139 / 321
138.お父さんが来た!
しおりを挟む
ゲリュオンはトムを見つけてくれたかな。もし1人なら、トムは赤ちゃんだから泣いてるかも。膝を抱えて、狭い部屋の隅に座る。隣でガイアが僕の頭を抱き寄せた。素直に転がると、ガイアのお腹に抱き着く。
「セティはもう近くにいるけど……ほかに何か飛んできてるんだよね」
首を傾げるガイア。僕は自分を抱き締めかけて、触れた手首の違和感に気づく。撫でて形を確かめて、見えない透明の輪があることを思い出した。
「ガイア、これ見える?」
「え? ああ、言われてみたら……随分と丁寧に隠蔽されてるね」
隠蔽は隠すことだと説明してもらった。お父さんが隠してくれたんだけど、と説明する。いざとなったら僕の居場所が分かるよ。そう付け加えたら、目を見開いた後で笑い出した。
「ふふっ、だからか。大きな強い者が近づいてるなと思ったら……もしかしてセティより早く着くかもよ」
ティフォンって呼ぶのをやめたんだね。ガイアはセティより早くドラゴンが来たら面白いと言う。よくわからないけど、空を飛べるからお父さんが早いかも知れないよ。セティは隣の大陸まで飛べない事情があるんだもん。仕方ないよね。
どんっ!!
激しい音がして、天井が少し壊れた。落ちてくる破片は真ん中が多いから、僕はガイアの手を引いて壁の近くに逃げる。上を見上げるガイアが「来た」と呟いた。それから結界を張るからケガしないと教えてもらう。透明で強い膜みたいなのを作れる、ガイアはやっぱり神様だった。
僕は何もできないけど、いいのかな。そんな僕の声に、ガイアが首を横に振った。
「少なくとも上にいるドラゴンを呼んだのは、イシスだよね」
「ドラゴン……お父さん?!」
お父さんが来てくれたの? さっき僕が呼んだから、セティの名前と一緒にお父さんも呼んだからなの? 忙しいのに、ボリスやお母さんもいるのに……。
「お父さん、ケガしてない?」
どどんっ! 再び激しい振動と音に、思わず頭を抱えて丸くなった。怖い、お父さんが来てくれたのに、足が動かない。
「大丈夫、落ちてきても平気だから行こう」
ガイアが手を引いてくれる。優しく僕に声を掛けて、前だけ見て走ればいいって言う。頷いてガイアを信じた。だってセティの兄弟だもん。ガイアに連れられて、壊れた部屋の隙間から外へ出た。見たことがない風景が広がっている。
赤い葉っぱがついた木や黄色い葉っぱの木がいっぱい。緑は少なくて、でも地面は黒っぽい土だった。セティと旅した道は、薄い茶色だったのに。埃は少ないけど、べたべたする。見上げた先に、大きな銀のドラゴンがいた。
「お父さん!!」
手を振ると、ぐるると喉を鳴らしたお父さんがひらりと舞い降りた。騒いでる人たちが攻撃してるけど、お父さん痛くないのかな。
ゆったり降りたお父さんが差し出した手に登り、後ろからガイアに押してもらった。だからお礼に今度は僕がガイアを引っ張る。手の上に乗った僕達を背中に移動させて、お父さんは空にふわりと浮いた。広い広い景色の向こうで、燃える鳥さんが火を噴いてる。
……あれ? 鳥さんの背中に乗ってるの、セティかも。
「セティはもう近くにいるけど……ほかに何か飛んできてるんだよね」
首を傾げるガイア。僕は自分を抱き締めかけて、触れた手首の違和感に気づく。撫でて形を確かめて、見えない透明の輪があることを思い出した。
「ガイア、これ見える?」
「え? ああ、言われてみたら……随分と丁寧に隠蔽されてるね」
隠蔽は隠すことだと説明してもらった。お父さんが隠してくれたんだけど、と説明する。いざとなったら僕の居場所が分かるよ。そう付け加えたら、目を見開いた後で笑い出した。
「ふふっ、だからか。大きな強い者が近づいてるなと思ったら……もしかしてセティより早く着くかもよ」
ティフォンって呼ぶのをやめたんだね。ガイアはセティより早くドラゴンが来たら面白いと言う。よくわからないけど、空を飛べるからお父さんが早いかも知れないよ。セティは隣の大陸まで飛べない事情があるんだもん。仕方ないよね。
どんっ!!
激しい音がして、天井が少し壊れた。落ちてくる破片は真ん中が多いから、僕はガイアの手を引いて壁の近くに逃げる。上を見上げるガイアが「来た」と呟いた。それから結界を張るからケガしないと教えてもらう。透明で強い膜みたいなのを作れる、ガイアはやっぱり神様だった。
僕は何もできないけど、いいのかな。そんな僕の声に、ガイアが首を横に振った。
「少なくとも上にいるドラゴンを呼んだのは、イシスだよね」
「ドラゴン……お父さん?!」
お父さんが来てくれたの? さっき僕が呼んだから、セティの名前と一緒にお父さんも呼んだからなの? 忙しいのに、ボリスやお母さんもいるのに……。
「お父さん、ケガしてない?」
どどんっ! 再び激しい振動と音に、思わず頭を抱えて丸くなった。怖い、お父さんが来てくれたのに、足が動かない。
「大丈夫、落ちてきても平気だから行こう」
ガイアが手を引いてくれる。優しく僕に声を掛けて、前だけ見て走ればいいって言う。頷いてガイアを信じた。だってセティの兄弟だもん。ガイアに連れられて、壊れた部屋の隙間から外へ出た。見たことがない風景が広がっている。
赤い葉っぱがついた木や黄色い葉っぱの木がいっぱい。緑は少なくて、でも地面は黒っぽい土だった。セティと旅した道は、薄い茶色だったのに。埃は少ないけど、べたべたする。見上げた先に、大きな銀のドラゴンがいた。
「お父さん!!」
手を振ると、ぐるると喉を鳴らしたお父さんがひらりと舞い降りた。騒いでる人たちが攻撃してるけど、お父さん痛くないのかな。
ゆったり降りたお父さんが差し出した手に登り、後ろからガイアに押してもらった。だからお礼に今度は僕がガイアを引っ張る。手の上に乗った僕達を背中に移動させて、お父さんは空にふわりと浮いた。広い広い景色の向こうで、燃える鳥さんが火を噴いてる。
……あれ? 鳥さんの背中に乗ってるの、セティかも。
41
お気に入りに追加
1,225
あなたにおすすめの小説
【完結】帝王様は、表でも裏でも有名な飼い猫を溺愛する
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
離地暦201年――人類は地球を離れ、宇宙で新たな生活を始め200年近くが経過した。貧困の差が広がる地球を捨て、裕福な人々は宇宙へ進出していく。
狙撃手として裏で名を馳せたルーイは、地球での狙撃の帰りに公安に拘束された。逃走経路を疎かにした結果だ。表では一流モデルとして有名な青年が裏路地で保護される、滅多にない事態に公安は彼を疑うが……。
表も裏もひっくるめてルーイの『飼い主』である権力者リューアは公安からの問い合わせに対し、彼の保護と称した強制連行を指示する。
権力者一族の争いに巻き込まれるルーイと、ひたすらに彼に甘いリューアの愛の行方は?
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう
【注意】※印は性的表現有ります
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】
紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※番外編を公開しました(10/21)
生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
※4月18日、完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる