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188.オレの伴侶だぞ(SIDEセティ)

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*****SIDE セティ

「イシスっ!!」

 大丈夫、僕が付いていくから。落下するイシスを追う形で、ガイアが飛び付く。地上からの攻撃で羽を痛めたヴルムが旋回する。安全に降りられる地上を探す彼女を放り出して追うわけにいかなかった。ガイアがいる。創造神であるガイアが一緒にいれば命の危険はない。だが怖がりなイシスの心が心配だった。

『私はいいから行っておやり』

 ヴルムの言葉に目を見開いた後、ゆっくり深呼吸した。

「お前を置いて追いかけたら、オレがイシスに叱られる」

 それもそうだと笑うヴルムは、それほど酷いケガではないようだ。旋回する角度も安定しており、身軽なフェリクスが焼いた丘の上に降り立った。心配そうに隣に舞い降りたのはルードルフだ。足元で騒ぐ人間の声に気づくと、魔力を高めた。

 近づく者をけん制するため、大地から針が突き出す。文字通り剣山となった丘の上で、オレはまずヴルムの傷を確認した。当人が主張するように傷は浅い。ガイアがいれば一瞬で治癒できるが、オレは苦手なのだ。出来ないわけではないので、調整しながら傷を塞いで痛みを散らす。

「応急処置だ。この先はガイアに頼もう」

 イシスが気にしていたトムの籠を首から外し、ルードルフから降りたゲリュオンに渡した。シェリアが手を伸ばし、代わりに受け取る。シェリアはしきりに「イシスは?」と心配を口にする。それをゲリュオンが「問題ない」と宥めていた。いいカップルじゃないか。

 感じ取れるガイアの気配が落ち着いてるので、イシスも問題はない。ヴルムを心配する声が聞こえて、やっぱりと笑った。それを伝え、迎えに行こうとした瞬間……イシスの緊張が伝わった。

 人間? それも鎧を着た者がいるのか! この状況で武装した人間なんて敵しかいない。まだ状況が理解できていないイシスは、危険を察知していなかった。強く呼べ、早く! 居場所を特定するオレの焦りが、高まる。

 ドラゴンの背に乗るより、直接転移するために場所を確定しなくては。気を静めようとしたオレの脳裏に、泣き叫ぶイシスの声が飛び込んだ。

 わかんない、怖い。いやだ、来ないで! セティ、助けて!! 僕、また捕まっちゃう。誰かに食べられちゃう!!

、助けてっ!」

 道が開く。イシスが固有名詞を口にしたことで、オレの脳裏にイシスの居場所がくっきりと浮かんだ。同時に呼ばれたファフニールが、蹴散らしていた人間の軍を放置して咆哮を上げる。一目散に飛んでいく方向は、オレがイシスを感知した方角と同じだった。

 イシスはオレの伴侶だ! 

「誰が食わせるか」

 鎧姿の男とイシスの間に割り込んだ。タイフォン様と呼んだ男の声に、信者であるウーラノスの訛りを感じとる。あの国は愚かにも、また禁忌に手を出した。王族も含め、全員滅ぼすしかあるまい。怒りと苛立ち、様々な負の感情が心を黒く染めた。

 我が友であるドラゴンを傷つけ、神々に刃を向けた。知らなかったでは済まぬ。この領域は神々が支配する聖域として定められた。それゆえに手付かずの自然と鉱脈が残されている。その鉱脈を狙った昨夜の爆破も含め、人間は協定違反をしたのだ。見逃す余地はなかった。

「我が贄に手を出すか。愚かな人間よ、聖地の山を崩し、竜帝の妻を傷つけた。そなたらの行為は、神々への宣戦布告とみなす」

 震えるイシスに気づいて、オレは怒りを必死で抑える。深呼吸を数回繰り返し、愛し子を振り返った。

「もう大丈夫だ、イシス」

「うん」

 素直に頷いたイシスの上に、ドラゴンの影がかかる。どうやら竜帝ファフニールもご登場らしい。
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