてたけど、セティの目の色はもっと綺麗なの。見つめてからにっこり笑う。
「も、お話、おわ、り?」
飴がまだ大きくて、話すのに邪魔だけど。でも美味しいし、甘いし、幸せだから我慢だよ。僕の頭を撫でたセティが頷くから、向こうにいる神様を見た。僕のお爺ちゃんほど皺だらけじゃないね。じっと僕を見た後、丁寧に頭を下げる。神様なのに変なの。
ちゅっと頬にキスをされて目を閉じると、唇も重なった。中の飴をセティが舌で持って行く。素直に渡したら、半分になって返ってきた。すごい! どうやったんだろう。縦に割れた飴を舐める僕に、セティも飴を見せてくれた。やっぱり半分だ。同じものを半分って嬉しい。
セティを振り返ると、景色が変わった。地面が揺れた気がして抱き着く。抱っこした飴の瓶を落としたら困るもん。瓶を抱いた僕を抱っこするセティがくすくす笑った。
「もう平気だ。飴を配りに行くか?」
「うん!」
本当だ、目も回らないし平気だね。大切に抱えた瓶の中は、いろんな色の飴が入ってる。赤、青、黄色、緑……僕の好きな紫も。何日も通った道だから、案内がいなくても迷わない。低い屋根の家をいくつか通り過ぎたところで、用意された机に瓶を置いた。
「どうしたんですか?」
この机を置いた目の前の家は、パンを持ち帰った男の子がお母さんや妹と住んでいる。すぐに気付いて出てきたから、セティが彼に頼みごとをした。
「飴を配るから、欲しい子を集めてくれ」
「あめ?」
「これだよ、甘いの」
小さくなった紫の飴を見せると、甘い香りがした。前に食べたことがあるから、すぐ分かったみたい。友達を呼びに走っていった。その間に近所の子から、順番に渡していく。一人ひとつずつで、きちんとお礼を言える子がいっぱいだった。昔の僕より偉いね。
「イシスもお礼を言えたぞ」
そうだったかな? 首を傾げる。セティは僕が口にしなくても理解してくれるから、僕はズルしてると思う。ちゃんと言わなくちゃ。
「僕の飴もありがとう」
「どういたしまして」
話をしながらも、次の子に飴を差し出す。大切そうに見つめる女の子が、舌を伸ばしてぺろりと舐めた。顔が綻んで笑顔になる。頬張った飴が大きくて、皆ほっぺが膨らんでるの。
「よし。そろそろ帰るか」
「海を渡るの?」
「そうだ。ガイアのところに顔を出すから、トムに会えるぞ。また船に乗ろう」
船! 動き出してしばらくすると、陸地が見えなくなるんだよ。全部塩辛い水だけになる。もう一度乗って帰るんだ。そうしたらガイアやトムに会って、皆にお土産を渡すの。楽しみ。
「帰っちゃう……もう会えない?」
泣きそうな顔の女の子に、僕は首を傾げた。会えないのかな? 海が間にあるから遠いけど、たぶん平気だと思う。
「会えると思う」
「また会いたい」
「うん」
お友達が出来た。手を繋いで揺らして、また会おうねと笑う。いつの間にか集まった子とも順番に手を繋いで、僕は最後にセティに抱き着いた。ずっと待っててくれたセティは優しく抱き締めて、髪にキスをくれる。
いつかまた。その約束がとても擽ったくて、嬉しくて、なんだか恥ずかしい。お母さん達に話したら、喜んでくれるかな。
名を呼ぶから、僕は顔を上げる。じっと見つめるセティの目が優しくて、紫色がすごく綺麗。食べてる飴もきらきらしてたけど、セティの目の色はもっと綺麗なの。見つめてからにっこり笑う。
「も、お話、おわ、り?」
飴がまだ大きくて、話すのに邪魔だけど。でも美味しいし、甘いし、幸せだから我慢だよ。僕の頭を撫でたセティが頷くから、向こうにいる神様を見た。僕のお爺ちゃんほど皺だらけじゃないね。じっと僕を見た後、丁寧に頭を下げる。神様なのに変なの。
ちゅっと頬にキスをされて目を閉じると、唇も重なった。中の飴をセティが舌で持って行く。素直に渡したら、半分になって返ってきた。すごい! どうやったんだろう。縦に割れた飴を舐める僕に、セティも飴を見せてくれた。やっぱり半分だ。同じものを半分って嬉しい。
セティを振り返ると、景色が変わった。地面が揺れた気がして抱き着く。抱っこした飴の瓶を落としたら困るもん。瓶を抱いた僕を抱っこするセティがくすくす笑った。
「もう平気だ。飴を配りに行くか?」
「うん!」
本当だ、目も回らないし平気だね。大切に抱えた瓶の中は、いろんな色の飴が入ってる。赤、青、黄色、緑……僕の好きな紫も。何日も通った道だから、案内がいなくても迷わない。低い屋根の家をいくつか通り過ぎたところで、用意された机に瓶を置いた。
「どうしたんですか?」
この机を置いた目の前の家は、パンを持ち帰った男の子がお母さんや妹と住んでいる。すぐに気付いて出てきたから、セティが彼に頼みごとをした。
「飴を配るから、欲しい子を集めてくれ」
「あめ?」
「これだよ、甘いの」
小さくなった紫の飴を見せると、甘い香りがした。前に食べたことがあるから、すぐ分かったみたい。友達を呼びに走っていった。その間に近所の子から、順番に渡していく。一人ひとつずつで、きちんとお礼を言える子がいっぱいだった。昔の僕より偉いね。
「イシスもお礼を言えたぞ」
そうだったかな? 首を傾げる。セティは僕が口にしなくても理解してくれるから、僕はズルしてると思う。ちゃんと言わなくちゃ。
「僕の飴もありがとう」
「どういたしまして」
話をしながらも、次の子に飴を差し出す。大切そうに見つめる女の子が、舌を伸ばしてぺろりと舐めた。顔が綻んで笑顔になる。頬張った飴が大きくて、皆ほっぺが膨らんでるの。
「よし。そろそろ帰るか」
「海を渡るの?」
「そうだ。ガイアのところに顔を出すから、トムに会えるぞ。また船に乗ろう」
船! 動き出してしばらくすると、陸地が見えなくなるんだよ。全部塩辛い水だけになる。もう一度乗って帰るんだ。そうしたらガイアやトムに会って、皆にお土産を渡すの。楽しみ。
「帰っちゃう……もう会えない?」
泣きそうな顔の女の子に、僕は首を傾げた。会えないのかな? 海が間にあるから遠いけど、たぶん平気だと思う。
「会えると思う」
「また会いたい」
「うん」
お友達が出来た。手を繋いで揺らして、また会おうねと笑う。いつの間にか集まった子とも順番に手を繋いで、僕は最後にセティに抱き着いた。ずっと待っててくれたセティは優しく抱き締めて、髪にキスをくれる。
いつかまた。その約束がとても擽ったくて、嬉しくて、なんだか恥ずかしい。お母さん達に話したら、喜んでくれるかな。
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