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192.人前で唇はダメ
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朝日と同時に起きて、大急ぎで顔を洗った。シェリアとタオルを半分こして、ボリスと一緒に走って戻る。テントはすでにゲリュオンが片付けていた。僕とシェリアの着替えはどうするの? そう聞いたら、そこの茂みで着替えろって。お洋服を持って茂みへ入っていく。隣でごそごそするシェリアと目が合った。
「着替えた?」
「うん、これから」
せーので、同時に服を脱いだ。風が少し冷たいから、急いで着替える。あまり葉っぱに触ると、朝露で濡れちゃうの。冷たいけど、この水は綺麗だから飲めるんだよ。旅の途中で教わった話をしながら、また同時に服を被る。出てきたら、シェリアと僕の服……同じ形だった。
ワンピースと呼ぶスカートの服。上と下が一緒で、腰にベルトや布を巻くんだ。僕はいつもお気に入りの紫の布を巻いている。シェリアは革のベルトだった。今日は僕の服はピンク色、シェリアは黄色、仲良く手を繋いで戻ったら、セティとゲリュオンが変な顔をする。
「仲がいいのも考え物だ」
「ただの友人じゃねえのか?」
難しいお話なのかな。首を傾げると、シェリアも真似した。楽しくなって、ボリスと3人で首を傾けていると、後ろからセティに抱っこされちゃった。
「朝飯食って出かけるぞ」
「うん!」
朝の挨拶で頬にキスをした。泣いて騒ぐので、ボリスにもキスをする。真似したシェリアがゲリュオンにくっついて、口にキスをした。
「うっ!?」
全員動きが止まる。だけど、何もなかったようにお父さんが獲物の皮をむき始め、フェリクスお兄さんやルードルフお兄さんも手伝い始めた。じっくり見つめるボリスを、お母さんが川へ呼び寄せる。お魚を運ぶよう言いつけているみたい。
「僕も、口にする」
「……人前ではダメだ」
暴走するとか変なこと言いながら、セティが首を横に振った。でもシェリアはしたのに。とぼとぼと歩いて鍋の前に座ったら、ゲリュオンがシェリアに言い聞せていた。やっぱり人前で唇をくっつけるキスはダメなんだ。僕、ちゃんと夜まで我慢しなくちゃ。
魚のスープには肉も入ってて、朝は忙しいからとお母さんが笑った。全部一緒だと味が違って、これも美味しい。いっぱい食べて、パンでスープを最後まで吸い取って口に入れた。満足したところで片づけを手伝い、セティ、僕、シェリア、ゲリュオンの順番で並ぶ。
飛んでいくお父さん達を見送り、丸く輪になった。転移魔法を使うと言われて、眩暈がするのを思い出す。シェリアに教えようと思ったのに、それより早く足元が光ってしまった。目を閉じて開けたら見晴らしのいい場所で、ぐるりと周囲を見回す。
「ここ、屋根の上?」
「よくわかったな」
偉いぞと褒められながら、屋根の下を覗く。ここ、高い屋根だね。それと下に住んでる人ごめんなさい。勝手に屋根を借りています。ぺこっと頭を下げていたら、不思議そうにシェリアが真似した。最近、僕の真似が楽しいみたい。抱っこしてきた籠から、ガイアが顔を見せた。隣でトムもきょろきょろしてる。
「危ないよ、落ちちゃう」
優しく撫でると、トムは嬉しそうに目を細めた。もう! 分かってるのかな、落ちると痛いと思うよ。
「そろそろ来るぞ」
セティが指さしたのは、お日様の方角だった。眩しい光の中に、ぽつんと影が出来て大きくなる。ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ……お父さん達だ。僕、五つまでしか数えられないけど、足りた。指を折って数えた影は見る間に大きくなり、屋根の下でいろんな声がする。
「ドラゴンだ!」
「防衛戦の準備を急げ」
「住民を退避させろ」
騒がしくなった足元に気を取られていたら、セティが屋根に絨毯を敷いた。お外でご飯を食べる時に使う厚い絨毯から、足を外へ出して座る。
「あちこち攻撃したら、最後にこっちに来るぞ」
そう言われて、この場所が一番高くて広い屋根だと気づいた。後ろには大きな塔もある。ここ、絵本のお城みたいな姿してるね。
「着替えた?」
「うん、これから」
せーので、同時に服を脱いだ。風が少し冷たいから、急いで着替える。あまり葉っぱに触ると、朝露で濡れちゃうの。冷たいけど、この水は綺麗だから飲めるんだよ。旅の途中で教わった話をしながら、また同時に服を被る。出てきたら、シェリアと僕の服……同じ形だった。
ワンピースと呼ぶスカートの服。上と下が一緒で、腰にベルトや布を巻くんだ。僕はいつもお気に入りの紫の布を巻いている。シェリアは革のベルトだった。今日は僕の服はピンク色、シェリアは黄色、仲良く手を繋いで戻ったら、セティとゲリュオンが変な顔をする。
「仲がいいのも考え物だ」
「ただの友人じゃねえのか?」
難しいお話なのかな。首を傾げると、シェリアも真似した。楽しくなって、ボリスと3人で首を傾けていると、後ろからセティに抱っこされちゃった。
「朝飯食って出かけるぞ」
「うん!」
朝の挨拶で頬にキスをした。泣いて騒ぐので、ボリスにもキスをする。真似したシェリアがゲリュオンにくっついて、口にキスをした。
「うっ!?」
全員動きが止まる。だけど、何もなかったようにお父さんが獲物の皮をむき始め、フェリクスお兄さんやルードルフお兄さんも手伝い始めた。じっくり見つめるボリスを、お母さんが川へ呼び寄せる。お魚を運ぶよう言いつけているみたい。
「僕も、口にする」
「……人前ではダメだ」
暴走するとか変なこと言いながら、セティが首を横に振った。でもシェリアはしたのに。とぼとぼと歩いて鍋の前に座ったら、ゲリュオンがシェリアに言い聞せていた。やっぱり人前で唇をくっつけるキスはダメなんだ。僕、ちゃんと夜まで我慢しなくちゃ。
魚のスープには肉も入ってて、朝は忙しいからとお母さんが笑った。全部一緒だと味が違って、これも美味しい。いっぱい食べて、パンでスープを最後まで吸い取って口に入れた。満足したところで片づけを手伝い、セティ、僕、シェリア、ゲリュオンの順番で並ぶ。
飛んでいくお父さん達を見送り、丸く輪になった。転移魔法を使うと言われて、眩暈がするのを思い出す。シェリアに教えようと思ったのに、それより早く足元が光ってしまった。目を閉じて開けたら見晴らしのいい場所で、ぐるりと周囲を見回す。
「ここ、屋根の上?」
「よくわかったな」
偉いぞと褒められながら、屋根の下を覗く。ここ、高い屋根だね。それと下に住んでる人ごめんなさい。勝手に屋根を借りています。ぺこっと頭を下げていたら、不思議そうにシェリアが真似した。最近、僕の真似が楽しいみたい。抱っこしてきた籠から、ガイアが顔を見せた。隣でトムもきょろきょろしてる。
「危ないよ、落ちちゃう」
優しく撫でると、トムは嬉しそうに目を細めた。もう! 分かってるのかな、落ちると痛いと思うよ。
「そろそろ来るぞ」
セティが指さしたのは、お日様の方角だった。眩しい光の中に、ぽつんと影が出来て大きくなる。ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ……お父さん達だ。僕、五つまでしか数えられないけど、足りた。指を折って数えた影は見る間に大きくなり、屋根の下でいろんな声がする。
「ドラゴンだ!」
「防衛戦の準備を急げ」
「住民を退避させろ」
騒がしくなった足元に気を取られていたら、セティが屋根に絨毯を敷いた。お外でご飯を食べる時に使う厚い絨毯から、足を外へ出して座る。
「あちこち攻撃したら、最後にこっちに来るぞ」
そう言われて、この場所が一番高くて広い屋根だと気づいた。後ろには大きな塔もある。ここ、絵本のお城みたいな姿してるね。
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