221 / 321
220.紫の瞳に映る僕は幸せそう
しおりを挟む
宿の部屋にご飯を運んでもらい、膝に座ったら隣に下ろされた。僕が成長して大きくなったから、膝に乗せて食べるのは難しいんだって。だから首に手を回して横向きに座った。うーんと考えて込んだ後、まあいいかとセティが食べさせてくれる。
こっちの向きならセティの右腕が自由に動かせるんだよ。横向きに座ってパンを千切り、セティにも差し出す。距離が近くてもちゃんと食べられるし、離れるのは好きじゃない。セティが邪魔だって言ったら諦めるけど。
「そんなこと言わないさ」
優しく髪を撫でてくれた。宿の部屋では黒髪に紫の目でいてもいい。嬉しいと伝えたら、こっちの大陸はあまりタイフォン神への信仰が強くないので、この姿でも平気だと教えてもらった。僕はセティの黒髪も紫瞳も大好きだから、このままがいい。
神様の時のセティは、もっと体が大きい。ぐんと身長が伸びて、腕も太くて、肌が少し濃色になった。あと頬や腕に模様があるの。髪も地面に付いちゃいそうなほど長かった。カッコよくてどきどきする。ご飯の後のジュースを飲みながら、セティの黒髪に触れた。
今は赤髪の時と同じ、短い髪になってる。僕は長いままなのに、姿を簡単に変えられるのは神様だからかな? 長いのも好きだけど、短いのも似合っていた。僕はセティならどっちでも好き。にこにこしながら、赤いジュースを飲み干した。
「今日はいつもより仲良くなろうか」
「いつもより? 仲良くする!」
仲良くなるお呪いより、仲直りのお呪いの方がいっぱいキスする。きっと「いつもより」仲良くなるには、たくさんたくさんキスするんだ! 僕、セティとキスするの大好き。気持ちいい。でも他の人としたくなかった。考えるのも嫌だ。
「イシスはオレのだから、オレ以外とキスしたり体を勝手に触らせちゃダメだ。こないだみたいに触られたら、殴っていいぞ。とにかくオレを呼べ」
たくさん言われた内容をゆっくり飲み込む。僕はセティの物で、勝手に触られちゃダメ。唇も絶対ダメ。お父さん達の鱗を盗ろうとした人みたいに、体に触られたら助けてとセティを呼ぶ。殴るは難しい。
「セティ、僕殴るのは出来ないかも」
殴るやり方知らないし、僕は弱いから勝てないと思う。あの時もじたばたしたけど、服に手を入れられた。しょんぼりしながら伝える。出来ないと言うのは怖い。ダメな奴だと思われたら悲しいから。俯いてちらちらとセティを見たら、また額を押さえていた。どこかでぶつけたのかも、手を伸ばして触る。
指を絡めるようにして伸ばした手を掴まれ、ちゅっと指先にキスされた。びっくりするけど、嫌じゃない。引き寄せられて、セティの腕に倒れ込んだ。抱っこされてベッドまで運ばれる。僕は大きくなったと思ってたのに、セティは軽々と持ち上げた。
「殴れなくても手足を目いっぱい動かして、嫌だと叫べ。オレを呼ぶんだぞ」
繰り返されて、約束だと指を絡める。それなら僕でも出来るから、頷いて約束した。首のところでちゃらんと音を立てた鱗やタグの鎖を、セティが外してベッドの枕元に置く。
「今日はもう使わないからな」
そうなの? いつも持ってろと言われたけど。セティがいるなら安心だね。僕はキスをされながら目を閉じる。セティの匂いがいっぱいで、少し息が苦しくて、嬉しくて目を開いたらセティがいて――紫の瞳に映る僕は、すごく幸せそうだった。
こっちの向きならセティの右腕が自由に動かせるんだよ。横向きに座ってパンを千切り、セティにも差し出す。距離が近くてもちゃんと食べられるし、離れるのは好きじゃない。セティが邪魔だって言ったら諦めるけど。
「そんなこと言わないさ」
優しく髪を撫でてくれた。宿の部屋では黒髪に紫の目でいてもいい。嬉しいと伝えたら、こっちの大陸はあまりタイフォン神への信仰が強くないので、この姿でも平気だと教えてもらった。僕はセティの黒髪も紫瞳も大好きだから、このままがいい。
神様の時のセティは、もっと体が大きい。ぐんと身長が伸びて、腕も太くて、肌が少し濃色になった。あと頬や腕に模様があるの。髪も地面に付いちゃいそうなほど長かった。カッコよくてどきどきする。ご飯の後のジュースを飲みながら、セティの黒髪に触れた。
今は赤髪の時と同じ、短い髪になってる。僕は長いままなのに、姿を簡単に変えられるのは神様だからかな? 長いのも好きだけど、短いのも似合っていた。僕はセティならどっちでも好き。にこにこしながら、赤いジュースを飲み干した。
「今日はいつもより仲良くなろうか」
「いつもより? 仲良くする!」
仲良くなるお呪いより、仲直りのお呪いの方がいっぱいキスする。きっと「いつもより」仲良くなるには、たくさんたくさんキスするんだ! 僕、セティとキスするの大好き。気持ちいい。でも他の人としたくなかった。考えるのも嫌だ。
「イシスはオレのだから、オレ以外とキスしたり体を勝手に触らせちゃダメだ。こないだみたいに触られたら、殴っていいぞ。とにかくオレを呼べ」
たくさん言われた内容をゆっくり飲み込む。僕はセティの物で、勝手に触られちゃダメ。唇も絶対ダメ。お父さん達の鱗を盗ろうとした人みたいに、体に触られたら助けてとセティを呼ぶ。殴るは難しい。
「セティ、僕殴るのは出来ないかも」
殴るやり方知らないし、僕は弱いから勝てないと思う。あの時もじたばたしたけど、服に手を入れられた。しょんぼりしながら伝える。出来ないと言うのは怖い。ダメな奴だと思われたら悲しいから。俯いてちらちらとセティを見たら、また額を押さえていた。どこかでぶつけたのかも、手を伸ばして触る。
指を絡めるようにして伸ばした手を掴まれ、ちゅっと指先にキスされた。びっくりするけど、嫌じゃない。引き寄せられて、セティの腕に倒れ込んだ。抱っこされてベッドまで運ばれる。僕は大きくなったと思ってたのに、セティは軽々と持ち上げた。
「殴れなくても手足を目いっぱい動かして、嫌だと叫べ。オレを呼ぶんだぞ」
繰り返されて、約束だと指を絡める。それなら僕でも出来るから、頷いて約束した。首のところでちゃらんと音を立てた鱗やタグの鎖を、セティが外してベッドの枕元に置く。
「今日はもう使わないからな」
そうなの? いつも持ってろと言われたけど。セティがいるなら安心だね。僕はキスをされながら目を閉じる。セティの匂いがいっぱいで、少し息が苦しくて、嬉しくて目を開いたらセティがいて――紫の瞳に映る僕は、すごく幸せそうだった。
53
お気に入りに追加
1,276
あなたにおすすめの小説
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
【奨励賞】恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
SKYTRICK
BL
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆描写はありませんが、受けがモブに抱かれている示唆はあります(男娼なので)
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る
112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。
★本編で出てこない世界観
男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる