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194.お爺ちゃんのいる神殿だ
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飛んできたお父さんが一鳴きすると、お兄さん達が左右に分かれた。お母さんの傷、もう痛くないみたい。良かった。にこにこしながら見つめる僕は、下から飛んでくる細い矢に気づいた。なんか色が黒くて汚い。顔を顰めた僕同様、セティとゲリュオンも顔をしかめた。
「毒矢か」
「きたねえ方法ばかり上手くなりやがって」
毒矢? それって刺さると前回より痛いんじゃないかな。慌てる僕をセティが後ろから抱きしめてくれる。見上げた先で、黒髪のタイフォン神であるセティが笑った。
「問題ない。ドラゴンに加護を与えたからな」
「じゃあ、俺もやっとくか」
戦の神様であるゲリュオンが大きく両手を広げて、ドラゴン達に何かを飛ばした。きらきらする光の道に見える。絵本にあった神様の祝福だ! 目を見開き、手を叩いて喜んだ僕にセティがキスをくれる。シェリアやゲリュオンがいるから、目蓋と額だった。お返しに僕も頬にキスをする。
お母さん達がケガしないようにしたと聞いて、安心した僕はシェリアと手を繋いで屋根に座った。いろんな色の屋根があるね。あっちの青より、こっちの方が新しいのかな。お兄さん達が攻撃したのは、外へ続く門のところだった。フェリクスお兄さんが炎で吹き飛ばした後ろから、ルードルフお兄さんが尻尾で塀を壊す。
「あの壁で閉じ込めてたの?」
「ん、ああ。そういうふうに見えるが、逆だ。外から襲われないように都を守っていた」
壊れた壁や門を通って、たくさんの人が外へ出ていく。駝馬という動物に引かれた荷車もいた。閉じ込められていて、やっと外へ出られたのかと思ったけど違うみたい。セティの説明を受けて、僕はぼんやりと人が逃げていくのを見つめた。
人がたくさんいるところに、お兄さん達は攻撃しない。今度は別の門や塀を壊した。それを目で追いかけていたら、見たことのある建物がある。
「セティ、あそこ! お爺ちゃんのいる神殿だ」
「お爺ちゃん?」
シェリアが不思議そうにするから、一生懸命伝える。僕が暗い洞窟にいた頃、時々甘い物をくれた。優しく撫でて、絵本を読んでくれるんだよ。しわくちゃの手だけど、暖かかった。シェリアが焦った顔でゲリュオンを振り返る。
「街、全部壊すの?!」
あの神殿も? そう叫んだシェリアに、僕はびっくりした。壊しちゃうの? 中にいるお爺ちゃんも一緒に?
「大丈夫だ。壊す場所は決まってるからな」
ぽんと頭に手を置いたセティが僕とシェリアを撫でる。瞬きしたら、じわっと目が熱くなった。
「ほんとに、お爺ちゃんを壊さない?」
「心配するな。壊すのは貴族街と呼ばれる地区と王宮、それから外側の塀だけだ」
「よかったね」
笑うシェリアが背伸びして僕を撫でる。嬉しくてセティに抱き着いて、屋根の上でキスをした。唇だけど、ゲリュオン達いるけどいいのかな。後でお爺ちゃんにまた会えるね。シェリアも一緒に行けるか、セティに聞いてもらおう。
「加護を失ったのは、王侯貴族の罪だからな」
ぼそっと言ったセティの目が、一瞬だけ……赤くなる。怒ってる時に見せた色だけど、僕は怖くなくて綺麗だと思った。
「毒矢か」
「きたねえ方法ばかり上手くなりやがって」
毒矢? それって刺さると前回より痛いんじゃないかな。慌てる僕をセティが後ろから抱きしめてくれる。見上げた先で、黒髪のタイフォン神であるセティが笑った。
「問題ない。ドラゴンに加護を与えたからな」
「じゃあ、俺もやっとくか」
戦の神様であるゲリュオンが大きく両手を広げて、ドラゴン達に何かを飛ばした。きらきらする光の道に見える。絵本にあった神様の祝福だ! 目を見開き、手を叩いて喜んだ僕にセティがキスをくれる。シェリアやゲリュオンがいるから、目蓋と額だった。お返しに僕も頬にキスをする。
お母さん達がケガしないようにしたと聞いて、安心した僕はシェリアと手を繋いで屋根に座った。いろんな色の屋根があるね。あっちの青より、こっちの方が新しいのかな。お兄さん達が攻撃したのは、外へ続く門のところだった。フェリクスお兄さんが炎で吹き飛ばした後ろから、ルードルフお兄さんが尻尾で塀を壊す。
「あの壁で閉じ込めてたの?」
「ん、ああ。そういうふうに見えるが、逆だ。外から襲われないように都を守っていた」
壊れた壁や門を通って、たくさんの人が外へ出ていく。駝馬という動物に引かれた荷車もいた。閉じ込められていて、やっと外へ出られたのかと思ったけど違うみたい。セティの説明を受けて、僕はぼんやりと人が逃げていくのを見つめた。
人がたくさんいるところに、お兄さん達は攻撃しない。今度は別の門や塀を壊した。それを目で追いかけていたら、見たことのある建物がある。
「セティ、あそこ! お爺ちゃんのいる神殿だ」
「お爺ちゃん?」
シェリアが不思議そうにするから、一生懸命伝える。僕が暗い洞窟にいた頃、時々甘い物をくれた。優しく撫でて、絵本を読んでくれるんだよ。しわくちゃの手だけど、暖かかった。シェリアが焦った顔でゲリュオンを振り返る。
「街、全部壊すの?!」
あの神殿も? そう叫んだシェリアに、僕はびっくりした。壊しちゃうの? 中にいるお爺ちゃんも一緒に?
「大丈夫だ。壊す場所は決まってるからな」
ぽんと頭に手を置いたセティが僕とシェリアを撫でる。瞬きしたら、じわっと目が熱くなった。
「ほんとに、お爺ちゃんを壊さない?」
「心配するな。壊すのは貴族街と呼ばれる地区と王宮、それから外側の塀だけだ」
「よかったね」
笑うシェリアが背伸びして僕を撫でる。嬉しくてセティに抱き着いて、屋根の上でキスをした。唇だけど、ゲリュオン達いるけどいいのかな。後でお爺ちゃんにまた会えるね。シェリアも一緒に行けるか、セティに聞いてもらおう。
「加護を失ったのは、王侯貴族の罪だからな」
ぼそっと言ったセティの目が、一瞬だけ……赤くなる。怒ってる時に見せた色だけど、僕は怖くなくて綺麗だと思った。
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