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219.セティがいるから寂しくない
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船の上は4つ泊った。日付は「日」で数えるから、4日? 首を傾げているとセティが僕の指を使って説明してくれた。
「最初の日、ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、今日で5日間だ」
片方の指を全部使った。朝に船へ乗って、夕方に着いたから5日間。頷いて、船から出た橋を降りた。船の上ではずっと揺れてたから、揺れない地面に立つとふらつく。セティがしっかり腰に手を回してくれたので、僕もしがみ付いた。
「ふらふらする」
「今日一日は諦めろ。病気じゃないから安心していいぞ」
船の人が手を振っているので、僕も振り返した。それから宿を探す。黒い猫だったり大きな鳥の絵が描いてある看板の宿は泊ったけど、なんで動物の絵なんだろう。決まり事かな。セティが見つけたのは、馬の絵だった。白い馬は王子様がお姫様を迎えに来る乗り物だけど、動物だったんだね。絵本では分からなかった。
お部屋は奥で廊下の突き当りだった。大きなベッドと机、椅子。いつもと同じ宿の風景に、お風呂もあった。部屋の中にお風呂がある宿は、少し高くていい宿だとゲリュオンに教えてもらった。ゲリュオンとシェリア、元気かな。
「平気だ、あいつらは自由にやってるさ」
僕の考えが伝わるから、セティは欲しい答えをくれる。ベッドに腰掛けて足を揺らしながら、手にした荷物を足元においた。中身は昔から使ってた毛布だけで、お金や食べ物はセティの収納のお部屋に入ってる。荷物がない旅人はおかしいから、収納のお部屋が使えるとバレちゃう。もしバレたら離されちゃうかも知れないと聞いていた。絶対に知られないようにしなくちゃ。
「夕食は部屋に運んでもらうから、それまで休むか」
「セティも?」
ここで一緒に寝る? ベッドを叩くと、隣に座ったセティにごろんと倒された。ここのベッド、ふかふかだね。トムがいたら喜んだだろうな。
くすくす笑うセティが僕の鼻先をつついた。
「さっきから、ゲリュオンだのトムだの……誰かのことを思い出してばっかりだな」
僕は自分の言葉を思い返して、首を傾げた。そんなつもりなかったけど、セティは笑ってるし悪いことじゃないよね。両手を伸ばしてセティに抱き着く。
洞窟の神殿を出たばかりの頃は、僕とセティしかいなかった。世界はいつも2人で、周りに人がいただけ。今は違う、お父さん達もいるし、ゲリュオンやガイア、トム、シェリア、フェル……僕の家族や大切な人が増えた。
「寂しいか?」
「僕はセティがいるから寂しくない」
たまに会えたらいいの。毎日一緒にいたいのはセティで、海のこっちはセティしか知ってる人がいない。セティは違うと思うけど、僕はセティのことだけ考えていられる時間も好き。伝え方がよく分からないから、心でたくさん好きって繰り返した。
「……やっぱりもう、食っちまうかな」
「食べる? 僕、セティになら食べられたい」
食べられてもいいんじゃなくて、食べて欲しい。そうしたら僕はセティだけの僕で、贄として神様の物になるんだ。セティは僕だけの物じゃないけど、僕はセティの物になりたい。ドキドキしながら見つめたら、なぜか顔を手で押さえて呻いていた。頭が痛くなっちゃった?
「最初の日、ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、今日で5日間だ」
片方の指を全部使った。朝に船へ乗って、夕方に着いたから5日間。頷いて、船から出た橋を降りた。船の上ではずっと揺れてたから、揺れない地面に立つとふらつく。セティがしっかり腰に手を回してくれたので、僕もしがみ付いた。
「ふらふらする」
「今日一日は諦めろ。病気じゃないから安心していいぞ」
船の人が手を振っているので、僕も振り返した。それから宿を探す。黒い猫だったり大きな鳥の絵が描いてある看板の宿は泊ったけど、なんで動物の絵なんだろう。決まり事かな。セティが見つけたのは、馬の絵だった。白い馬は王子様がお姫様を迎えに来る乗り物だけど、動物だったんだね。絵本では分からなかった。
お部屋は奥で廊下の突き当りだった。大きなベッドと机、椅子。いつもと同じ宿の風景に、お風呂もあった。部屋の中にお風呂がある宿は、少し高くていい宿だとゲリュオンに教えてもらった。ゲリュオンとシェリア、元気かな。
「平気だ、あいつらは自由にやってるさ」
僕の考えが伝わるから、セティは欲しい答えをくれる。ベッドに腰掛けて足を揺らしながら、手にした荷物を足元においた。中身は昔から使ってた毛布だけで、お金や食べ物はセティの収納のお部屋に入ってる。荷物がない旅人はおかしいから、収納のお部屋が使えるとバレちゃう。もしバレたら離されちゃうかも知れないと聞いていた。絶対に知られないようにしなくちゃ。
「夕食は部屋に運んでもらうから、それまで休むか」
「セティも?」
ここで一緒に寝る? ベッドを叩くと、隣に座ったセティにごろんと倒された。ここのベッド、ふかふかだね。トムがいたら喜んだだろうな。
くすくす笑うセティが僕の鼻先をつついた。
「さっきから、ゲリュオンだのトムだの……誰かのことを思い出してばっかりだな」
僕は自分の言葉を思い返して、首を傾げた。そんなつもりなかったけど、セティは笑ってるし悪いことじゃないよね。両手を伸ばしてセティに抱き着く。
洞窟の神殿を出たばかりの頃は、僕とセティしかいなかった。世界はいつも2人で、周りに人がいただけ。今は違う、お父さん達もいるし、ゲリュオンやガイア、トム、シェリア、フェル……僕の家族や大切な人が増えた。
「寂しいか?」
「僕はセティがいるから寂しくない」
たまに会えたらいいの。毎日一緒にいたいのはセティで、海のこっちはセティしか知ってる人がいない。セティは違うと思うけど、僕はセティのことだけ考えていられる時間も好き。伝え方がよく分からないから、心でたくさん好きって繰り返した。
「……やっぱりもう、食っちまうかな」
「食べる? 僕、セティになら食べられたい」
食べられてもいいんじゃなくて、食べて欲しい。そうしたら僕はセティだけの僕で、贄として神様の物になるんだ。セティは僕だけの物じゃないけど、僕はセティの物になりたい。ドキドキしながら見つめたら、なぜか顔を手で押さえて呻いていた。頭が痛くなっちゃった?
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