124 / 321
123.僕はお兄ちゃんだからね
しおりを挟む
緑竜の弟には「ボリス」という名前がついた。ちなみに僕は知らなかったけど、お父さんは銀竜で「ファフニール」がお名前なんだって。青竜のお母さんはセティが呼んでた「ヴルム」だよ。昔はもっと名前が長かったんだけど、お父さんと結婚して短くしたみたい。
お兄ちゃんドラゴンに会えたら、お名前を教えてもらうんだ。お母さんが話してくれたのは、一番上から赤、茶色、緑の色を持つドラゴンだってこと。あと3人もいるお兄ちゃん達、僕を好きになってくれたら嬉しいな。立派な翼もないしキラキラした鱗も持ってないけど。
『イシスはいい子だから、きっとあの子達も優しくしてくれる』
お母さんが僕をべろんと舐めた。擽ったいけど、すごくあったかい気持ちになる。この胸の辺りがじわじわするんだ。笑いながらボリスと転げまわって遊んで、顔を見合わせてから大人の様子を窺った。
お父さんはお母さんにご飯を与えていて、お母さんも寄り掛かってる。仲いいの、見てて幸せになるよね。セティはトムを追い回していた。何か持って逃げてるみたいだから、しばらく僕達に気づかない。今だ! そろりそろりと歩いて、奥の黄金がある部屋に飛び込んだ。
目を見開いて興奮した様子のボリスが黄金の山を駆け登る。僕も大急ぎで後を追った。ボリスが大きいからか、山が崩れてくるの。大きな冠が落ちてきたのを被って、さらに追いかけた。一番上で待ってるボリスの尻尾を掴んで、僕もやっと頂上。お母さん、こんなに集めるの大変だったね。
顔を見合わせて笑いあう。
「こら、いたずらっ子。何やってんだ?」
言葉は叱ってるのに、声は笑ってる。セティが入り口に寄り掛かって僕達を見ていた。いつもセティの背が高いのに、僕の方が上にいるんだよ。トムは捕まったみたいで、首のところを押さえられてた。それでも乱暴にしないで抱っこしてるの。
なんか……ちょっとだけ、むかむかする。古くなったご飯を食べたときみたい。気分がよくない。黄金の山に登ってご機嫌だった気持ちが萎んじゃった。
『あらあら』
顔を覗かせたお母さんに手招きされて、ボリスはすぐに降参しちゃった。ここで立て籠るって言ってたのにね。でもセティがトムを置いて、両手を広げた。
「おいで」
僕を呼んでる! すぐに黄金の山を駆け下りた。いっぱい金貨が散らばって、頭に乗せた冠も落ちちゃったけど、勢いつけてセティの胸に抱き着く。背中まで腕を回したら、僕はあっという間に抱っこされた。首に手を回し直して、ぎゅっとする。
さっきのむかむかが消えた。背中を叩きながら「イシスがやきもち焼くなんてな」と笑うセティの声が聞こえた。やきもちって何? 聞いても笑うだけで教えてくれないし、お父さんやお母さんも答えてくれない。でも笑ってるからいいや。
疲れるまでボリスと遊んで、セティに抱っこされてお昼寝もした。もちろんボリスやトムも一緒にだよ。笑いながらお母さんが後ろから尻尾を回して包んでくれて、お父さんも一緒に横になった。みんなで寝るのもいいね。あったかい。
目が覚めたらお腹がぐぅと鳴った。濡れた布で顔を拭って、それから手もよく拭いた。セティが取り出したのは、ガイアが持たせてくれた桃や果物の山だ。
「あ、これ……ガイアがくれた! あのね、桃が美味しいんだよ。これ」
ボリスにひとつ見せると、くんくんと匂ってからぱくりと食べた。真ん中の種まで食べちゃったみたい。ごくんと飲み込むと、また口を開けた。可愛い。いっぱい食べてお父さん達みたいに大きくならなくちゃね。種類を混ぜて、いくつも食べさせた。
お母さんとお父さんも食べてるし、セティも桃を齧っていた。それ、汁が垂れちゃう。自分で拾って食べ始めたボリスを置いて、僕はセティの腕を伝う汁をぺろりと舐めた。
お兄ちゃんドラゴンに会えたら、お名前を教えてもらうんだ。お母さんが話してくれたのは、一番上から赤、茶色、緑の色を持つドラゴンだってこと。あと3人もいるお兄ちゃん達、僕を好きになってくれたら嬉しいな。立派な翼もないしキラキラした鱗も持ってないけど。
『イシスはいい子だから、きっとあの子達も優しくしてくれる』
お母さんが僕をべろんと舐めた。擽ったいけど、すごくあったかい気持ちになる。この胸の辺りがじわじわするんだ。笑いながらボリスと転げまわって遊んで、顔を見合わせてから大人の様子を窺った。
お父さんはお母さんにご飯を与えていて、お母さんも寄り掛かってる。仲いいの、見てて幸せになるよね。セティはトムを追い回していた。何か持って逃げてるみたいだから、しばらく僕達に気づかない。今だ! そろりそろりと歩いて、奥の黄金がある部屋に飛び込んだ。
目を見開いて興奮した様子のボリスが黄金の山を駆け登る。僕も大急ぎで後を追った。ボリスが大きいからか、山が崩れてくるの。大きな冠が落ちてきたのを被って、さらに追いかけた。一番上で待ってるボリスの尻尾を掴んで、僕もやっと頂上。お母さん、こんなに集めるの大変だったね。
顔を見合わせて笑いあう。
「こら、いたずらっ子。何やってんだ?」
言葉は叱ってるのに、声は笑ってる。セティが入り口に寄り掛かって僕達を見ていた。いつもセティの背が高いのに、僕の方が上にいるんだよ。トムは捕まったみたいで、首のところを押さえられてた。それでも乱暴にしないで抱っこしてるの。
なんか……ちょっとだけ、むかむかする。古くなったご飯を食べたときみたい。気分がよくない。黄金の山に登ってご機嫌だった気持ちが萎んじゃった。
『あらあら』
顔を覗かせたお母さんに手招きされて、ボリスはすぐに降参しちゃった。ここで立て籠るって言ってたのにね。でもセティがトムを置いて、両手を広げた。
「おいで」
僕を呼んでる! すぐに黄金の山を駆け下りた。いっぱい金貨が散らばって、頭に乗せた冠も落ちちゃったけど、勢いつけてセティの胸に抱き着く。背中まで腕を回したら、僕はあっという間に抱っこされた。首に手を回し直して、ぎゅっとする。
さっきのむかむかが消えた。背中を叩きながら「イシスがやきもち焼くなんてな」と笑うセティの声が聞こえた。やきもちって何? 聞いても笑うだけで教えてくれないし、お父さんやお母さんも答えてくれない。でも笑ってるからいいや。
疲れるまでボリスと遊んで、セティに抱っこされてお昼寝もした。もちろんボリスやトムも一緒にだよ。笑いながらお母さんが後ろから尻尾を回して包んでくれて、お父さんも一緒に横になった。みんなで寝るのもいいね。あったかい。
目が覚めたらお腹がぐぅと鳴った。濡れた布で顔を拭って、それから手もよく拭いた。セティが取り出したのは、ガイアが持たせてくれた桃や果物の山だ。
「あ、これ……ガイアがくれた! あのね、桃が美味しいんだよ。これ」
ボリスにひとつ見せると、くんくんと匂ってからぱくりと食べた。真ん中の種まで食べちゃったみたい。ごくんと飲み込むと、また口を開けた。可愛い。いっぱい食べてお父さん達みたいに大きくならなくちゃね。種類を混ぜて、いくつも食べさせた。
お母さんとお父さんも食べてるし、セティも桃を齧っていた。それ、汁が垂れちゃう。自分で拾って食べ始めたボリスを置いて、僕はセティの腕を伝う汁をぺろりと舐めた。
75
お気に入りに追加
1,358
あなたにおすすめの小説
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。

前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい
夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが……
◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。
嫌われ公式愛妾役ですが夫だけはただの僕のガチ勢でした
ナイトウ
BL
BL小説大賞にご協力ありがとうございました!!
CP:不器用受ガチ勢伯爵夫攻め、女形役者受け
相手役は第11話から出てきます。
ロストリア帝国の首都セレンで女形の売れっ子役者をしていたルネは、皇帝エルドヴァルの為に公式愛妾を装い王宮に出仕し、王妃マリーズの代わりに貴族の反感を一手に受ける役割を引き受けた。
役目は無事終わり追放されたルネ。所属していた劇団に戻りまた役者業を再開しようとするも公式愛妾になるために偽装結婚したリリック伯爵に阻まれる。
そこで仕方なく、顔もろくに知らない夫と離婚し役者に戻るために彼の屋敷に向かうのだった。
【完結】少年王が望むは…
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
シュミレ国―――北の山脈に背を守られ、南の海が恵みを運ぶ国。
15歳の少年王エリヤは即位したばかりだった。両親を暗殺された彼を支えるは、執政ウィリアム一人。他の誰も信頼しない少年王は、彼に心を寄せていく。
恋ほど薄情ではなく、愛と呼ぶには尊敬や崇拝の感情が強すぎる―――小さな我侭すら戸惑うエリヤを、ウィリアムは幸せに出来るのか?
【注意事項】BL、R15、キスシーンあり、性的描写なし
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう、カクヨム
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる