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176.ボリスが叱られちゃった
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朝は大騒ぎだった。僕がいないことに気づいたボリスが騒いで、フェリクスお兄さんを噛んだみたい。僕がお兄さんの下敷きになったと思ったのかな。ケンカになって、ボリスが負けて大泣き。お母さんが仲裁に入ったところに、僕がセティに抱っこされてテントから出てきた。
ぐぁああああ! 地面を尻尾で叩いて怒るボリスへ、お父さんががつんと一撃。尻尾で叩く。僕にはドラゴンの言葉が分からないけど、唸りながら説教されていた。ボリスはちらちらと僕を見て、セティを睨む。そのたびにお父さんとお母さんに叱られる繰り返し。
「イシスはモテるな」
騒ぎの大きさに起きたゲリュオンが欠伸をして、そんなことを言う。僕がモテる? 何を持つの? キョトンとして尋ねたら、大笑いされた。何か違う意味があるのかも。ボリスは可哀想になるくらい叱られて、尻尾も顔もしょんぼりした。
『イシスにも話しておくか』
「いや、オレが注意しておく」
お父さんとセティの間で何かが決まって、お父さんは僕の頭を短い前足で撫でてくれた。よくわからないけど嬉しいから笑う。
『おいで、イシス。もう大丈夫だから』
危ないと思ってないよ。ただびっくりしたの。駆け寄ってお母さんの足元で、動物の皮を剥ぐお手伝いをした。僕はドラゴンの爪や牙がないけど、代わりに手が使える。兎の耳を掴んだ僕の前で、お母さんが器用に皮を開いた。あまり血が出ないのは、皮と肉の間を上手に切ってるからだって。
捕まえた動物は無駄なく使う。お父さんやお母さんが心掛けていることで、お兄さん達も同じようにしてるの。命を貰うんだから無駄に残したらいけないと教えてもらった。ゲリュオンが受け取った内臓をすり潰して、お団子にし始めた。シェリアが手伝う。こういうのは人間の手が便利だね。
「おい、フェリクス。湯を沸かしてくれ」
ゲリュオンが呼ぶと、お兄さんが喉を鳴らして近づく。鍋にいっぱい入った水にフェリクスお兄さんが火を噴いたら、ぶわっと湯気が出た。すごい、早いね。褒めると嬉しそうなお兄さんが、隅っこで拗ねるボリスのところに行って首を咥えて連れてきた。
『お前も手伝え』
フェリクスお兄さんを見て、それから僕を見て涙を溜める。どうしたんだろう? 首を傾げた僕を真似するみたいに、ボリスが首を傾けた。ぽろっと涙が落ちる。ずずっと鼻を啜ったボリスは、瞬きしてから肉に手を伸ばした。無言でお肉を小さく切っていく。鋭い爪が動くたびに肉がばらばらになった。
鍋に入れたお肉と内臓のお団子が煮えてきたところで、ゲリュオンは茶色い塊を入れた。何だろう、いい匂いがする。薬草だけじゃないね。
「今の何?」
「ああ、香草玉というスープの材料だよ」
セティが同じものを手に乗せてくれた。興味を持ったシェリアも覗く。くんくんと匂いを確かめたら、スープと同じ匂いだった。材料は肉の使わなかった部分や野菜の硬いところを砕いて香草と混ぜる。それを乾かして持っていけば、野営でご飯を食べる時に美味しいスープが飲めるの。シェリアといつまでも弄っていたら、二つに割れちゃった。ごめんなさい。
ぐぁああああ! 地面を尻尾で叩いて怒るボリスへ、お父さんががつんと一撃。尻尾で叩く。僕にはドラゴンの言葉が分からないけど、唸りながら説教されていた。ボリスはちらちらと僕を見て、セティを睨む。そのたびにお父さんとお母さんに叱られる繰り返し。
「イシスはモテるな」
騒ぎの大きさに起きたゲリュオンが欠伸をして、そんなことを言う。僕がモテる? 何を持つの? キョトンとして尋ねたら、大笑いされた。何か違う意味があるのかも。ボリスは可哀想になるくらい叱られて、尻尾も顔もしょんぼりした。
『イシスにも話しておくか』
「いや、オレが注意しておく」
お父さんとセティの間で何かが決まって、お父さんは僕の頭を短い前足で撫でてくれた。よくわからないけど嬉しいから笑う。
『おいで、イシス。もう大丈夫だから』
危ないと思ってないよ。ただびっくりしたの。駆け寄ってお母さんの足元で、動物の皮を剥ぐお手伝いをした。僕はドラゴンの爪や牙がないけど、代わりに手が使える。兎の耳を掴んだ僕の前で、お母さんが器用に皮を開いた。あまり血が出ないのは、皮と肉の間を上手に切ってるからだって。
捕まえた動物は無駄なく使う。お父さんやお母さんが心掛けていることで、お兄さん達も同じようにしてるの。命を貰うんだから無駄に残したらいけないと教えてもらった。ゲリュオンが受け取った内臓をすり潰して、お団子にし始めた。シェリアが手伝う。こういうのは人間の手が便利だね。
「おい、フェリクス。湯を沸かしてくれ」
ゲリュオンが呼ぶと、お兄さんが喉を鳴らして近づく。鍋にいっぱい入った水にフェリクスお兄さんが火を噴いたら、ぶわっと湯気が出た。すごい、早いね。褒めると嬉しそうなお兄さんが、隅っこで拗ねるボリスのところに行って首を咥えて連れてきた。
『お前も手伝え』
フェリクスお兄さんを見て、それから僕を見て涙を溜める。どうしたんだろう? 首を傾げた僕を真似するみたいに、ボリスが首を傾けた。ぽろっと涙が落ちる。ずずっと鼻を啜ったボリスは、瞬きしてから肉に手を伸ばした。無言でお肉を小さく切っていく。鋭い爪が動くたびに肉がばらばらになった。
鍋に入れたお肉と内臓のお団子が煮えてきたところで、ゲリュオンは茶色い塊を入れた。何だろう、いい匂いがする。薬草だけじゃないね。
「今の何?」
「ああ、香草玉というスープの材料だよ」
セティが同じものを手に乗せてくれた。興味を持ったシェリアも覗く。くんくんと匂いを確かめたら、スープと同じ匂いだった。材料は肉の使わなかった部分や野菜の硬いところを砕いて香草と混ぜる。それを乾かして持っていけば、野営でご飯を食べる時に美味しいスープが飲めるの。シェリアといつまでも弄っていたら、二つに割れちゃった。ごめんなさい。
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