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184.信じるのも強いこと
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外が明るくなって、ゲリュオンとシェリアも起きてきた。ボリスはすっかり体調がよくなったようで、川に入って遊び始める。魚を獲るから邪魔しないの、とお母さんに叱られて追い出された。戻ってきたボリスと一緒に鍋の前で待つ。今日は真ん中のお兄さんに会いに行く予定なのに、お父さん達まだ帰ってこないね。
お母さんを見ると気にしないで魚を獲っていた。心配にならないのかな? 森で木の実や果物、燃やす枝を拾ってきたセティ達が笑いながら教えてくれた。信じているからこそ、騒がないで待ってるんだよって。
「よくわからない」
シェリアも同じだったみたいで、大きく頷く。ボリスも同様だった。
「いいか? ファフニールは竜帝だ。ドラゴンの中で一番強い。そんな彼が誰に負けるんだ?」
考えてみたけど、ドラゴンは神様以外じゃ勝てないと思う。だから唸っても答えは出て来なかった。ボリスはお父さんが負けないと訴えたみたい。
「負けない最強のドラゴンが、戻ってこないわけないだろ。ここには愛する妻と子ども達がいるんだぞ」
お母さんもボリスも僕もいる。そう言われたら、心配する必要はないのかな? と思う。でも僕はセティが帰ってこなかったら心配する。セティは誰にも負けないし強いけど、たぶんお父さんもそうだけど……やっぱり怖いもん。
暗い洞窟で、いつも放っておかれた。あの頃みたいに一人になったら怖い。
「イシス、待つのも強さだぞ」
ぽんと頭の上に手を置いたセティの言葉に、少し考えてみた。待ってるのは怖い、それでも我慢して待てるなら強いのかな。戦う時も怖いとしたら、どっちが強いんだろう。こてりと首を傾げた僕を抱き上げて、膝の上に座らせたセティが上を指さした。
「ほら、帰ってきた」
「本当だ」
お父さんとフェリクスお兄さん、それに……あれは誰? もうひとつドラゴンの影があった。お友達を見つけて、一緒にご飯を食べようと誘ったのかも知れない。わくわくしながら、僕はお父さん達が降りてくるのを待った。
「よし、いいぞ」
セティの許可が出た。先に駆け寄ったボリスはずるい。お父さんに甘えて、フェリクスお兄さんに突かれていた。僕も勢いよく飛び付いて、お父さんの足に腕を回す。太い足は半分も抱えられなかった。
『ただいま帰ったぞ、我が子らよ』
「お帰りなさい、お父さん」
たくさん舐めてくれるお父さんが、僕を咥えて真ん中に置いた。ボリスと並んで見上げたのは、茶色いドラゴン。お母さんやお父さんはつるんとした鱗、ボリスとエルランドお兄さんは表面がガサガサしてる。フェリクスお兄さんはペタッとして温かかった。僕が知ってる誰とも違う鱗のドラゴンは、不思議そうに僕を見る。
「あ、亀さんに似てる!」
大きな水晶をくれた亀さんは、背中の甲羅に山を乗せていた。この茶色いドラゴンも、岩みたいなの。ごつごつして硬そうだった。
『亀?』
「霊亀殿のことだ」
レイキ? あの亀さん、お名前があったんだね。知らなかった。
『良い勘をしてるね、僕は君達の2番目の兄ルードルフだよ』
「真ん中のお兄さん?」
頷いて肯定する茶色のドラゴンに、僕は目を輝かせた。
お母さんを見ると気にしないで魚を獲っていた。心配にならないのかな? 森で木の実や果物、燃やす枝を拾ってきたセティ達が笑いながら教えてくれた。信じているからこそ、騒がないで待ってるんだよって。
「よくわからない」
シェリアも同じだったみたいで、大きく頷く。ボリスも同様だった。
「いいか? ファフニールは竜帝だ。ドラゴンの中で一番強い。そんな彼が誰に負けるんだ?」
考えてみたけど、ドラゴンは神様以外じゃ勝てないと思う。だから唸っても答えは出て来なかった。ボリスはお父さんが負けないと訴えたみたい。
「負けない最強のドラゴンが、戻ってこないわけないだろ。ここには愛する妻と子ども達がいるんだぞ」
お母さんもボリスも僕もいる。そう言われたら、心配する必要はないのかな? と思う。でも僕はセティが帰ってこなかったら心配する。セティは誰にも負けないし強いけど、たぶんお父さんもそうだけど……やっぱり怖いもん。
暗い洞窟で、いつも放っておかれた。あの頃みたいに一人になったら怖い。
「イシス、待つのも強さだぞ」
ぽんと頭の上に手を置いたセティの言葉に、少し考えてみた。待ってるのは怖い、それでも我慢して待てるなら強いのかな。戦う時も怖いとしたら、どっちが強いんだろう。こてりと首を傾げた僕を抱き上げて、膝の上に座らせたセティが上を指さした。
「ほら、帰ってきた」
「本当だ」
お父さんとフェリクスお兄さん、それに……あれは誰? もうひとつドラゴンの影があった。お友達を見つけて、一緒にご飯を食べようと誘ったのかも知れない。わくわくしながら、僕はお父さん達が降りてくるのを待った。
「よし、いいぞ」
セティの許可が出た。先に駆け寄ったボリスはずるい。お父さんに甘えて、フェリクスお兄さんに突かれていた。僕も勢いよく飛び付いて、お父さんの足に腕を回す。太い足は半分も抱えられなかった。
『ただいま帰ったぞ、我が子らよ』
「お帰りなさい、お父さん」
たくさん舐めてくれるお父さんが、僕を咥えて真ん中に置いた。ボリスと並んで見上げたのは、茶色いドラゴン。お母さんやお父さんはつるんとした鱗、ボリスとエルランドお兄さんは表面がガサガサしてる。フェリクスお兄さんはペタッとして温かかった。僕が知ってる誰とも違う鱗のドラゴンは、不思議そうに僕を見る。
「あ、亀さんに似てる!」
大きな水晶をくれた亀さんは、背中の甲羅に山を乗せていた。この茶色いドラゴンも、岩みたいなの。ごつごつして硬そうだった。
『亀?』
「霊亀殿のことだ」
レイキ? あの亀さん、お名前があったんだね。知らなかった。
『良い勘をしてるね、僕は君達の2番目の兄ルードルフだよ』
「真ん中のお兄さん?」
頷いて肯定する茶色のドラゴンに、僕は目を輝かせた。
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