上 下
131 / 321

130.ガイアの勝ちみたい

しおりを挟む
「いや、器は粘土と一緒で捏ねれば形が変わるんだ」

「難しい」

 よく分からない。そもそも粘土って何? 捏ねるのは見たことある。屋台の人が粉と水をぐねぐね混ぜる作業を捏ねるっていうの。だから形が変わるのは分かる。

「明日、玩具の粘土買ってやる」

 ぐしゃっと髪を撫でられ、大きく頷いた。玩具の粘土をみれば、ガイアの話が分かるね。僕、いろいろ知らないけど、急いで覚えるよ。

 子猫より縦に長い白い動物の前足の付け根をもって、持ち上げてみる。びろーんと後ろ足が真っすぐになった。本当に長細い。この動物なんだろう。

「セティ、この動物なに?」

「イタチかな? 毛皮の柔らかさだとテンも似てるが」

「毛皮の柔らかさを重視して、テンにしたんだ」

 ガイアが嬉しそうに教えてくれる。話せる動物がテンなのかな? 毛皮が柔らかくてふかふかで、すごく気持ちいい。

「首に巻いたら気持ちいいぞ。何しろ、襟巻にする動物だからな」

「すごい! 飼ってる人いっぱいいるの?」

 首に巻くならいろんな人の家にいるんだね。大切に飼われてるのかも。僕も大切にしたら、首に巻かせてくれるといいな。うふふと笑う僕に、ガイアが「あちゃー」と変な声を出した。複雑そうな顔をしたセティが「お前のせいだぞ」とガイアを小突く。

「まあ、そんな感じだ」

 変なセティ、何か隠してるみたい。必要なら後で教えてくれるからいいや。ベッドの足元にある絨毯にお座りして、ガイアを膝に乗せる。トムにするのと同じように、何度も首から後ろ足まで撫でた。トムの毛も柔らかいけど、ガイアの毛もすべすべで気持ちいい。

「いっそ、本当に襟巻にしちまうか」

 笑うセティに、ガイアがびくっと揺れた。今の、怖かった? きょとんとしてる僕に、ガイアがしがみ付いた。ぐるっと僕の首や頬に毛皮を押し付けて、唸る。

「僕に何かしたら、イシスが……」

 睨むセティに、ガイアが少し間を置いてから言った。

「泣くんだからね」

「くそっ、否定できねえ」

 得意げに言い切ったガイアの勝ちみたい。今日はみんなで寝ることになった。でも僕達はこれから本屋さんに行くんだ。トムを連れていけないから、ガイアも待っててくれると嬉しい。そうお願いしたら、トムと一緒にお留守番をしてくれるんだって。よかった。

「行ってきます」

「行ってらっしゃい。お土産は果物がいいな」

 お強請りなんて1000年早いと文句言いながら、セティが僕と手を繋いで部屋に鍵を掛けた。他の人に見つかると、トムもガイアも毛皮取られちゃうみたい。怖いね。柔らかくて気持ちいいから、欲しい人がいっぱいいるのだと聞いた。一緒に暮らせば触らせてくれるのに。

「イシスみたいに考える人ばかりじゃないんだよ」

 ふーん。靴の音をさせながら、本屋さんまで歩く。前より僕が大きくなったから、繋いだ手の高さが変わった。歩くのも少し早い気がした。街の中は石が敷いてあるから、歩きやすい。到着した建物は、僕の想像よりずっと大きかった。

「……お父さんがすっぽり入るね」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした

ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!! CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け 相手役は第11話から出てきます。  ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。  役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。  そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

乙女ゲームのモブに転生したようですが、何故かBLの世界になってます~逆ハーなんて狙ってないのに攻略対象達が僕を溺愛してきます

syouki
BL
学校の階段から落ちていく瞬間、走馬灯のように僕の知らない記憶が流れ込んできた。そして、ここが乙女ゲーム「ハイスクールメモリー~あなたと過ごすスクールライフ」通称「ハイメモ」の世界だということに気が付いた。前世の僕は、色々なゲームの攻略を紹介する会社に勤めていてこの「ハイメモ」を攻略中だったが、帰宅途中で事故に遇い、はやりの異世界転生をしてしまったようだ。と言っても、僕は攻略対象でもなければ、対象者とは何の接点も無い一般人。いわゆるモブキャラだ。なので、ヒロインと攻略対象の恋愛を見届けようとしていたのだが、何故か攻略対象が僕に絡んでくる。待って!ここって乙女ゲームの世界ですよね??? ※設定はゆるゆるです。 ※主人公は流されやすいです。 ※R15は念のため ※不定期更新です。 ※BL小説大賞エントリーしてます。よろしくお願いしますm(_ _)m

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?

み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました! 志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

婚約破棄王子は魔獣の子を孕む〜愛でて愛でられ〜《完結》

クリム
BL
「婚約を破棄します」相手から望まれたから『婚約破棄』をし続けた王息のサリオンはわずか十歳で『婚約破棄王子』と呼ばれていた。サリオンは落実(らくじつ)故に王族の容姿をしていない。ガルド神に呪われていたからだ。 そんな中、大公の孫のアーロンと婚約をする。アーロンの明るさと自信に満ち溢れた姿に、サリオンは戸惑いつつ婚約をする。しかし、サリオンの呪いは容姿だけではなかった。離宮で晒す姿は夜になると魔獣に変幻するのである。 アーロンにはそれを告げられず、サリオンは兄に連れられ王領地の魔の森の入り口で金の獅子型の魔獣に出会う。変幻していたサリオンは魔獣に懐かれるが、二日の滞在で別れも告げられず離宮に戻る。 その後魔力の強いサリオンは兄の勧めで貴族学舎に行く前に、王領魔法学舎に行くように勧められて魔の森の中へ。そこには小さな先生を取り囲む平民の子どもたちがいた。 サリオンの魔法学舎から貴族学舎、兄セシルの王位継承問題へと向かい、サリオンの呪いと金の魔獣。そしてアーロンとの関係。そんなファンタジーな物語です。 一人称視点ですが、途中三人称視点に変化します。 R18は多分なるからつけました。 2020年10月18日、題名を変更しました。 『婚約破棄王子は魔獣に愛される』→『婚約破棄王子は魔獣の子を孕む』です。 前作『花嫁』とリンクしますが、前作を読まなくても大丈夫です。(前作から二十年ほど経過しています)

貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話

タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。 叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……? エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。

処理中です...