171 / 321
170.神様のお嫁さんは抱っこ
しおりを挟む
朝、少し早く起きた。テントから顔を出すと、最初にお母さんが気づいて頭を上げる。すぐにお父さんも僕を見てぱちりと瞬きした。後ろのテントの中では、まだセティが寝てるから静かに這い出る。足音をさせないで、ゆっくり歩いてテントを離れた。
まずはお母さんに挨拶して、お父さんにも抱き着く。声を出すと響くからね。静かに挨拶していると、ぐるるると喉を鳴らすボリスが起きてきた。口を手で押さえて「静かにね」とお願いしてから挨拶をする。家族だからベロンと舐められてもいいんだよ。お父さんが僕を咥えて、鱗の上に乗せてくれた。
少し離れたところで抱き合って寝ているお兄さん達の方を見て、僕は小声でお父さんに尋ねる。
「お兄さん達に、昨日のこと謝りたいんだけど」
『悪いことをしてないなら、謝る必要はないんだよ』
お兄さんの声が近くで聞こえる。びっくりして、きょろきょろした。お兄さんは起きてるけど、まだ離れた場所にいる。じっと僕を見ながら、また話しかけてきた。
『風の向きを調整してるから、イシス以外に聞こえないよ』
「すごい!」
大きな声になりそうで、口を押えて答える。お兄さんの尻尾が持ち上がって、左右に小さく振った。これがお返事? 僕も手を振った。僕とお兄さんのやり取りを見ていたボリスが真似をして、大きく尻尾を振る。面白い。
「満足したか? イシス」
呼びかけに振り返ると、セティがテントの外にいた。僕が出て行ったの、バレちゃった。お父さんの鱗を滑り降りて、セティの方へ走った。もう音を立ててもいいね。勢いよく飛びついた僕を受け止めたセティが、抱き上げてくれる。
「僕、もう子どもじゃないんだよ?」
だから抱っこは終わり。そう言うとセティが唇を変な形に歪めて、僕を強く抱き締めた。少し低い声で「お嫁さんは抱っこされるもんだ」って言うの。そうなの? お兄さんはお嫁さんを抱っこしてないけど、ドラゴンだから違うのかな。お父さんもお母さんを抱っこしてない。
「神族とドラゴンは違うぞ」
そっか。神様だから抱っこなんだね。納得した僕の足元で、ガイアがボソッと呟く。
「僕はそんな話知らないけどね」
ガイアも神様なのに変なの。トムがセティの足をよじ登ろうとして、膝の辺りで動けなくなった。ずりずりと落ちていくけど、ガイアが受け止めてくれるみたい。後ろで立ち上がってそわそわしてる。
「朝早ぇな、おい」
のそのそと熊みたいなゲリュオンが起きてきて、目を擦るシェリアを抱っこしていた。ゲリュオンも神様だから、シェリアはお嫁さんになるんだ! 目を見開いた僕の様子にゲリュオンは首をかしげ、シェリアはゲリュオンの首にぎゅっと抱き着いた。
僕、取ったりしないよ?
まずはお母さんに挨拶して、お父さんにも抱き着く。声を出すと響くからね。静かに挨拶していると、ぐるるると喉を鳴らすボリスが起きてきた。口を手で押さえて「静かにね」とお願いしてから挨拶をする。家族だからベロンと舐められてもいいんだよ。お父さんが僕を咥えて、鱗の上に乗せてくれた。
少し離れたところで抱き合って寝ているお兄さん達の方を見て、僕は小声でお父さんに尋ねる。
「お兄さん達に、昨日のこと謝りたいんだけど」
『悪いことをしてないなら、謝る必要はないんだよ』
お兄さんの声が近くで聞こえる。びっくりして、きょろきょろした。お兄さんは起きてるけど、まだ離れた場所にいる。じっと僕を見ながら、また話しかけてきた。
『風の向きを調整してるから、イシス以外に聞こえないよ』
「すごい!」
大きな声になりそうで、口を押えて答える。お兄さんの尻尾が持ち上がって、左右に小さく振った。これがお返事? 僕も手を振った。僕とお兄さんのやり取りを見ていたボリスが真似をして、大きく尻尾を振る。面白い。
「満足したか? イシス」
呼びかけに振り返ると、セティがテントの外にいた。僕が出て行ったの、バレちゃった。お父さんの鱗を滑り降りて、セティの方へ走った。もう音を立ててもいいね。勢いよく飛びついた僕を受け止めたセティが、抱き上げてくれる。
「僕、もう子どもじゃないんだよ?」
だから抱っこは終わり。そう言うとセティが唇を変な形に歪めて、僕を強く抱き締めた。少し低い声で「お嫁さんは抱っこされるもんだ」って言うの。そうなの? お兄さんはお嫁さんを抱っこしてないけど、ドラゴンだから違うのかな。お父さんもお母さんを抱っこしてない。
「神族とドラゴンは違うぞ」
そっか。神様だから抱っこなんだね。納得した僕の足元で、ガイアがボソッと呟く。
「僕はそんな話知らないけどね」
ガイアも神様なのに変なの。トムがセティの足をよじ登ろうとして、膝の辺りで動けなくなった。ずりずりと落ちていくけど、ガイアが受け止めてくれるみたい。後ろで立ち上がってそわそわしてる。
「朝早ぇな、おい」
のそのそと熊みたいなゲリュオンが起きてきて、目を擦るシェリアを抱っこしていた。ゲリュオンも神様だから、シェリアはお嫁さんになるんだ! 目を見開いた僕の様子にゲリュオンは首をかしげ、シェリアはゲリュオンの首にぎゅっと抱き着いた。
僕、取ったりしないよ?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,150
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる