136 / 321
135.あーんも半分こもセティだけ?
しおりを挟む
ゲリュオンに抱っこされたガイアと、セティにしがみついた僕。目を引くみたいで、あちこちのお店の人から声を掛けられた。そのたびに覗き込んで買ったら、すごい大量になっていた。でもゲリュオンがたくさん食べられるから平気みたい。
「ほら、紫のジュースだ」
僕とセティの瞳の色だから、紫が一番好き。黒いジュースはないからね。紫のジュースに口を付けて、半分くらい飲んだ。
「それ、美味しいの?」
「うん!」
尋ねたガイアにコップを渡そうとしたら、セティが止めた。首を傾げた僕の前に別のコップを置いて差し出す。ちゃんと紫のジュースが入ってた。そっか、僕が飲んだ残りをあげるのはよくないね。頷いて自分のコップを引き戻した。でも残ってたジュースをセティが飲んじゃった。
「どうして」
「うん?」
「僕の残り、誰かにあげちゃダメなのに……どうしてセティが飲むの?」
不思議に思った僕に、ゲリュオンの大爆笑が聞こえた。びっくりして振り返ると、噎せたガイアの背を叩きながらまだ笑ってる。何か楽しいことがあったのかな。セティは「うーん」と唸った後で、膝の上の僕をぎゅっと抱きしめた。
「同じコップで飲むのは、特別な証拠だ。オレの特別はイシスだけだから、イシスもそうして欲しい。誰かにキスさせたり、食べ物を半分こは禁止だ」
禁止はしちゃいけないこと。これはセティと僕の約束なのかな。ちゃんと守れるよ。頷いた僕をセティが笑顔で撫でてくれた。頬ずりして、額と頬にキスをもらう。お外でゲリュオンも他の人もいるから、唇は、夜の仲良しのお呪いまで我慢だね。
げほっ……また咳き込んだガイアがセティを睨む。でもセティは目を逸らしちゃった。袋から顔を覗かせたトムが、ふんふんと鼻を動かす。匂いがするよね、赤ちゃん猫だからお腹空いたかな。焼いたお魚の端を掴んで千切った。トムの前に置くと、首を傾げてみている。
初めて見る食べ物は怖いのかな。僕が同じ魚を食べて見せれば、安全だってわかる? 魚の尻尾の近くをまた指で千切って、僕はトムの前でぱくりと食べた。油で汚れた指先を舐めた僕をじっと見つめたトムが、温かいお魚の身を齧った。目の前に置いた分をぺろりと食べてしまう。
「いい子だね、トム」
ハンカチを出して手を拭いた僕が褒めて顔を上げると、なぜかゲリュオンがそっぽを向いていた。ガイアは真っ赤だし、セティも赤い。唇を舐めると魚の味がした。焼いたお魚は油つけなくても、中から油が出て来るんだよ。その油が甘いの。外にお塩が振ってあって、混じると美味しい。
「セティも食べる?」
もしかしてお腹が空いた? 真っ赤な顔のセティに尋ねて、お魚に手を伸ばした。ゲリュオンがそっぽ向いたまま、お皿を押してくれる。
「ありがとう」
取りやすくなったお魚を指でバラバラにして、摘まんで振り返った。
「あーんして」
口を開けたセティに食べさせて待つと「美味しい」って言ってくれる。嬉しいけど、向かいのガイアが大きな口を開けていた。なんだ、ガイアも欲しいんだね。残ったお魚を摘まんで、身を乗り出す。届くぎりぎりで、魚をガイアの口に入れた。
「美味しい?」
笑って尋ねたらガイアが大急ぎで口を閉じて頷き、後ろでセティが「そういうのは、オレ以外とはダメだ」って――そうなの? 次からは気を付けるね。
「ほら、紫のジュースだ」
僕とセティの瞳の色だから、紫が一番好き。黒いジュースはないからね。紫のジュースに口を付けて、半分くらい飲んだ。
「それ、美味しいの?」
「うん!」
尋ねたガイアにコップを渡そうとしたら、セティが止めた。首を傾げた僕の前に別のコップを置いて差し出す。ちゃんと紫のジュースが入ってた。そっか、僕が飲んだ残りをあげるのはよくないね。頷いて自分のコップを引き戻した。でも残ってたジュースをセティが飲んじゃった。
「どうして」
「うん?」
「僕の残り、誰かにあげちゃダメなのに……どうしてセティが飲むの?」
不思議に思った僕に、ゲリュオンの大爆笑が聞こえた。びっくりして振り返ると、噎せたガイアの背を叩きながらまだ笑ってる。何か楽しいことがあったのかな。セティは「うーん」と唸った後で、膝の上の僕をぎゅっと抱きしめた。
「同じコップで飲むのは、特別な証拠だ。オレの特別はイシスだけだから、イシスもそうして欲しい。誰かにキスさせたり、食べ物を半分こは禁止だ」
禁止はしちゃいけないこと。これはセティと僕の約束なのかな。ちゃんと守れるよ。頷いた僕をセティが笑顔で撫でてくれた。頬ずりして、額と頬にキスをもらう。お外でゲリュオンも他の人もいるから、唇は、夜の仲良しのお呪いまで我慢だね。
げほっ……また咳き込んだガイアがセティを睨む。でもセティは目を逸らしちゃった。袋から顔を覗かせたトムが、ふんふんと鼻を動かす。匂いがするよね、赤ちゃん猫だからお腹空いたかな。焼いたお魚の端を掴んで千切った。トムの前に置くと、首を傾げてみている。
初めて見る食べ物は怖いのかな。僕が同じ魚を食べて見せれば、安全だってわかる? 魚の尻尾の近くをまた指で千切って、僕はトムの前でぱくりと食べた。油で汚れた指先を舐めた僕をじっと見つめたトムが、温かいお魚の身を齧った。目の前に置いた分をぺろりと食べてしまう。
「いい子だね、トム」
ハンカチを出して手を拭いた僕が褒めて顔を上げると、なぜかゲリュオンがそっぽを向いていた。ガイアは真っ赤だし、セティも赤い。唇を舐めると魚の味がした。焼いたお魚は油つけなくても、中から油が出て来るんだよ。その油が甘いの。外にお塩が振ってあって、混じると美味しい。
「セティも食べる?」
もしかしてお腹が空いた? 真っ赤な顔のセティに尋ねて、お魚に手を伸ばした。ゲリュオンがそっぽ向いたまま、お皿を押してくれる。
「ありがとう」
取りやすくなったお魚を指でバラバラにして、摘まんで振り返った。
「あーんして」
口を開けたセティに食べさせて待つと「美味しい」って言ってくれる。嬉しいけど、向かいのガイアが大きな口を開けていた。なんだ、ガイアも欲しいんだね。残ったお魚を摘まんで、身を乗り出す。届くぎりぎりで、魚をガイアの口に入れた。
「美味しい?」
笑って尋ねたらガイアが大急ぎで口を閉じて頷き、後ろでセティが「そういうのは、オレ以外とはダメだ」って――そうなの? 次からは気を付けるね。
63
お気に入りに追加
1,274
あなたにおすすめの小説
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい
夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが……
◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。
信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……
鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。
そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。
これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。
「俺はずっと、ミルのことが好きだった」
そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。
お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ!
※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
【完結】少年王が望むは…
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
シュミレ国―――北の山脈に背を守られ、南の海が恵みを運ぶ国。
15歳の少年王エリヤは即位したばかりだった。両親を暗殺された彼を支えるは、執政ウィリアム一人。他の誰も信頼しない少年王は、彼に心を寄せていく。
恋ほど薄情ではなく、愛と呼ぶには尊敬や崇拝の感情が強すぎる―――小さな我侭すら戸惑うエリヤを、ウィリアムは幸せに出来るのか?
【注意事項】BL、R15、キスシーンあり、性的描写なし
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう、カクヨム
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる