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220.紫の瞳に映る僕は幸せそう
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宿の部屋にご飯を運んでもらい、膝に座ったら隣に下ろされた。僕が成長して大きくなったから、膝に乗せて食べるのは難しいんだって。だから首に手を回して横向きに座った。うーんと考えて込んだ後、まあいいかとセティが食べさせてくれる。
こっちの向きならセティの右腕が自由に動かせるんだよ。横向きに座ってパンを千切り、セティにも差し出す。距離が近くてもちゃんと食べられるし、離れるのは好きじゃない。セティが邪魔だって言ったら諦めるけど。
「そんなこと言わないさ」
優しく髪を撫でてくれた。宿の部屋では黒髪に紫の目でいてもいい。嬉しいと伝えたら、こっちの大陸はあまりタイフォン神への信仰が強くないので、この姿でも平気だと教えてもらった。僕はセティの黒髪も紫瞳も大好きだから、このままがいい。
神様の時のセティは、もっと体が大きい。ぐんと身長が伸びて、腕も太くて、肌が少し濃色になった。あと頬や腕に模様があるの。髪も地面に付いちゃいそうなほど長かった。カッコよくてどきどきする。ご飯の後のジュースを飲みながら、セティの黒髪に触れた。
今は赤髪の時と同じ、短い髪になってる。僕は長いままなのに、姿を簡単に変えられるのは神様だからかな? 長いのも好きだけど、短いのも似合っていた。僕はセティならどっちでも好き。にこにこしながら、赤いジュースを飲み干した。
「今日はいつもより仲良くなろうか」
「いつもより? 仲良くする!」
仲良くなるお呪いより、仲直りのお呪いの方がいっぱいキスする。きっと「いつもより」仲良くなるには、たくさんたくさんキスするんだ! 僕、セティとキスするの大好き。気持ちいい。でも他の人としたくなかった。考えるのも嫌だ。
「イシスはオレのだから、オレ以外とキスしたり体を勝手に触らせちゃダメだ。こないだみたいに触られたら、殴っていいぞ。とにかくオレを呼べ」
たくさん言われた内容をゆっくり飲み込む。僕はセティの物で、勝手に触られちゃダメ。唇も絶対ダメ。お父さん達の鱗を盗ろうとした人みたいに、体に触られたら助けてとセティを呼ぶ。殴るは難しい。
「セティ、僕殴るのは出来ないかも」
殴るやり方知らないし、僕は弱いから勝てないと思う。あの時もじたばたしたけど、服に手を入れられた。しょんぼりしながら伝える。出来ないと言うのは怖い。ダメな奴だと思われたら悲しいから。俯いてちらちらとセティを見たら、また額を押さえていた。どこかでぶつけたのかも、手を伸ばして触る。
指を絡めるようにして伸ばした手を掴まれ、ちゅっと指先にキスされた。びっくりするけど、嫌じゃない。引き寄せられて、セティの腕に倒れ込んだ。抱っこされてベッドまで運ばれる。僕は大きくなったと思ってたのに、セティは軽々と持ち上げた。
「殴れなくても手足を目いっぱい動かして、嫌だと叫べ。オレを呼ぶんだぞ」
繰り返されて、約束だと指を絡める。それなら僕でも出来るから、頷いて約束した。首のところでちゃらんと音を立てた鱗やタグの鎖を、セティが外してベッドの枕元に置く。
「今日はもう使わないからな」
そうなの? いつも持ってろと言われたけど。セティがいるなら安心だね。僕はキスをされながら目を閉じる。セティの匂いがいっぱいで、少し息が苦しくて、嬉しくて目を開いたらセティがいて――紫の瞳に映る僕は、すごく幸せそうだった。
こっちの向きならセティの右腕が自由に動かせるんだよ。横向きに座ってパンを千切り、セティにも差し出す。距離が近くてもちゃんと食べられるし、離れるのは好きじゃない。セティが邪魔だって言ったら諦めるけど。
「そんなこと言わないさ」
優しく髪を撫でてくれた。宿の部屋では黒髪に紫の目でいてもいい。嬉しいと伝えたら、こっちの大陸はあまりタイフォン神への信仰が強くないので、この姿でも平気だと教えてもらった。僕はセティの黒髪も紫瞳も大好きだから、このままがいい。
神様の時のセティは、もっと体が大きい。ぐんと身長が伸びて、腕も太くて、肌が少し濃色になった。あと頬や腕に模様があるの。髪も地面に付いちゃいそうなほど長かった。カッコよくてどきどきする。ご飯の後のジュースを飲みながら、セティの黒髪に触れた。
今は赤髪の時と同じ、短い髪になってる。僕は長いままなのに、姿を簡単に変えられるのは神様だからかな? 長いのも好きだけど、短いのも似合っていた。僕はセティならどっちでも好き。にこにこしながら、赤いジュースを飲み干した。
「今日はいつもより仲良くなろうか」
「いつもより? 仲良くする!」
仲良くなるお呪いより、仲直りのお呪いの方がいっぱいキスする。きっと「いつもより」仲良くなるには、たくさんたくさんキスするんだ! 僕、セティとキスするの大好き。気持ちいい。でも他の人としたくなかった。考えるのも嫌だ。
「イシスはオレのだから、オレ以外とキスしたり体を勝手に触らせちゃダメだ。こないだみたいに触られたら、殴っていいぞ。とにかくオレを呼べ」
たくさん言われた内容をゆっくり飲み込む。僕はセティの物で、勝手に触られちゃダメ。唇も絶対ダメ。お父さん達の鱗を盗ろうとした人みたいに、体に触られたら助けてとセティを呼ぶ。殴るは難しい。
「セティ、僕殴るのは出来ないかも」
殴るやり方知らないし、僕は弱いから勝てないと思う。あの時もじたばたしたけど、服に手を入れられた。しょんぼりしながら伝える。出来ないと言うのは怖い。ダメな奴だと思われたら悲しいから。俯いてちらちらとセティを見たら、また額を押さえていた。どこかでぶつけたのかも、手を伸ばして触る。
指を絡めるようにして伸ばした手を掴まれ、ちゅっと指先にキスされた。びっくりするけど、嫌じゃない。引き寄せられて、セティの腕に倒れ込んだ。抱っこされてベッドまで運ばれる。僕は大きくなったと思ってたのに、セティは軽々と持ち上げた。
「殴れなくても手足を目いっぱい動かして、嫌だと叫べ。オレを呼ぶんだぞ」
繰り返されて、約束だと指を絡める。それなら僕でも出来るから、頷いて約束した。首のところでちゃらんと音を立てた鱗やタグの鎖を、セティが外してベッドの枕元に置く。
「今日はもう使わないからな」
そうなの? いつも持ってろと言われたけど。セティがいるなら安心だね。僕はキスをされながら目を閉じる。セティの匂いがいっぱいで、少し息が苦しくて、嬉しくて目を開いたらセティがいて――紫の瞳に映る僕は、すごく幸せそうだった。
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