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123.僕はお兄ちゃんだからね
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緑竜の弟には「ボリス」という名前がついた。ちなみに僕は知らなかったけど、お父さんは銀竜で「ファフニール」がお名前なんだって。青竜のお母さんはセティが呼んでた「ヴルム」だよ。昔はもっと名前が長かったんだけど、お父さんと結婚して短くしたみたい。
お兄ちゃんドラゴンに会えたら、お名前を教えてもらうんだ。お母さんが話してくれたのは、一番上から赤、茶色、緑の色を持つドラゴンだってこと。あと3人もいるお兄ちゃん達、僕を好きになってくれたら嬉しいな。立派な翼もないしキラキラした鱗も持ってないけど。
『イシスはいい子だから、きっとあの子達も優しくしてくれる』
お母さんが僕をべろんと舐めた。擽ったいけど、すごくあったかい気持ちになる。この胸の辺りがじわじわするんだ。笑いながらボリスと転げまわって遊んで、顔を見合わせてから大人の様子を窺った。
お父さんはお母さんにご飯を与えていて、お母さんも寄り掛かってる。仲いいの、見てて幸せになるよね。セティはトムを追い回していた。何か持って逃げてるみたいだから、しばらく僕達に気づかない。今だ! そろりそろりと歩いて、奥の黄金がある部屋に飛び込んだ。
目を見開いて興奮した様子のボリスが黄金の山を駆け登る。僕も大急ぎで後を追った。ボリスが大きいからか、山が崩れてくるの。大きな冠が落ちてきたのを被って、さらに追いかけた。一番上で待ってるボリスの尻尾を掴んで、僕もやっと頂上。お母さん、こんなに集めるの大変だったね。
顔を見合わせて笑いあう。
「こら、いたずらっ子。何やってんだ?」
言葉は叱ってるのに、声は笑ってる。セティが入り口に寄り掛かって僕達を見ていた。いつもセティの背が高いのに、僕の方が上にいるんだよ。トムは捕まったみたいで、首のところを押さえられてた。それでも乱暴にしないで抱っこしてるの。
なんか……ちょっとだけ、むかむかする。古くなったご飯を食べたときみたい。気分がよくない。黄金の山に登ってご機嫌だった気持ちが萎んじゃった。
『あらあら』
顔を覗かせたお母さんに手招きされて、ボリスはすぐに降参しちゃった。ここで立て籠るって言ってたのにね。でもセティがトムを置いて、両手を広げた。
「おいで」
僕を呼んでる! すぐに黄金の山を駆け下りた。いっぱい金貨が散らばって、頭に乗せた冠も落ちちゃったけど、勢いつけてセティの胸に抱き着く。背中まで腕を回したら、僕はあっという間に抱っこされた。首に手を回し直して、ぎゅっとする。
さっきのむかむかが消えた。背中を叩きながら「イシスがやきもち焼くなんてな」と笑うセティの声が聞こえた。やきもちって何? 聞いても笑うだけで教えてくれないし、お父さんやお母さんも答えてくれない。でも笑ってるからいいや。
疲れるまでボリスと遊んで、セティに抱っこされてお昼寝もした。もちろんボリスやトムも一緒にだよ。笑いながらお母さんが後ろから尻尾を回して包んでくれて、お父さんも一緒に横になった。みんなで寝るのもいいね。あったかい。
目が覚めたらお腹がぐぅと鳴った。濡れた布で顔を拭って、それから手もよく拭いた。セティが取り出したのは、ガイアが持たせてくれた桃や果物の山だ。
「あ、これ……ガイアがくれた! あのね、桃が美味しいんだよ。これ」
ボリスにひとつ見せると、くんくんと匂ってからぱくりと食べた。真ん中の種まで食べちゃったみたい。ごくんと飲み込むと、また口を開けた。可愛い。いっぱい食べてお父さん達みたいに大きくならなくちゃね。種類を混ぜて、いくつも食べさせた。
お母さんとお父さんも食べてるし、セティも桃を齧っていた。それ、汁が垂れちゃう。自分で拾って食べ始めたボリスを置いて、僕はセティの腕を伝う汁をぺろりと舐めた。
お兄ちゃんドラゴンに会えたら、お名前を教えてもらうんだ。お母さんが話してくれたのは、一番上から赤、茶色、緑の色を持つドラゴンだってこと。あと3人もいるお兄ちゃん達、僕を好きになってくれたら嬉しいな。立派な翼もないしキラキラした鱗も持ってないけど。
『イシスはいい子だから、きっとあの子達も優しくしてくれる』
お母さんが僕をべろんと舐めた。擽ったいけど、すごくあったかい気持ちになる。この胸の辺りがじわじわするんだ。笑いながらボリスと転げまわって遊んで、顔を見合わせてから大人の様子を窺った。
お父さんはお母さんにご飯を与えていて、お母さんも寄り掛かってる。仲いいの、見てて幸せになるよね。セティはトムを追い回していた。何か持って逃げてるみたいだから、しばらく僕達に気づかない。今だ! そろりそろりと歩いて、奥の黄金がある部屋に飛び込んだ。
目を見開いて興奮した様子のボリスが黄金の山を駆け登る。僕も大急ぎで後を追った。ボリスが大きいからか、山が崩れてくるの。大きな冠が落ちてきたのを被って、さらに追いかけた。一番上で待ってるボリスの尻尾を掴んで、僕もやっと頂上。お母さん、こんなに集めるの大変だったね。
顔を見合わせて笑いあう。
「こら、いたずらっ子。何やってんだ?」
言葉は叱ってるのに、声は笑ってる。セティが入り口に寄り掛かって僕達を見ていた。いつもセティの背が高いのに、僕の方が上にいるんだよ。トムは捕まったみたいで、首のところを押さえられてた。それでも乱暴にしないで抱っこしてるの。
なんか……ちょっとだけ、むかむかする。古くなったご飯を食べたときみたい。気分がよくない。黄金の山に登ってご機嫌だった気持ちが萎んじゃった。
『あらあら』
顔を覗かせたお母さんに手招きされて、ボリスはすぐに降参しちゃった。ここで立て籠るって言ってたのにね。でもセティがトムを置いて、両手を広げた。
「おいで」
僕を呼んでる! すぐに黄金の山を駆け下りた。いっぱい金貨が散らばって、頭に乗せた冠も落ちちゃったけど、勢いつけてセティの胸に抱き着く。背中まで腕を回したら、僕はあっという間に抱っこされた。首に手を回し直して、ぎゅっとする。
さっきのむかむかが消えた。背中を叩きながら「イシスがやきもち焼くなんてな」と笑うセティの声が聞こえた。やきもちって何? 聞いても笑うだけで教えてくれないし、お父さんやお母さんも答えてくれない。でも笑ってるからいいや。
疲れるまでボリスと遊んで、セティに抱っこされてお昼寝もした。もちろんボリスやトムも一緒にだよ。笑いながらお母さんが後ろから尻尾を回して包んでくれて、お父さんも一緒に横になった。みんなで寝るのもいいね。あったかい。
目が覚めたらお腹がぐぅと鳴った。濡れた布で顔を拭って、それから手もよく拭いた。セティが取り出したのは、ガイアが持たせてくれた桃や果物の山だ。
「あ、これ……ガイアがくれた! あのね、桃が美味しいんだよ。これ」
ボリスにひとつ見せると、くんくんと匂ってからぱくりと食べた。真ん中の種まで食べちゃったみたい。ごくんと飲み込むと、また口を開けた。可愛い。いっぱい食べてお父さん達みたいに大きくならなくちゃね。種類を混ぜて、いくつも食べさせた。
お母さんとお父さんも食べてるし、セティも桃を齧っていた。それ、汁が垂れちゃう。自分で拾って食べ始めたボリスを置いて、僕はセティの腕を伝う汁をぺろりと舐めた。
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