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214.オレの嫁に触れるな!
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干した薬草を扱う店に立ち寄り、幾つか選んで購入する。セティが話すのを見ながら、僕は置いてあった小さな赤い実が気になった。あれ、甘いのかな。
「セティ、あれは?」
「ああ、毒だから間違っても口にするなよ」
前に食べた実に似てるけど、違うらしい。食べるとお腹が痛くなるけど、砕いて別の薬草と一緒に飲めば、二日酔いに効くと教えてくれた。二日酔いは僕には早いと言って、また交渉を始めた。両手を使って薬草を選ぶセティの上着の裾を握った僕は、後ろからいきなり掴まれた。
腹に回された手が無理やり引っ張り、僕をセティから離そうとする。怖い、嫌だ、何するの! セティ、セティ、変なのいる!!
暴れた僕を押さえようとした男が僕の首筋に手を突っ込む。ごそごそと何かを探す手が気持ち悪かった。
「何してんだっ! 勝手に人の嫁に触るんじゃねえ!!」
セティの低くて怖い声がして、僕は引き摺られながら手を伸ばす。セティの手が、僕の後ろの男を指差した。その指が左右に振られると、拘束してた腕が解ける。僕は転がるようにしてセティの足元に逃げた。
気持ち悪い、なんか汚れた気がする。肌がぞわぞわして、すごく嫌だ。セティの足にしがみついて、床に座ったまま顔を上げた。怖い顔をしたセティだけど、僕を見ると目が優しくなる。安心してセティの足に両手でくっついた。
「うわっ、やめ……」
「ふーん。オレの物に手を出して、ただで済むと思ったのか?」
足がつかない高さまで浮いた男の姿に、僕は目を瞬いた。見たことある、この人……街に入るときに。
「門で僕をじろじろ見た人?」
「そうだ。お前を狙って襲ったんだ」
セティは僕の名前を呼ばない。もしかして汚れたから? 慌てて服の襟を掴んで中を覗いた。見た目じゃわからないけど、こんなに気持ち悪いんだから何か付いたかも。どうしよう。洗ったら取れるかな。
「何事だ!?」
「ケンカか?」
門兵と同じような鎧を着た人が近づいてきて、僕は怖くなった。この人達が触ったら、また汚れる。そうしたらセティが僕の名前を呼んでくれなくて、捨てられちゃう。
「おい、落ち着け」
やっぱり名を呼ばない。ぽろりと涙が溢れた。怖い、胸が苦しい、こんなのやだ!!
「やだぁ!!」
全力で叫んだ。喉の奥が痛くて、切れたみたいにヒリヒリした。それでも嫌だと泣いて叫んで、僕は両手を振り回す。もう何が怖かったのか分からないけど、怖い。助けて。
周囲が暗くなる。顔をあげた僕はセティに抱き締められていた。ぎゅっと強く、息が苦しいくらい。
「ったく、念話を覚えさせないとダメだな、大丈夫だ……イシス」
耳元で聞こえた声に、僕の名前があった。嬉しくても流れる涙を拭いながら頷く。僕も手を回して抱きついた。
「まて、貴様ら……街の衛兵に対して」
「この街では衛兵が強盗を働くのか? 仲間の罪を見逃して擁護するって言うなら、オレも相応の対応をするぞ」
抱き着いた僕の上に黒いローブをかけながら、セティが低い声で突きつけた。
「このタグを見ても同じことを言えるなら、話を聞いてやろう」
セティは首の鎖を乱暴に外し、兵達の先頭に立つ指揮官へ放り投げた。
「セティ、あれは?」
「ああ、毒だから間違っても口にするなよ」
前に食べた実に似てるけど、違うらしい。食べるとお腹が痛くなるけど、砕いて別の薬草と一緒に飲めば、二日酔いに効くと教えてくれた。二日酔いは僕には早いと言って、また交渉を始めた。両手を使って薬草を選ぶセティの上着の裾を握った僕は、後ろからいきなり掴まれた。
腹に回された手が無理やり引っ張り、僕をセティから離そうとする。怖い、嫌だ、何するの! セティ、セティ、変なのいる!!
暴れた僕を押さえようとした男が僕の首筋に手を突っ込む。ごそごそと何かを探す手が気持ち悪かった。
「何してんだっ! 勝手に人の嫁に触るんじゃねえ!!」
セティの低くて怖い声がして、僕は引き摺られながら手を伸ばす。セティの手が、僕の後ろの男を指差した。その指が左右に振られると、拘束してた腕が解ける。僕は転がるようにしてセティの足元に逃げた。
気持ち悪い、なんか汚れた気がする。肌がぞわぞわして、すごく嫌だ。セティの足にしがみついて、床に座ったまま顔を上げた。怖い顔をしたセティだけど、僕を見ると目が優しくなる。安心してセティの足に両手でくっついた。
「うわっ、やめ……」
「ふーん。オレの物に手を出して、ただで済むと思ったのか?」
足がつかない高さまで浮いた男の姿に、僕は目を瞬いた。見たことある、この人……街に入るときに。
「門で僕をじろじろ見た人?」
「そうだ。お前を狙って襲ったんだ」
セティは僕の名前を呼ばない。もしかして汚れたから? 慌てて服の襟を掴んで中を覗いた。見た目じゃわからないけど、こんなに気持ち悪いんだから何か付いたかも。どうしよう。洗ったら取れるかな。
「何事だ!?」
「ケンカか?」
門兵と同じような鎧を着た人が近づいてきて、僕は怖くなった。この人達が触ったら、また汚れる。そうしたらセティが僕の名前を呼んでくれなくて、捨てられちゃう。
「おい、落ち着け」
やっぱり名を呼ばない。ぽろりと涙が溢れた。怖い、胸が苦しい、こんなのやだ!!
「やだぁ!!」
全力で叫んだ。喉の奥が痛くて、切れたみたいにヒリヒリした。それでも嫌だと泣いて叫んで、僕は両手を振り回す。もう何が怖かったのか分からないけど、怖い。助けて。
周囲が暗くなる。顔をあげた僕はセティに抱き締められていた。ぎゅっと強く、息が苦しいくらい。
「ったく、念話を覚えさせないとダメだな、大丈夫だ……イシス」
耳元で聞こえた声に、僕の名前があった。嬉しくても流れる涙を拭いながら頷く。僕も手を回して抱きついた。
「まて、貴様ら……街の衛兵に対して」
「この街では衛兵が強盗を働くのか? 仲間の罪を見逃して擁護するって言うなら、オレも相応の対応をするぞ」
抱き着いた僕の上に黒いローブをかけながら、セティが低い声で突きつけた。
「このタグを見ても同じことを言えるなら、話を聞いてやろう」
セティは首の鎖を乱暴に外し、兵達の先頭に立つ指揮官へ放り投げた。
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