176 / 321
175.胸に穴が開く感じ
しおりを挟む
ボリスと2回目のお風呂に入って出たら、すごく疲れちゃった。眠くなった僕を抱っこして移動するセティが、ぽんぽんと背中を叩く。それ、眠くなっちゃう。
フェリクスお兄さんとボリスが丸くなったところへ、僕はそっと降ろされた。別に冷たくないんだけど、びくっと揺れる。目をぱっちり開けてセティを見つめると、驚いた顔で見つめ返された。
「僕、もう要らない?」
「大切だぞ。要らなくない」
きっぱり言い切ってくれたので、安心してほわりと笑う。なんだ、突然手を離すからびっくりしちゃった。お兄さんの尻尾のところに座ったセティが、ゆっくり説明してくれる。
「今日は一緒に寝てろ。ちゃんとテントにいるから、寂しくなったらくればいい。ボリスとの約束だろ?」
「……うん」
ボリスと一緒に寝るって約束したけど、エルランドお兄さんのところで一緒に寝なかった。だからボリスが約束! って騒ぐのもわかるけど。
もうセティ以外と寝る約束はしない。ずずっと鼻を啜った僕を撫でて、同じ洞窟にいるんだからと言われた。そうだけど、隣じゃないしくっついてない。困った顔をするセティに、我慢して頷く。大丈夫、僕はちゃんとできるよ。大人になるんだもん。
大人にならないとセティに食べてもらえないから、ちゃんと立派な大人になる。セティが「急がなくていいよ」と僕の髪を撫でた。お父さん達と一緒にいる時、セティも僕も元の色になってる。黒髪と紫の目。どっちもお揃いで、すごく嬉しい。
人間が住んでる街は見たことないものあるし、お風呂やベッドも立派だけど、僕は洞窟の方がよかった。安心できるし、セティをじろじろ見る人もいないから。
ぐぁっ! ボリスが鳴くので、僕は弟の鱗を撫でてあげた。前より硬くなってきてる。お父さん達みたいに大きくて強いドラゴンになれるといいね。くっついた僕の上に、セティが上着を脱いで掛けてくれた。毛布もあるけど、こっちはセティの匂いがする。顔にすっぽり被って、セティの匂いを吸い込んだ。
安心したら眠くなってきちゃった。一度いなくなった眠気が戻ってきて、僕の瞼をくっつける。上着なくて寒くないといいけど……ぼんやりと考えながら、僕はお兄さんとボリスに包まれて眠った。
夜中にふと目が覚めて、寒くないのに変な感じがした。何かがぽっかりと穴が開いた感じ。胸の辺りを押さえて起き上がると、お兄さんが僕を下ろしてくれた。優しい目が頷くので、僕も頷いて走り出す。
ボリス、ごめんね。やっぱりセティと一緒がいい。テントの入り口から入って、中で横になるセティのところまで這っていく。待ってたみたいに毛布の端を持ち上げたセティに抱きついて、僕は目を閉じた。やっぱりセティが足りなかった。胸に穴が開くの、もう嫌だな。この気持ちに名前があるなら、後で教えてもらおう。
フェリクスお兄さんとボリスが丸くなったところへ、僕はそっと降ろされた。別に冷たくないんだけど、びくっと揺れる。目をぱっちり開けてセティを見つめると、驚いた顔で見つめ返された。
「僕、もう要らない?」
「大切だぞ。要らなくない」
きっぱり言い切ってくれたので、安心してほわりと笑う。なんだ、突然手を離すからびっくりしちゃった。お兄さんの尻尾のところに座ったセティが、ゆっくり説明してくれる。
「今日は一緒に寝てろ。ちゃんとテントにいるから、寂しくなったらくればいい。ボリスとの約束だろ?」
「……うん」
ボリスと一緒に寝るって約束したけど、エルランドお兄さんのところで一緒に寝なかった。だからボリスが約束! って騒ぐのもわかるけど。
もうセティ以外と寝る約束はしない。ずずっと鼻を啜った僕を撫でて、同じ洞窟にいるんだからと言われた。そうだけど、隣じゃないしくっついてない。困った顔をするセティに、我慢して頷く。大丈夫、僕はちゃんとできるよ。大人になるんだもん。
大人にならないとセティに食べてもらえないから、ちゃんと立派な大人になる。セティが「急がなくていいよ」と僕の髪を撫でた。お父さん達と一緒にいる時、セティも僕も元の色になってる。黒髪と紫の目。どっちもお揃いで、すごく嬉しい。
人間が住んでる街は見たことないものあるし、お風呂やベッドも立派だけど、僕は洞窟の方がよかった。安心できるし、セティをじろじろ見る人もいないから。
ぐぁっ! ボリスが鳴くので、僕は弟の鱗を撫でてあげた。前より硬くなってきてる。お父さん達みたいに大きくて強いドラゴンになれるといいね。くっついた僕の上に、セティが上着を脱いで掛けてくれた。毛布もあるけど、こっちはセティの匂いがする。顔にすっぽり被って、セティの匂いを吸い込んだ。
安心したら眠くなってきちゃった。一度いなくなった眠気が戻ってきて、僕の瞼をくっつける。上着なくて寒くないといいけど……ぼんやりと考えながら、僕はお兄さんとボリスに包まれて眠った。
夜中にふと目が覚めて、寒くないのに変な感じがした。何かがぽっかりと穴が開いた感じ。胸の辺りを押さえて起き上がると、お兄さんが僕を下ろしてくれた。優しい目が頷くので、僕も頷いて走り出す。
ボリス、ごめんね。やっぱりセティと一緒がいい。テントの入り口から入って、中で横になるセティのところまで這っていく。待ってたみたいに毛布の端を持ち上げたセティに抱きついて、僕は目を閉じた。やっぱりセティが足りなかった。胸に穴が開くの、もう嫌だな。この気持ちに名前があるなら、後で教えてもらおう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,150
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる