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153.食べる側と食べられる側
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掴んでいる大きな鳥は、僕と魚をどこかへ運んでる。少しすると鳥の数が増えて、お家に帰るんだと分かった。僕が抱っこしたお魚を食べたいのかな。でもこれはお母さんに預かった魚だから、お母さんがいいよと言ったらあげる。
お母さん、追いかけてきてるといいけど。首を伸ばしてきょろきょろ見回したら、お父さんがいた。銀色の鱗がきらきらして、凄く綺麗。それに強いから、大きい鳥が避けてる。カッコいい。見惚れていると、足元で呼ばれた気がした。
下を見たら、フェルが走ってる。背中にセティも乗っていた。僕のお迎えに来てくれたんだ! お父さんに聞いたら、お母さんが獲ったお魚あげても平気かも知れないね。きっとお家には子どもの鳥が待ってるんだよ。絵本だとお母さん鳥が子どもの鳥に餌を運んでたから。
子どもの鳥も大人の大きい鳥と同じような姿なのかな。わくわくしていると、ふわりと変な感じがして僕は柔らかい場所に落ちていた。丸くって両手を広げても届かないくらい。真ん中に卵が割れた殻があった。でも中に小さい鳥さんはいないみたい。
覗き込んだ僕の後ろから、くぅ、と鳴き声がした。振り返って、僕ぐらいある子どもの鳥に気づく。見回したらお母さん鳥はいなかった。また新しい餌を獲りに行ったんだと思う。僕の抱えた魚をじっと見て嘴を伸ばすから、僕は後ろに隠した。
「お父さんに聞くから待って」
ボリスと一緒で言葉が通じると思ってた。でも鳥は言うこと聞かなくて、僕の声に首を傾げた後で突いた。腕のところがじわじわ痛くて、涙が滲んでくる。痛い……酷い、何でこんなことするの?
「やだ、痛いもん。もう嫌い、あっちいって」
叫んだ僕の声に羽をばたつかせて、子どもがまた突こうとした。魚をお腹の下に入れて、僕は蹲る。今度は背中をケガしちゃうのかも。血が滲んだ腕をぎゅっと手で掴んで、僕は動かなかった。こんな意地悪な鳥に、お母さんの魚を分けてあげない。
「おっと、焼き鳥にするぞ」
セティの声に顔を上げた。フェルはいなくて、セティだけが巣の中にいた。セティと僕とグリフォンが一緒だと狭いね。
「ケガをしたのか。降りたら痛いのを治してやるな」
ちゅっと黒髪にキスをしてもらって、僕は頷いた。
「まだ我慢できる」
「偉いぞ」
褒めるセティの後ろから襲おうとした鳥に、お父さんが飛びかかった。大人のグリフォンと違って、子どもの鳥はまだ羽が小さい。だからお父さんが掴んで連れて行ったみたい。
「あの子どもどうするの?」
「ファフニールの夕食に……なると思う」
ファフニールはお父さんの名前。夕食は夜に食べるご飯だから、あの子食べられちゃうの? びっくりして目を見開くと、セティが僕を抱き上げて飛び降りた。お父さんの背中みたいにびゅんと落ちるんじゃなくて、ふわっと降りて行く。
ぎゅっと瞑った目を開いたら、見たことがない風景があった。縦に真っすぐな山の岩に、たくさんの巣があった。大人のグリフォンがいる巣もあるし、子どもしかいない巣もある。遠くの方で、お父さんが大きなグリフォンを両足に掴んで、さらに子どもの鳥を咥えて運んで行った。
「あんなに食べるの?」
「ボリスは成長期だからな」
ボリスも僕もセティも、みんな何かを食べてる。だから悪いことじゃないけど……でも変な感じがした。
お母さん、追いかけてきてるといいけど。首を伸ばしてきょろきょろ見回したら、お父さんがいた。銀色の鱗がきらきらして、凄く綺麗。それに強いから、大きい鳥が避けてる。カッコいい。見惚れていると、足元で呼ばれた気がした。
下を見たら、フェルが走ってる。背中にセティも乗っていた。僕のお迎えに来てくれたんだ! お父さんに聞いたら、お母さんが獲ったお魚あげても平気かも知れないね。きっとお家には子どもの鳥が待ってるんだよ。絵本だとお母さん鳥が子どもの鳥に餌を運んでたから。
子どもの鳥も大人の大きい鳥と同じような姿なのかな。わくわくしていると、ふわりと変な感じがして僕は柔らかい場所に落ちていた。丸くって両手を広げても届かないくらい。真ん中に卵が割れた殻があった。でも中に小さい鳥さんはいないみたい。
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「お父さんに聞くから待って」
ボリスと一緒で言葉が通じると思ってた。でも鳥は言うこと聞かなくて、僕の声に首を傾げた後で突いた。腕のところがじわじわ痛くて、涙が滲んでくる。痛い……酷い、何でこんなことするの?
「やだ、痛いもん。もう嫌い、あっちいって」
叫んだ僕の声に羽をばたつかせて、子どもがまた突こうとした。魚をお腹の下に入れて、僕は蹲る。今度は背中をケガしちゃうのかも。血が滲んだ腕をぎゅっと手で掴んで、僕は動かなかった。こんな意地悪な鳥に、お母さんの魚を分けてあげない。
「おっと、焼き鳥にするぞ」
セティの声に顔を上げた。フェルはいなくて、セティだけが巣の中にいた。セティと僕とグリフォンが一緒だと狭いね。
「ケガをしたのか。降りたら痛いのを治してやるな」
ちゅっと黒髪にキスをしてもらって、僕は頷いた。
「まだ我慢できる」
「偉いぞ」
褒めるセティの後ろから襲おうとした鳥に、お父さんが飛びかかった。大人のグリフォンと違って、子どもの鳥はまだ羽が小さい。だからお父さんが掴んで連れて行ったみたい。
「あの子どもどうするの?」
「ファフニールの夕食に……なると思う」
ファフニールはお父さんの名前。夕食は夜に食べるご飯だから、あの子食べられちゃうの? びっくりして目を見開くと、セティが僕を抱き上げて飛び降りた。お父さんの背中みたいにびゅんと落ちるんじゃなくて、ふわっと降りて行く。
ぎゅっと瞑った目を開いたら、見たことがない風景があった。縦に真っすぐな山の岩に、たくさんの巣があった。大人のグリフォンがいる巣もあるし、子どもしかいない巣もある。遠くの方で、お父さんが大きなグリフォンを両足に掴んで、さらに子どもの鳥を咥えて運んで行った。
「あんなに食べるの?」
「ボリスは成長期だからな」
ボリスも僕もセティも、みんな何かを食べてる。だから悪いことじゃないけど……でも変な感じがした。
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