204 / 321
203.お母さん達とのお別れ
しおりを挟む
トムはガイアと一緒に山の上に引っ越してしまった。僕はお母さんの代わりをしてたけど、ちゃんとトムを育てられたのかな。僕はお母さんの記憶がないから、あれで合ってたのか不安だった。ドラゴンのヴルムお母さんが一緒に暮らし始めて、僕はお母さんという存在を実感する。
優しくて甘くて、いつも僕やボリスを愛してくれるのがお母さん。だからトムがガイアと暮らして幸せなら、僕は邪魔しちゃいけないんだ。少し寂しいけど、僕にはセティがいるんだから。同じようにガイアがトムを守ってくれると思う。
セティが「出会いと別れの繰り返し」って言った。出会うのは楽しいけど、別れるのは悲しいし寂しい。僕が知ってる人は少なくて、増えるだけの方が嬉しいのに。ぎゅっと抱っこされて移動した。今日はフェリクスお兄さんの背中だ。ボリスはルードルフお兄さんと、ゲリュオン達はお母さんが乗せてくれた。
先頭を切って飛ぶお父さんの銀の鱗がきらきら光る。森をいくつも飛び越えて、途中で見つけた川で休憩した。お母さんが水浴びを始め、ボリスやルードルフお兄さんも川に飛び込む。そうしたら川が溢れちゃって……セティが用意した火が消えちゃった。
ご飯を食べるための火は山に近い方へ移動して、フェリクスお兄さんがふぅと吹いてつけた。ゲリュオンが捕まえた兎を焼いて食べる間に、お父さんは牛みたいな動物を捕まえてくる。肉に齧りつくボリスが赤く汚れて、僕は笑いながら拭いた。濡らした布で拭くのは気持ちいいみたいで、強請られてお父さんやお母さんにもする。フェリクスお兄さんはちらちら見てたけど、ルードルフお兄さんは寄ってきた。
「フェリクスお兄さんも!」
一緒に拭こうよと呼んだら、近づいて伏せる。お顔の周りを丁寧に拭いていたら、後ろで尻尾が揺れてた。機嫌悪そうな顔してたけど、平気みたい。夕方になる前に到着したいと飛び立って、少ししたら山が見えてきた。その上の方に穴が開いている。入り口に岩があって、ここは僕が知ってるよ。
「洞窟の神殿だ!」
「中の奴らは追い出して、ゆっくりしような」
頭を撫でて額にキスをもらい、僕は大きく頷く。ここはベッドあるし、水浴びできる場所もある。でもお父さん達が入るのは狭いかな。天井が低いんだよね。
「ファルニール達は、洞窟の家に戻る。ここに泊まるのはオレ達だけだぞ」
思わぬ言葉にびっくりする。下降するお兄さんに掴まって、山の天辺に下ろしてもらった。帰っちゃうのが嫌だと泣いたら、いつでも帰っておいでとお母さんが笑う。お父さんも僕の涙を舐めた。お兄さん達も家がある場所に帰るんだって。
一緒にいたいと鳴くボリスとお別れの挨拶をして、絶対にまた帰るからと約束した。約束は必ず守らないといけないんだから、僕はちゃんとボリスに会いに行くよ。飛んでいくお父さんの足にしがみ付いたボリスに手を振って、また泣いた。
「いつでも会えるさ。お前はもう神様の1柱だからな」
僕が神様の柱になったの? 柱って何する役目だろう。首を傾げながら、僕は呟いた。
「僕はセティに食べてもらう役目がいいのに」
優しくて甘くて、いつも僕やボリスを愛してくれるのがお母さん。だからトムがガイアと暮らして幸せなら、僕は邪魔しちゃいけないんだ。少し寂しいけど、僕にはセティがいるんだから。同じようにガイアがトムを守ってくれると思う。
セティが「出会いと別れの繰り返し」って言った。出会うのは楽しいけど、別れるのは悲しいし寂しい。僕が知ってる人は少なくて、増えるだけの方が嬉しいのに。ぎゅっと抱っこされて移動した。今日はフェリクスお兄さんの背中だ。ボリスはルードルフお兄さんと、ゲリュオン達はお母さんが乗せてくれた。
先頭を切って飛ぶお父さんの銀の鱗がきらきら光る。森をいくつも飛び越えて、途中で見つけた川で休憩した。お母さんが水浴びを始め、ボリスやルードルフお兄さんも川に飛び込む。そうしたら川が溢れちゃって……セティが用意した火が消えちゃった。
ご飯を食べるための火は山に近い方へ移動して、フェリクスお兄さんがふぅと吹いてつけた。ゲリュオンが捕まえた兎を焼いて食べる間に、お父さんは牛みたいな動物を捕まえてくる。肉に齧りつくボリスが赤く汚れて、僕は笑いながら拭いた。濡らした布で拭くのは気持ちいいみたいで、強請られてお父さんやお母さんにもする。フェリクスお兄さんはちらちら見てたけど、ルードルフお兄さんは寄ってきた。
「フェリクスお兄さんも!」
一緒に拭こうよと呼んだら、近づいて伏せる。お顔の周りを丁寧に拭いていたら、後ろで尻尾が揺れてた。機嫌悪そうな顔してたけど、平気みたい。夕方になる前に到着したいと飛び立って、少ししたら山が見えてきた。その上の方に穴が開いている。入り口に岩があって、ここは僕が知ってるよ。
「洞窟の神殿だ!」
「中の奴らは追い出して、ゆっくりしような」
頭を撫でて額にキスをもらい、僕は大きく頷く。ここはベッドあるし、水浴びできる場所もある。でもお父さん達が入るのは狭いかな。天井が低いんだよね。
「ファルニール達は、洞窟の家に戻る。ここに泊まるのはオレ達だけだぞ」
思わぬ言葉にびっくりする。下降するお兄さんに掴まって、山の天辺に下ろしてもらった。帰っちゃうのが嫌だと泣いたら、いつでも帰っておいでとお母さんが笑う。お父さんも僕の涙を舐めた。お兄さん達も家がある場所に帰るんだって。
一緒にいたいと鳴くボリスとお別れの挨拶をして、絶対にまた帰るからと約束した。約束は必ず守らないといけないんだから、僕はちゃんとボリスに会いに行くよ。飛んでいくお父さんの足にしがみ付いたボリスに手を振って、また泣いた。
「いつでも会えるさ。お前はもう神様の1柱だからな」
僕が神様の柱になったの? 柱って何する役目だろう。首を傾げながら、僕は呟いた。
「僕はセティに食べてもらう役目がいいのに」
63
お気に入りに追加
1,274
あなたにおすすめの小説
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています
前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい
夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが……
◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる