195 / 321
194.お爺ちゃんのいる神殿だ
しおりを挟む
飛んできたお父さんが一鳴きすると、お兄さん達が左右に分かれた。お母さんの傷、もう痛くないみたい。良かった。にこにこしながら見つめる僕は、下から飛んでくる細い矢に気づいた。なんか色が黒くて汚い。顔を顰めた僕同様、セティとゲリュオンも顔をしかめた。
「毒矢か」
「きたねえ方法ばかり上手くなりやがって」
毒矢? それって刺さると前回より痛いんじゃないかな。慌てる僕をセティが後ろから抱きしめてくれる。見上げた先で、黒髪のタイフォン神であるセティが笑った。
「問題ない。ドラゴンに加護を与えたからな」
「じゃあ、俺もやっとくか」
戦の神様であるゲリュオンが大きく両手を広げて、ドラゴン達に何かを飛ばした。きらきらする光の道に見える。絵本にあった神様の祝福だ! 目を見開き、手を叩いて喜んだ僕にセティがキスをくれる。シェリアやゲリュオンがいるから、目蓋と額だった。お返しに僕も頬にキスをする。
お母さん達がケガしないようにしたと聞いて、安心した僕はシェリアと手を繋いで屋根に座った。いろんな色の屋根があるね。あっちの青より、こっちの方が新しいのかな。お兄さん達が攻撃したのは、外へ続く門のところだった。フェリクスお兄さんが炎で吹き飛ばした後ろから、ルードルフお兄さんが尻尾で塀を壊す。
「あの壁で閉じ込めてたの?」
「ん、ああ。そういうふうに見えるが、逆だ。外から襲われないように都を守っていた」
壊れた壁や門を通って、たくさんの人が外へ出ていく。駝馬という動物に引かれた荷車もいた。閉じ込められていて、やっと外へ出られたのかと思ったけど違うみたい。セティの説明を受けて、僕はぼんやりと人が逃げていくのを見つめた。
人がたくさんいるところに、お兄さん達は攻撃しない。今度は別の門や塀を壊した。それを目で追いかけていたら、見たことのある建物がある。
「セティ、あそこ! お爺ちゃんのいる神殿だ」
「お爺ちゃん?」
シェリアが不思議そうにするから、一生懸命伝える。僕が暗い洞窟にいた頃、時々甘い物をくれた。優しく撫でて、絵本を読んでくれるんだよ。しわくちゃの手だけど、暖かかった。シェリアが焦った顔でゲリュオンを振り返る。
「街、全部壊すの?!」
あの神殿も? そう叫んだシェリアに、僕はびっくりした。壊しちゃうの? 中にいるお爺ちゃんも一緒に?
「大丈夫だ。壊す場所は決まってるからな」
ぽんと頭に手を置いたセティが僕とシェリアを撫でる。瞬きしたら、じわっと目が熱くなった。
「ほんとに、お爺ちゃんを壊さない?」
「心配するな。壊すのは貴族街と呼ばれる地区と王宮、それから外側の塀だけだ」
「よかったね」
笑うシェリアが背伸びして僕を撫でる。嬉しくてセティに抱き着いて、屋根の上でキスをした。唇だけど、ゲリュオン達いるけどいいのかな。後でお爺ちゃんにまた会えるね。シェリアも一緒に行けるか、セティに聞いてもらおう。
「加護を失ったのは、王侯貴族の罪だからな」
ぼそっと言ったセティの目が、一瞬だけ……赤くなる。怒ってる時に見せた色だけど、僕は怖くなくて綺麗だと思った。
「毒矢か」
「きたねえ方法ばかり上手くなりやがって」
毒矢? それって刺さると前回より痛いんじゃないかな。慌てる僕をセティが後ろから抱きしめてくれる。見上げた先で、黒髪のタイフォン神であるセティが笑った。
「問題ない。ドラゴンに加護を与えたからな」
「じゃあ、俺もやっとくか」
戦の神様であるゲリュオンが大きく両手を広げて、ドラゴン達に何かを飛ばした。きらきらする光の道に見える。絵本にあった神様の祝福だ! 目を見開き、手を叩いて喜んだ僕にセティがキスをくれる。シェリアやゲリュオンがいるから、目蓋と額だった。お返しに僕も頬にキスをする。
お母さん達がケガしないようにしたと聞いて、安心した僕はシェリアと手を繋いで屋根に座った。いろんな色の屋根があるね。あっちの青より、こっちの方が新しいのかな。お兄さん達が攻撃したのは、外へ続く門のところだった。フェリクスお兄さんが炎で吹き飛ばした後ろから、ルードルフお兄さんが尻尾で塀を壊す。
「あの壁で閉じ込めてたの?」
「ん、ああ。そういうふうに見えるが、逆だ。外から襲われないように都を守っていた」
壊れた壁や門を通って、たくさんの人が外へ出ていく。駝馬という動物に引かれた荷車もいた。閉じ込められていて、やっと外へ出られたのかと思ったけど違うみたい。セティの説明を受けて、僕はぼんやりと人が逃げていくのを見つめた。
人がたくさんいるところに、お兄さん達は攻撃しない。今度は別の門や塀を壊した。それを目で追いかけていたら、見たことのある建物がある。
「セティ、あそこ! お爺ちゃんのいる神殿だ」
「お爺ちゃん?」
シェリアが不思議そうにするから、一生懸命伝える。僕が暗い洞窟にいた頃、時々甘い物をくれた。優しく撫でて、絵本を読んでくれるんだよ。しわくちゃの手だけど、暖かかった。シェリアが焦った顔でゲリュオンを振り返る。
「街、全部壊すの?!」
あの神殿も? そう叫んだシェリアに、僕はびっくりした。壊しちゃうの? 中にいるお爺ちゃんも一緒に?
「大丈夫だ。壊す場所は決まってるからな」
ぽんと頭に手を置いたセティが僕とシェリアを撫でる。瞬きしたら、じわっと目が熱くなった。
「ほんとに、お爺ちゃんを壊さない?」
「心配するな。壊すのは貴族街と呼ばれる地区と王宮、それから外側の塀だけだ」
「よかったね」
笑うシェリアが背伸びして僕を撫でる。嬉しくてセティに抱き着いて、屋根の上でキスをした。唇だけど、ゲリュオン達いるけどいいのかな。後でお爺ちゃんにまた会えるね。シェリアも一緒に行けるか、セティに聞いてもらおう。
「加護を失ったのは、王侯貴族の罪だからな」
ぼそっと言ったセティの目が、一瞬だけ……赤くなる。怒ってる時に見せた色だけど、僕は怖くなくて綺麗だと思った。
57
お気に入りに追加
1,335
あなたにおすすめの小説

あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
【完結】僕はキミ専属の魔力付与能力者
みやこ嬢
BL
【2025/01/24 完結、ファンタジーBL】
リアンはウラガヌス伯爵家の養い子。魔力がないという理由で貴族教育を受けさせてもらえないまま18の成人を迎えた。伯爵家の兄妹に良いように使われてきたリアンにとって唯一安らげる場所は月に数度訪れる孤児院だけ。その孤児院でたまに会う友人『サイ』と一緒に子どもたちと遊んでいる間は嫌なことを全て忘れられた。
ある日、リアンに魔力付与能力があることが判明する。能力を見抜いた魔法省職員ドロテアがウラガヌス伯爵家にリアンの今後について話に行くが、何故か軟禁されてしまう。ウラガヌス伯爵はリアンの能力を利用して高位貴族に娘を嫁がせようと画策していた。
そして見合いの日、リアンは初めて孤児院以外の場所で友人『サイ』に出会う。彼はレイディエーレ侯爵家の跡取り息子サイラスだったのだ。明らかな身分の違いや彼を騙す片棒を担いだ負い目からサイラスを拒絶してしまうリアン。
「君とは対等な友人だと思っていた」
素直になれない魔力付与能力者リアンと、無自覚なままリアンをそばに置こうとするサイラス。両片想い状態の二人が様々な障害を乗り越えて幸せを掴むまでの物語です。
【独占欲強め侯爵家跡取り×ワケあり魔力付与能力者】
* * *
2024/11/15 一瞬ホトラン入ってました。感謝!

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼毎週、月・水・金に投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する
あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。
領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。
***
王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。
・ハピエン
・CP左右固定(リバありません)
・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません)
です。
べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。
***
2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる