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198.仲直りしようか ※微(SIDEセティ)
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*****SIDE セティ
イシスはタイフォン神たるオレの伴侶だと、すでに宣言を出した。神族とも通知した。にもかかわらず、まだイシスを贄の子どもとして見る神官がいる。贄を用意したティターンと違うと思ったが、やはり人間は同じか。
退出しない神官に声を掛ければ、それはこの男の栄誉になる。追い出したい本音と、絶対に栄誉など与えたくない意地がぶつかり合う。神官を八つ裂きにしようか迷うオレの怒りに気づいたゲリュオンが、手荒く追い払った。不安そうなイシスを抱き寄せて黒髪や頬にキスをする。それでも泣きそうな顔は笑わなかった。
「気に入らないなら処分すりゃいいだろ」
爺さん経由で申しつければいい。ゲリュオンはそう言って、さっさと続き部屋に引っ込んだ。嬉しそうに尻尾を振るシェリアが一緒に消え、部屋に2人きりだ。
「ごめん、イシス。オレが出ていけと声をかけたら、あの白い服の神官は栄誉を得たと喜ぶ。それは嫌だったんだ」
きちんと説明する。じっと見上げる紫の瞳が潤んでいた。睨まれたことは、イシスの心の傷を抉ったのか。かつて虐げた連中は神罰を下したが、それでも傷はまだ血を流すのか? 哀れに思うより、同じ痛みを分かち合いたいと願う。だから目を逸らさずに、唇を重ねた。
「僕、セティの邪魔じゃない?」
不安に揺らぐ声に、きっちり返した。
「それはない。仲直りしよう、イシス」
「うん」
頷いて抱き着くイシスの唇を貪りながら、部屋に結界を張った。可愛いイシスの声を誰かに聞かせる気はないし、万が一にも覗かれたら殺す。目を抉る程度じゃ許せなかった。柔らかな体は子どもの頃と同じで、体温が高くて心地よい。抱き上げて、ベッドの上に横たえた。
神族に生まれ変わったあの禊で、イシスの体は16歳の実年齢に見合う姿に成長した。幼く愛らしい子どもの振る舞いはそのままで、愛されるに足る体になっている。それでも抱かずに来たのは、イシスの心が幼いためだ。泣かせたいのではなく、鳴かせたい。
唇を離すと心配そうな目をするから、塞いだまま手を滑らせた。纏う服を脱がせ、指先に馴染む肌をなぞる。
「ふ……ん、ぅ……っ」
溢れる声も甘く、得た快感を逃す術を知らないイシスが身を捩った。両手を繋いで顔の横に押さえつければ、にっこりと笑う。自分が傷つけられるなんて、考えてもいない。オレを信頼し切ったこの目を曇らせるのか? 失うかもしれない恐怖に、欲を抑え込んだ。まだ早い。この子が本当にオレを求めるまで……あと少し。
「いっぱいキスしような」
「セティ、僕もする」
際どいセリフを自覚なく吐き出す唇を塞いで、首筋から胸元まで痕を残す。吸い上げるたびに色づく肌と、びくりと揺れる手足。自覚なく誘う潤んだ瞳が瞬いて涙をこぼした。
「大好き」
キスの合間に告げられた言葉に「オレもだ」と返しながら、もっと深く愛している心を隠した。いつかこの子を穢して奪う日が来る。その時、イシスに嫌われないように、騙しながらでも距離を詰めよう。狡い大人の手管に抗う術のない純粋な魂を、キスで翻弄して溺れさせた。絶対逃がさないから覚悟しろよ。
イシスはタイフォン神たるオレの伴侶だと、すでに宣言を出した。神族とも通知した。にもかかわらず、まだイシスを贄の子どもとして見る神官がいる。贄を用意したティターンと違うと思ったが、やはり人間は同じか。
退出しない神官に声を掛ければ、それはこの男の栄誉になる。追い出したい本音と、絶対に栄誉など与えたくない意地がぶつかり合う。神官を八つ裂きにしようか迷うオレの怒りに気づいたゲリュオンが、手荒く追い払った。不安そうなイシスを抱き寄せて黒髪や頬にキスをする。それでも泣きそうな顔は笑わなかった。
「気に入らないなら処分すりゃいいだろ」
爺さん経由で申しつければいい。ゲリュオンはそう言って、さっさと続き部屋に引っ込んだ。嬉しそうに尻尾を振るシェリアが一緒に消え、部屋に2人きりだ。
「ごめん、イシス。オレが出ていけと声をかけたら、あの白い服の神官は栄誉を得たと喜ぶ。それは嫌だったんだ」
きちんと説明する。じっと見上げる紫の瞳が潤んでいた。睨まれたことは、イシスの心の傷を抉ったのか。かつて虐げた連中は神罰を下したが、それでも傷はまだ血を流すのか? 哀れに思うより、同じ痛みを分かち合いたいと願う。だから目を逸らさずに、唇を重ねた。
「僕、セティの邪魔じゃない?」
不安に揺らぐ声に、きっちり返した。
「それはない。仲直りしよう、イシス」
「うん」
頷いて抱き着くイシスの唇を貪りながら、部屋に結界を張った。可愛いイシスの声を誰かに聞かせる気はないし、万が一にも覗かれたら殺す。目を抉る程度じゃ許せなかった。柔らかな体は子どもの頃と同じで、体温が高くて心地よい。抱き上げて、ベッドの上に横たえた。
神族に生まれ変わったあの禊で、イシスの体は16歳の実年齢に見合う姿に成長した。幼く愛らしい子どもの振る舞いはそのままで、愛されるに足る体になっている。それでも抱かずに来たのは、イシスの心が幼いためだ。泣かせたいのではなく、鳴かせたい。
唇を離すと心配そうな目をするから、塞いだまま手を滑らせた。纏う服を脱がせ、指先に馴染む肌をなぞる。
「ふ……ん、ぅ……っ」
溢れる声も甘く、得た快感を逃す術を知らないイシスが身を捩った。両手を繋いで顔の横に押さえつければ、にっこりと笑う。自分が傷つけられるなんて、考えてもいない。オレを信頼し切ったこの目を曇らせるのか? 失うかもしれない恐怖に、欲を抑え込んだ。まだ早い。この子が本当にオレを求めるまで……あと少し。
「いっぱいキスしような」
「セティ、僕もする」
際どいセリフを自覚なく吐き出す唇を塞いで、首筋から胸元まで痕を残す。吸い上げるたびに色づく肌と、びくりと揺れる手足。自覚なく誘う潤んだ瞳が瞬いて涙をこぼした。
「大好き」
キスの合間に告げられた言葉に「オレもだ」と返しながら、もっと深く愛している心を隠した。いつかこの子を穢して奪う日が来る。その時、イシスに嫌われないように、騙しながらでも距離を詰めよう。狡い大人の手管に抗う術のない純粋な魂を、キスで翻弄して溺れさせた。絶対逃がさないから覚悟しろよ。
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