上 下
135 / 321

134.ガイアはお姉ちゃん?

しおりを挟む
 泡立ててよく洗って、順番にセティに乾かしてもらう。一番目は僕だった。トムのお母さんなのにと言ったら、毛皮がないだろうと返される。そう言えば、僕だけ毛皮ないね。毛皮がないと寒いから先に乾かすと言って、僕はセティにタオルで包まれた。着替えが終わったところで、トムとガイアも出て来る。

 中でぶるぶるしたらしく、もう半分くらい乾いてた。温かい風でふわふわにしてもらったトムを受け取り、ガイアと一緒にベッドの端に座る。

「外へ飯を食いに行くにあたり、問題がある」

「僕分かる」

 トムとガイアをどうするか、でしょう? よくできたと頭を撫でてもらい、いつものバッグにトムを入れた。これでトムは平気だけど、ガイアはどうしよう。

「首に巻いていけばバレねえんじゃないか」

「……否定できないけど、僕が襟巻のフリするならイシスに巻き付くよ?」

「そりゃ……危ないな」

 間違いなく誘拐される一択みたい。値段が高そうなテンを巻いた可愛らしい子供なんて、誘拐してくれと宣伝しているようなものだ。危険度が数倍になるんだって。ところで、一択って難しい言葉だね。よく分からないけど、他に選べないとき使うの。

 僕とガイアが一緒にいたら、必ず連れてかれちゃうの? 怖いね。すぐにセティが助けてくれると思うし、いざとなったらお父さんも呼べるけど。お父さんは帝で忙しいから、あまり呼びたくないな。

「ガイア、ひとまず子供になれ」

「仕方ないね」

 溜め息をついたガイアが、するっと人型になる。なぜかスカートだった。銀の髪も長くて腰のあたりまであるよ。それから日に焼けた色の肌で、赤紫の瞳だった。前に会ったガイアが小さい女の子になったみたい。僕より少しお姉さんかな。

「姉……なら、赤毛にしておけ。目の色も合わせろ」

「わかってるよ」

 なぜか唇を尖らせて、ガイアは僕やセティとお揃いになった。凄い凄いと褒めたら、セティが「オレだってできる、やらないだけだ」と唇を尖らせる。なんだか、拗ねたトムみたい。背伸びして、椅子に座ったセティの頭を撫でてから抱き着いた。

「僕のセティはもっとカッコいいし、凄いの。ちゃんと知ってるよ」

 一生懸命伝えたら、セティが笑ってくれる。僕の言葉をちゃんと聞いてくれるのが嬉しい。聞こえないフリされないし、ちゃんと返事した。

「ちょ、やめっ……もう!」

 怒るガイアの声に振り返ると、ゲリュオンがガイアを抱き上げていた。いつもの僕と同じように、腕にお座りする形で持ち上げられてる。目の前にある茶色いゲリュオンの髪をぐしゃぐしゃにしながら、ガイアは飛び降りずに大人しくしてた。

「僕とお揃い」

「……もういいよ、それで」

 何かまだ気に入らないガイアの言葉に、セティとゲリュオンが笑い出した。今日はトムもいるし、屋台に行くみたい。たくさんの屋台が並んで、昼間みたいに明るくて、騒いでる人がいっぱいいる。

「僕、甘いジュースが飲みたい」

 買ってやるとキスしてもらい、僕は嬉しくなった。みんなで出かけるの、楽しいね。お父さんやお母さん、ボリスも来られたらいいのに。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜

天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。 彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。 しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。 幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。 運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。

きみと運命の糸で繋がっている

くるむ
BL
魔物と元人間の魔物が織りなす和風ファンタジー。 誰にも渡さない、自分だけが彼を守ってやれる。 その気持ちは、愛情なのか恋情なのか。 執着にも似た強い思いと様々な思惑が交差して、思いもよらない事態を引き起こしていく。 クール系過保護×甘えん坊 ※受け(藤)が攻め(朔也)以外に、襲われるシーンがあります。

【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)
BL
【概要】 哀れな魔力なし転生少年が可愛くて手中に収めたい、魔法階級社会の頂点に君臨する霊体最強魔法使い(ズレてるが良識持ち) VS 加虐本能を持つ魔法使いに飼われるのが怖いので、さっさと自立したい人間不信魔力なし転生少年 \ファイ!/ ■作品傾向:両片思い&ハピエン確約のすれ違い(たまにイチャイチャ) ■性癖:異世界ファンタジー×身分差×魔法契約 力の差に怯えながらも、不器用ながらも優しい攻めに受けが絆されていく異世界BLです。 【詳しいあらすじ】 魔法至上主義の世界で、魔法が使えない転生少年オルディールに価値はない。 優秀な魔法使いである弟に売られかけたオルディールは逃げ出すも、そこは魔法の為に人の姿を捨てた者が徘徊する王国だった。 オルディールは偶然出会った最強魔法使いスヴィーレネスに救われるが、今度は彼に攫われた上に監禁されてしまう。 しかし彼は諦めておらず、スヴィーレネスの元で魔法を覚えて逃走することを決意していた。

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした

ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!! CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け 相手役は第11話から出てきます。  ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。  役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。  そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

処理中です...