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117.水底へ沈む
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「同じ顔してるのは、オレとガイアが双子だからだ」
驚いちゃった。双子って一緒に生まれるんだって。だからセティがお兄ちゃんで弟。僕と卵みたいに順番がはっきりしてない兄弟もいるんだね。
「珍しいね、君が手に入れた物を見せてくれるなんて、初めてじゃない?」
むっとした顔のセティが「こないだ脅したくせに、何言ってやがる」と文句を言う。脅されたの? 慌てて僕はセティを隠すために目いっぱい手を広げて覆いかぶさった。大丈夫だよ、僕がついてるからね。怖いことも痛いことも、僕が引き受ける。セティに酷いことさせないから。
「……ん?」
「セティを虐めないで! ぼ、僕が許さないんだからっ」
強いセティを脅す人なら、僕は勝てない。でも僕は許さない。だってセティは大切な人だ。嫌な思いさせないなら、僕は頑張れるよ。両手を広げて睨みつけた先で、ガイアは困った顔をした。
「虐めない。だから私を嫌わないで欲しいな」
「虐めない? じゃあ、平気」
ほっとした僕の頬にセティの唇が当たって、すぐに額や髪にもたくさんキスをくれた。嬉しくて目を閉じて待つ。すぐに鼻の頭をかすめてから、唇に触れた。音がするまで何度も重ねて、満足した僕はほぅ……と長い息を吐き出す。
「……羨ましいというか、神でも変わるもんだね。私が知るタイフォンじゃない」
複雑そうに呟いた後、ガイアは僕達を神殿に招き入れた。凄い大きな建物で、天井がうんと遠い。セティに抱っこされた僕も全然届かないんだ。声が響いて不思議な感じだった。
「完全に切り替えるの?」
「そのつもりだ」
よくわからない会話があって、建物の奥にある大きな大きなお風呂の前で降ろされた。お風呂じゃないのかな? 手を入れたら冷たくないけど、お風呂程温かくなかった。これに入っても温かくならないね。ぱちゃぱちゃとかき回していると、ばさっと服を脱いだセティに抱っこされた。
「入るの?」
「そうだ」
「お風呂じゃないよ」
「嫌か?」
ううん。首を横に振ってぎゅっと抱き着く。その間に服をするすると脱がされた。上から被るスカートは、下から引っ張ると脱げるんだね。知らなかった。
「あ、トムは?」
「私が預かっておこう。安心して行っておいで」
ガイアの腕の中にいるトムは、怖がる様子もなく丸まっている。預けても平気そう。そのままセティに抱っこされて、僕は後ろ向きにお風呂みたいな水たまりに浸かった。お風呂より温いのに、中に入ってるとじわじわ熱いのが入ってくる。
「熱いのがある」
「やっぱりイシスは神族向きだな」
身体全体に何かが入ってきて、中を温めていく。お風呂と違うけど、気持ちいい。ぼんやりしながらセティの首に回した手に力を込めた。寝ちゃいそう。そう思ったとき、歩いてたセティが沈んだ。頭の先まですっぽりと水に入って、息が出来ない。
慌てる僕をよそに、セティは息をふうと吐き出してしまった。その後何ともなさそう。どうしよう、焦って口を両手で押さえた。怖い、どうしたらいいの。僕は神様じゃないから、息が出来ないよ……。
我慢していたけれど、どうしても無理で……がばっと口や鼻から息が出てしまった。水面がキラキラと光ってる。そこへ向かう息は丸くて、歪んだのもあった。綺麗、そう思った僕は目を閉じる。背中を撫でるセティの手を感じながら、新しい息を吸い込んだ。
驚いちゃった。双子って一緒に生まれるんだって。だからセティがお兄ちゃんで弟。僕と卵みたいに順番がはっきりしてない兄弟もいるんだね。
「珍しいね、君が手に入れた物を見せてくれるなんて、初めてじゃない?」
むっとした顔のセティが「こないだ脅したくせに、何言ってやがる」と文句を言う。脅されたの? 慌てて僕はセティを隠すために目いっぱい手を広げて覆いかぶさった。大丈夫だよ、僕がついてるからね。怖いことも痛いことも、僕が引き受ける。セティに酷いことさせないから。
「……ん?」
「セティを虐めないで! ぼ、僕が許さないんだからっ」
強いセティを脅す人なら、僕は勝てない。でも僕は許さない。だってセティは大切な人だ。嫌な思いさせないなら、僕は頑張れるよ。両手を広げて睨みつけた先で、ガイアは困った顔をした。
「虐めない。だから私を嫌わないで欲しいな」
「虐めない? じゃあ、平気」
ほっとした僕の頬にセティの唇が当たって、すぐに額や髪にもたくさんキスをくれた。嬉しくて目を閉じて待つ。すぐに鼻の頭をかすめてから、唇に触れた。音がするまで何度も重ねて、満足した僕はほぅ……と長い息を吐き出す。
「……羨ましいというか、神でも変わるもんだね。私が知るタイフォンじゃない」
複雑そうに呟いた後、ガイアは僕達を神殿に招き入れた。凄い大きな建物で、天井がうんと遠い。セティに抱っこされた僕も全然届かないんだ。声が響いて不思議な感じだった。
「完全に切り替えるの?」
「そのつもりだ」
よくわからない会話があって、建物の奥にある大きな大きなお風呂の前で降ろされた。お風呂じゃないのかな? 手を入れたら冷たくないけど、お風呂程温かくなかった。これに入っても温かくならないね。ぱちゃぱちゃとかき回していると、ばさっと服を脱いだセティに抱っこされた。
「入るの?」
「そうだ」
「お風呂じゃないよ」
「嫌か?」
ううん。首を横に振ってぎゅっと抱き着く。その間に服をするすると脱がされた。上から被るスカートは、下から引っ張ると脱げるんだね。知らなかった。
「あ、トムは?」
「私が預かっておこう。安心して行っておいで」
ガイアの腕の中にいるトムは、怖がる様子もなく丸まっている。預けても平気そう。そのままセティに抱っこされて、僕は後ろ向きにお風呂みたいな水たまりに浸かった。お風呂より温いのに、中に入ってるとじわじわ熱いのが入ってくる。
「熱いのがある」
「やっぱりイシスは神族向きだな」
身体全体に何かが入ってきて、中を温めていく。お風呂と違うけど、気持ちいい。ぼんやりしながらセティの首に回した手に力を込めた。寝ちゃいそう。そう思ったとき、歩いてたセティが沈んだ。頭の先まですっぽりと水に入って、息が出来ない。
慌てる僕をよそに、セティは息をふうと吐き出してしまった。その後何ともなさそう。どうしよう、焦って口を両手で押さえた。怖い、どうしたらいいの。僕は神様じゃないから、息が出来ないよ……。
我慢していたけれど、どうしても無理で……がばっと口や鼻から息が出てしまった。水面がキラキラと光ってる。そこへ向かう息は丸くて、歪んだのもあった。綺麗、そう思った僕は目を閉じる。背中を撫でるセティの手を感じながら、新しい息を吸い込んだ。
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