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190.家族全員で行くことになった
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お父さんから降りて、お礼を言って走り出す。セティが苦笑いしながら手を繋いでくれた。お母さんとルードルフお兄さんの間に飛び込んで、お母さんの後ろに回る。遊んでいると思ったみたいで、ボリスも隙間をすり抜けてきた。
「お母さんのケガ、どこ?」
『優しい子だこと。もう治りましたよ』
「誰が治してくれたの?」
ガイア以外に治せる人いたの? ほっとした僕を、ルードルフお兄さんが咥えてお母さんの前に置いた。またボリスが隙間を無理やり抜けて追いかけてくる。ぐるっと回ればいいのに。ボリスは僕の背中にぺたりと頬を押し付けて大人しくなった。
見上げた先で、お母さんが羽を広げる。穴はないみたい。
『ルードルフだよ。この子は治癒が得意なんだ』
「すごい! ルードルフお兄さん、お母さんの痛いの治してくれてありがとう」
『どういたしまして。ボリスと違ってしっかりしてるな。うちの4番目は』
くすくす笑うルードルフお兄さんに、怒ったボリスが突進する。それを受け止めたルードルフお兄さんは、ボリスを転がして遊び始めた。ボリスも楽しそうだからいいのかな。僕だったら傷だらけになっちゃいそう。
「ヴルム、今回の犯人はオレの信者だった。すまない」
セティが頭を下げる。どうして? セティじゃない人が傷つけたのに。驚いた僕がお母さんとセティを交互に見ていると、お母さんが笑った。
『堅苦しいこと、面倒だね……タイフォンともあろう者が、簡単に頭を下げちゃいけないよ』
「簡単じゃないさ」
『だったらなおさらだ。ウーラノスという国を潰すぞ』
お父さんが口を挟む。セティは肩を竦めて「オレは協力する」と言い切った。
『金塊はあるかねぇ』
「好きなだけ持っていけ」
国を守護していた破壊神の許可が出た。喜ぶお母さんを見て、僕も嬉しくなる。お父さんは複雑そうな顔をしたけど、何も言わなかった。お腹でも痛いのかな? それで、国を潰すって何をするんだろう。僕も手伝えるのかな。セティは考え込んで眉を寄せた。
「イシスは……留守番も怖いな」
「誘拐被害の常連だぞ」
ゲリュオンが難しいことを言った。
『この子はよく攫われるから』
お母さんも心配そうに呟いて、お父さんが大きく頷いた。お兄さん達がきょとんとした後、そうなのか? って首を傾げる。よく攫われるけど、いつもちゃんとセティやお父さんを呼んでるよ。
「連れて行こう。いざとなったら寝ててもらえば……」
ぐあ! 興奮した声を上げるボリスだけど、置いて行くの? 拗ねちゃうと思う。心配する僕に、セティが溜め息をついてから肩を竦めた。
「ボリスも連れていくしかないだろ。聖地にどれだけ人間が入り込んだか、わからん。傷つけられたら取り返しがつかないからな」
え? ボリスが襲われちゃうのは困る。いろいろと話し合った結果、ボリスはお母さんと一緒に行くことになった。攻撃はお父さんとお兄さん2人。僕達はセティの転移で行くみたい。背中に僕達が乗ってると戦いづらいんだって。
戦うのは悪い人といい人がする、絵本に書いてあった。お父さん達は悪い人じゃないし、セティやゲリュオンも違う。じゃあ、ウーラノスが悪いのかも。
「ウーラノスって、悪いの?」
お父さん達ドラゴンが一斉に頷くと、ぶわっと風が吹いた。びっくりしたけど、そっか。ウーラノスが悪いんだね。お父さん達じゃなくて良かった。
「お母さんのケガ、どこ?」
『優しい子だこと。もう治りましたよ』
「誰が治してくれたの?」
ガイア以外に治せる人いたの? ほっとした僕を、ルードルフお兄さんが咥えてお母さんの前に置いた。またボリスが隙間を無理やり抜けて追いかけてくる。ぐるっと回ればいいのに。ボリスは僕の背中にぺたりと頬を押し付けて大人しくなった。
見上げた先で、お母さんが羽を広げる。穴はないみたい。
『ルードルフだよ。この子は治癒が得意なんだ』
「すごい! ルードルフお兄さん、お母さんの痛いの治してくれてありがとう」
『どういたしまして。ボリスと違ってしっかりしてるな。うちの4番目は』
くすくす笑うルードルフお兄さんに、怒ったボリスが突進する。それを受け止めたルードルフお兄さんは、ボリスを転がして遊び始めた。ボリスも楽しそうだからいいのかな。僕だったら傷だらけになっちゃいそう。
「ヴルム、今回の犯人はオレの信者だった。すまない」
セティが頭を下げる。どうして? セティじゃない人が傷つけたのに。驚いた僕がお母さんとセティを交互に見ていると、お母さんが笑った。
『堅苦しいこと、面倒だね……タイフォンともあろう者が、簡単に頭を下げちゃいけないよ』
「簡単じゃないさ」
『だったらなおさらだ。ウーラノスという国を潰すぞ』
お父さんが口を挟む。セティは肩を竦めて「オレは協力する」と言い切った。
『金塊はあるかねぇ』
「好きなだけ持っていけ」
国を守護していた破壊神の許可が出た。喜ぶお母さんを見て、僕も嬉しくなる。お父さんは複雑そうな顔をしたけど、何も言わなかった。お腹でも痛いのかな? それで、国を潰すって何をするんだろう。僕も手伝えるのかな。セティは考え込んで眉を寄せた。
「イシスは……留守番も怖いな」
「誘拐被害の常連だぞ」
ゲリュオンが難しいことを言った。
『この子はよく攫われるから』
お母さんも心配そうに呟いて、お父さんが大きく頷いた。お兄さん達がきょとんとした後、そうなのか? って首を傾げる。よく攫われるけど、いつもちゃんとセティやお父さんを呼んでるよ。
「連れて行こう。いざとなったら寝ててもらえば……」
ぐあ! 興奮した声を上げるボリスだけど、置いて行くの? 拗ねちゃうと思う。心配する僕に、セティが溜め息をついてから肩を竦めた。
「ボリスも連れていくしかないだろ。聖地にどれだけ人間が入り込んだか、わからん。傷つけられたら取り返しがつかないからな」
え? ボリスが襲われちゃうのは困る。いろいろと話し合った結果、ボリスはお母さんと一緒に行くことになった。攻撃はお父さんとお兄さん2人。僕達はセティの転移で行くみたい。背中に僕達が乗ってると戦いづらいんだって。
戦うのは悪い人といい人がする、絵本に書いてあった。お父さん達は悪い人じゃないし、セティやゲリュオンも違う。じゃあ、ウーラノスが悪いのかも。
「ウーラノスって、悪いの?」
お父さん達ドラゴンが一斉に頷くと、ぶわっと風が吹いた。びっくりしたけど、そっか。ウーラノスが悪いんだね。お父さん達じゃなくて良かった。
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