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226.優しいコカトリスの歌
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セティが収納から取り出したご飯を食べる。時間があるから鍋を用意して、火をつけた。火がついた時だけ、コカトリスは遠くまで逃げて……こわごわ戻ってくる。火が嫌いみたい。
「ごめんね。びっくりした?」
撫でたら僕に頬ずりして、くるるって鳴いた。可愛い。大きいトカゲみたいで、ドラゴンより小さくて、でも翼もあるしたくさん走れる。鱗を撫でてから、湧いたお鍋の中を覗き込んだ。隣でコカトリスも覗いているけど、たぶん熱くて食べられないと思う。
「コカトリスは肉を食う。後で生肉をやろう」
「お母さんやフェルと一緒だね」
「よく理解してるな。その通りだ」
セティが褒めてくれて嬉しい。お父さん達ドラゴンも、フェルも生のお肉を食べる。僕達は煮たり焼いて食べるけど……前にお母さんが炎を吐いて肉を焼いてくれたのを思い出した。元気かな。まだ数日なのに、懐かしい気がする。胸がむずむずして思いだすと言ったら、懐かしいと表現することを教えてもらった。
どんどん覚える言葉が膨らんで、セティみたいに優しい言葉を使えるようになりたい。僕がセティの声や言葉で元気になったのと同じくらい、セティに返したかった。絵本も半分以上は自分で読めるようになったし、難しくなければ看板の文字も読める。
「イシスはこれを手伝ってくれ」
渡されたのは香草玉とお肉。生のお肉は切ってあるから、くっつかないように1枚ずつお湯に入れるの。鍋の縁に張り付くから、真ん中ら辺から入れるんだ。前にやった作業だからわかる。火傷しないぎりぎりの高さでお肉を離すのが難しかった。大人になったから、僕はちゃんと出来る。
湯気の間から、肉を摘まんだ手を入れて離す。高すぎるとお湯が飛んで来るし、低すぎると湯気が熱いんだ。肉をすべて入れたら、コカトリスが僕の手をべろべろ舐めた。口の中に手を入れて舐めまわすの、擽ったいね。牙が当たらないのは、優しいコカトリスだから?
「偉いね」
舐め終わったコカトリスを褒めて、香草玉を準備した。ぐらぐらと湧いたお湯の鍋に、お玉に入れて沈める。真ん中に入れるのがコツって、ゲリュオンが言ってた。任された仕事が終わった僕は、お鍋の様子を見守る。溢れそうになったら知らせるのが役目だよ。
くる、くるるっ。コカトリスがゆらゆらと体を揺らして、僕の隣で鳴く。歌っているみたい。
「お? 珍しい。よほどイシスを好きなんだろう」
セティのお話だと、僕を好きだから歌を歌って気を引いてるんだって。嬉しいから抱き着いたら、後ろからセティに連れ戻されちゃった。
「こら、イシスはオレのお嫁さんだぞ」
僕に言ったの? それともコカトリス? 困ったような顔でコカトリスは少し下がり、それでも歌を歌ってくれた。お鍋から掬ったスープを飲んで、中のお肉や野菜を食べて、パンも千切ってあーんする。生肉を食べたコカトリスが欲しそうに覗くから、セティが笑ってパンを浸したスープを置いた。
ぺろりと食べたコカトリスを見ながら、セティが「誰かが癖をつけたな?」と笑った。野生のコカトリスは人の調理した物は食べないけど、この子は前にも食べたから欲しがるんだ。人とたくさん暮らしてきたんだね。撫でてまた乗せてもらい、たくさんの距離を移動した。
「ここが目的地だ」
むっとした顔のセティの声は嫌そう。それでも行かなきゃいけないのかな。神様でも嫌なことは我慢するの? 抱っこされた僕の手でセティの髪を撫でたら、苦しくなるくらいキスされちゃった。
「ごめんね。びっくりした?」
撫でたら僕に頬ずりして、くるるって鳴いた。可愛い。大きいトカゲみたいで、ドラゴンより小さくて、でも翼もあるしたくさん走れる。鱗を撫でてから、湧いたお鍋の中を覗き込んだ。隣でコカトリスも覗いているけど、たぶん熱くて食べられないと思う。
「コカトリスは肉を食う。後で生肉をやろう」
「お母さんやフェルと一緒だね」
「よく理解してるな。その通りだ」
セティが褒めてくれて嬉しい。お父さん達ドラゴンも、フェルも生のお肉を食べる。僕達は煮たり焼いて食べるけど……前にお母さんが炎を吐いて肉を焼いてくれたのを思い出した。元気かな。まだ数日なのに、懐かしい気がする。胸がむずむずして思いだすと言ったら、懐かしいと表現することを教えてもらった。
どんどん覚える言葉が膨らんで、セティみたいに優しい言葉を使えるようになりたい。僕がセティの声や言葉で元気になったのと同じくらい、セティに返したかった。絵本も半分以上は自分で読めるようになったし、難しくなければ看板の文字も読める。
「イシスはこれを手伝ってくれ」
渡されたのは香草玉とお肉。生のお肉は切ってあるから、くっつかないように1枚ずつお湯に入れるの。鍋の縁に張り付くから、真ん中ら辺から入れるんだ。前にやった作業だからわかる。火傷しないぎりぎりの高さでお肉を離すのが難しかった。大人になったから、僕はちゃんと出来る。
湯気の間から、肉を摘まんだ手を入れて離す。高すぎるとお湯が飛んで来るし、低すぎると湯気が熱いんだ。肉をすべて入れたら、コカトリスが僕の手をべろべろ舐めた。口の中に手を入れて舐めまわすの、擽ったいね。牙が当たらないのは、優しいコカトリスだから?
「偉いね」
舐め終わったコカトリスを褒めて、香草玉を準備した。ぐらぐらと湧いたお湯の鍋に、お玉に入れて沈める。真ん中に入れるのがコツって、ゲリュオンが言ってた。任された仕事が終わった僕は、お鍋の様子を見守る。溢れそうになったら知らせるのが役目だよ。
くる、くるるっ。コカトリスがゆらゆらと体を揺らして、僕の隣で鳴く。歌っているみたい。
「お? 珍しい。よほどイシスを好きなんだろう」
セティのお話だと、僕を好きだから歌を歌って気を引いてるんだって。嬉しいから抱き着いたら、後ろからセティに連れ戻されちゃった。
「こら、イシスはオレのお嫁さんだぞ」
僕に言ったの? それともコカトリス? 困ったような顔でコカトリスは少し下がり、それでも歌を歌ってくれた。お鍋から掬ったスープを飲んで、中のお肉や野菜を食べて、パンも千切ってあーんする。生肉を食べたコカトリスが欲しそうに覗くから、セティが笑ってパンを浸したスープを置いた。
ぺろりと食べたコカトリスを見ながら、セティが「誰かが癖をつけたな?」と笑った。野生のコカトリスは人の調理した物は食べないけど、この子は前にも食べたから欲しがるんだ。人とたくさん暮らしてきたんだね。撫でてまた乗せてもらい、たくさんの距離を移動した。
「ここが目的地だ」
むっとした顔のセティの声は嫌そう。それでも行かなきゃいけないのかな。神様でも嫌なことは我慢するの? 抱っこされた僕の手でセティの髪を撫でたら、苦しくなるくらいキスされちゃった。
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