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173.いつか家族に(SIDEゲリュオン)
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*****SIDE ゲリュオン
拾ってしまった少女は家族も残っていないらしい。仕方なく連れ歩いているが、やたらと俺に懐く。傷のある顔や大柄な体格を怖がられる経験が多かったので、意外に思って抱き上げたのがいけなかった。イシスに敵対心を抱き、俺にやたらとキスを強請る。
いずれ同族が住む地域に置いて来ようと思ったのに、すっかり情が移ってしまった。可愛いと思うのだが、この年齢に手を出すのは犯罪だろう。どう見てもただの子供だ。ユニコーンとペガサスの間に生まれた子は珍しいが、それ以上にこの状況が理解できなかった。
俺は子供に優しいタイプじゃないぞ。拾った以上、自立できるまで連れ歩くことは義務だろう。テントの中に入って人目がなくなると、キスを求めてしがみ付く。拒むと泣くため、仕方なく頬には許した。声もなくほとほとと涙を流して泣く姿は、幼く見えるだけに哀れだ。
親族が見つかったとしても、この子はどちらからも受け入れられない可能性があった。ペガサスは同族に甘いが、混じっている場合は分からない。ユニコーンは排他的で、絶対に受け入れない。俺が育てるしかないか。
白っぽい髪と青い瞳の少女は、俺と密着していると機嫌がいい。テントの中で擦り寄る温もりにも、いい加減慣れてしまった。髪は馬の鬣と一緒でさらりと手触りがよく、青い目を細めて甘える姿は愛らしい。馬だと思えば、このまま育てて飼うか。
そう考えた時期もあった。
数日で意識は覆る。この子は雌で、自分は人型を取れるので俺と同族だと思い込んでいた。番になろうと強請る少女は可愛いが、性的な対象としては幼過ぎる。説明しても理解せず首を傾げるシェリアに根負けする形で、将来の約束を取り付けられた。
――大きくなっても好きなら、嫁に来てもいい。
うっかりしたと思うが泣きながら縋られると弱い。そもそも外見がごついせいで、女神達には評判が悪かった。破壊神で評判が悪いタイフォンと似たり寄ったりだが、あいつは自分で遠ざけた。俺の場合は遠巻きにされる。意味が全く違った。
呆れるほど仲のいいタイフォンとイシスだが、最近はシェリアのおかげで嫉妬するらしい。自慢してくるタイフォンの態度が腹立たしく、つい「俺もシェリアを嫁にする気だ」と余計な張り合いをした。おかげでテントも個別にされ、さらにシェリアは機嫌よく膝に跨る。
「女の子がそんな座り方するな」
「やだ」
首を横に振るシェリアは、今日も胡坐をかいた俺の膝に乗って背中に腕と足を絡める。ぺたんこの胸を押し付けて正面から抱き合う形だった。足を開いてスカートが捲れても、隠そうとしない辺りはイシスといい勝負だ。どっちも羞恥心が薄い。呆れながらもスカートの裾を引っ張った。
「この旅が終わったら、お前の家族を探しに行くか」
イシスとボリスを息子達に紹介する竜帝に付き合っているが、その後の予定はない。イシスは可愛いが、懐かれるとタイフォンの殺気が刺さるからな。多少距離を置いて付き合う方が無難だろう。まだ消滅させられる気はない。うっかり「大好き」と言われて抱き着かれたら、想像だけでぞっとした。
ぶるりと身を震わせた俺の膝に乗ったシェリアは瞬きし、不思議そうに呟く。
「家族、ゲリュオンがいればいい」
嘘偽りのない真っすぐな眼差しに、俺は不思議と心地よさを感じる。ああ、この青い目に捕まったか。逃げる気になれない自分を笑いながら、少女と一緒に横になった。明日も明後日も、このまま一緒にいたら……いつか家族になれるかも知れないな。
拾ってしまった少女は家族も残っていないらしい。仕方なく連れ歩いているが、やたらと俺に懐く。傷のある顔や大柄な体格を怖がられる経験が多かったので、意外に思って抱き上げたのがいけなかった。イシスに敵対心を抱き、俺にやたらとキスを強請る。
いずれ同族が住む地域に置いて来ようと思ったのに、すっかり情が移ってしまった。可愛いと思うのだが、この年齢に手を出すのは犯罪だろう。どう見てもただの子供だ。ユニコーンとペガサスの間に生まれた子は珍しいが、それ以上にこの状況が理解できなかった。
俺は子供に優しいタイプじゃないぞ。拾った以上、自立できるまで連れ歩くことは義務だろう。テントの中に入って人目がなくなると、キスを求めてしがみ付く。拒むと泣くため、仕方なく頬には許した。声もなくほとほとと涙を流して泣く姿は、幼く見えるだけに哀れだ。
親族が見つかったとしても、この子はどちらからも受け入れられない可能性があった。ペガサスは同族に甘いが、混じっている場合は分からない。ユニコーンは排他的で、絶対に受け入れない。俺が育てるしかないか。
白っぽい髪と青い瞳の少女は、俺と密着していると機嫌がいい。テントの中で擦り寄る温もりにも、いい加減慣れてしまった。髪は馬の鬣と一緒でさらりと手触りがよく、青い目を細めて甘える姿は愛らしい。馬だと思えば、このまま育てて飼うか。
そう考えた時期もあった。
数日で意識は覆る。この子は雌で、自分は人型を取れるので俺と同族だと思い込んでいた。番になろうと強請る少女は可愛いが、性的な対象としては幼過ぎる。説明しても理解せず首を傾げるシェリアに根負けする形で、将来の約束を取り付けられた。
――大きくなっても好きなら、嫁に来てもいい。
うっかりしたと思うが泣きながら縋られると弱い。そもそも外見がごついせいで、女神達には評判が悪かった。破壊神で評判が悪いタイフォンと似たり寄ったりだが、あいつは自分で遠ざけた。俺の場合は遠巻きにされる。意味が全く違った。
呆れるほど仲のいいタイフォンとイシスだが、最近はシェリアのおかげで嫉妬するらしい。自慢してくるタイフォンの態度が腹立たしく、つい「俺もシェリアを嫁にする気だ」と余計な張り合いをした。おかげでテントも個別にされ、さらにシェリアは機嫌よく膝に跨る。
「女の子がそんな座り方するな」
「やだ」
首を横に振るシェリアは、今日も胡坐をかいた俺の膝に乗って背中に腕と足を絡める。ぺたんこの胸を押し付けて正面から抱き合う形だった。足を開いてスカートが捲れても、隠そうとしない辺りはイシスといい勝負だ。どっちも羞恥心が薄い。呆れながらもスカートの裾を引っ張った。
「この旅が終わったら、お前の家族を探しに行くか」
イシスとボリスを息子達に紹介する竜帝に付き合っているが、その後の予定はない。イシスは可愛いが、懐かれるとタイフォンの殺気が刺さるからな。多少距離を置いて付き合う方が無難だろう。まだ消滅させられる気はない。うっかり「大好き」と言われて抱き着かれたら、想像だけでぞっとした。
ぶるりと身を震わせた俺の膝に乗ったシェリアは瞬きし、不思議そうに呟く。
「家族、ゲリュオンがいればいい」
嘘偽りのない真っすぐな眼差しに、俺は不思議と心地よさを感じる。ああ、この青い目に捕まったか。逃げる気になれない自分を笑いながら、少女と一緒に横になった。明日も明後日も、このまま一緒にいたら……いつか家族になれるかも知れないな。
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