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211.またね、その約束をした

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 神様であるセティが望んだからなのか、次の日は雨が止んだ。まだ曇ってるけど、雨は落ちて来ない。洞窟神殿の入り口で見上げる空は、暗い灰色をしていた。晴れた日の白い雲と違って、なんだか重そう。

「晴れたら出掛ける予定だったが、これはまた……」

 後ろから上着を僕の肩にかけるセティが苦笑いする。晴れてはいないね、でも雨も降ってない。シェリアが走ってきて、泥の手前で止まった。しゃがんで、水たまりの中を覗いている。それから立ち上がり、ゲリュオンを引っ張った。一緒に覗いてゲリュオンが説明する。

「神域の泉や池は、本来の姿が映る。ここは今、神族が3人もいるからな。水たまりにも影響したんだろ」

 ゲリュオンの説明を考えてみる。セティはタイフォン神様、ゲリュオンも神様、でも3人いる神様? もしかして……。

「シェリアは神様?!」

「「違う」」

 セティとゲリュオンに否定された。その後、山の上の原始神殿で成長した時に僕は神様の1人になっていたと知った。神様は1柱と数えるんだって。前に柱の話が出たのは、神様を数えてたからか。セティと同じなのが嬉しくて、両手で抱き着く。

 成長した僕の手はセティの背中で、お互いを握れる。それが嬉しかった。食べてもらうために神様になったなら嬉しいのに。黒髪を撫でてくれるセティが、空の変化に気づいて顔を上げる。僕もつられて上を見ると、雲の間から光が落ちてきた。

「晴れたな」

「俺らはもう少しここに住む。居心地いいしな」

 セティが出掛けようと促す声に、ゲリュオンは残ると言い出した。驚いたのは僕だけで、シェリアは知ってたみたい。お別れになると聞いて、僕はシェリアの隣にしゃがんだ。ずっと水たまりを見つめる彼女の視線の先に、馬の姿が映っている。シェリアは翼と角がある馬だから、当たり前なんだけど。

 見つめていた馬の顔に何かが落ちて、反射していた絵が揺れる。また落ちてきた。顔を上げた僕と視線を合わせたシェリアの頬に涙が伝う。手を伸ばして撫でて、涙を取ったのにまた溢れてきた。

「また会える?」

「うん。僕もセティもいつでも会える」

 約束して指切りもした。これで絶対に約束を破れないんだよ。僕はセティと指を絡め、シェリアはゲリュオンと手を繋ぐ。間でシェリアの手を掴んだ。また会えるから心配しないし、泣かない。

「食事してから出かける。食べる準備してくれ」

 セティが僕とシェリアが一緒に出来ることを提案してくれた。机の上をシェリアが拭いた。僕が食器を並べて、コップを置く。終わったのを待っていたみたいに、お鍋が運ばれてきた。パンを取り出したゲリュオンが「買い物に行かないとダメか」と笑う。

 前にゲリュオンが狩った動物の肉を、丸焼きにして切り分けた。塩は海に行ったとき買ったやつ、胡椒やハーブは僕とセティが山で採った物だった。シェリアが絞った果物のジュースを飲みながら、パンに挟んで食べる。余った分を持っていくことになり、シェリアと包んだ。

「またね」

「うん」

 挨拶はそれだけ。またすぐに会えるから、泣かなくていいよね。僕はセティがいるから寂しくない。抱き着いたセティの温かさに目を閉じ、転移のゆらゆらする感じに身を委ねた。
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