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65.セティはどこ?
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結婚の約束だと言って、セティが透明な指輪をくれた。石を削って作ったと言ってたけど、大きい石だったのかな。窓際に座って、夕日の赤をきらきらと指輪で反射させる。とっても綺麗。
赤い光が中で何回も光って、眩しいくらい。継ぎ目がない指輪は僕の指にぴったりだった。
「気に入ったみたいだな」
くすくす笑いながら、後ろにセティが座る。ここの宿はベッドが窓の下にぴったりくっついてた。だから座ると窓の外がよく見える。セティが足を伸ばして僕を閉じ込める格好だから、寄りかかったらセティが温かく包んでくれた。
上を見上げると、綺麗なセティの顔がある。今日は外へでないからと黒い髪だった。僕も同じ色に戻ってる。セティは普段短くした赤毛なのに、神様の黒髪に戻ると長くなった。今もベッドの上に髪の毛が広がってる。それを指先で掬って、指輪のように夕日に翳した。
艶がある髪は、指輪と違うけど輝く。セティはどこもかしこも綺麗でかっこいい。
「僕はセティのお嫁さん?」
「ああ。そうだ、オレの嫁だ」
嬉しい。ずっと一緒にいて、好きでいてもいいんだ。それが許されるのが結婚で、僕はもらってもらうお嫁さんになる。絵本を読んでもらって良かった。セティが僕を好きになってくれて嬉しい。
「なにがあっても絶対に、オレが守ってやる。怖くなったら心の中で、オレを呼べ」
「セティが来るなら怖くない」
「いい子だ」
約束したセティが笑った。釣られて僕も笑う。後ろから抱っこされるの、すごく好き。背中もお尻も足もセティにくっついてるし、首にセティの髪が触る。それにお腹にもセティの手が回されてた。
僕、まるでセティにくっついた服みたい。
ノックの音が聞こえて、セティが溜め息を吐く。料理を運んできたと告げる外の声で、温かった背中からセティが離れた。振り返るとセティがドアを開けて、誰かと話している。そして白い布が僕の口を塞いで、叫ぶ前に目の前が黒くなった。
ゆらゆらと揺れる。お腹が痛くて、気持ち悪い。目を開けようとしても見えなくて、急に怖くなった。触ってる手はセティじゃない。
誰?
セティはどこ?
どさっと乱暴に下されて、お腹の苦しいのが少し楽になった。僕の両手は前で縛られてるみたい。動かそうとしてもダメだった。目も覆われてるのかな。布でなにも見えない。がさごそと何か動く音がした。
「誰……?」
小さな声で尋ねると、ガサガサした声が答えた。
「悪いが、ここで死んでくれ。すぐに野獣が片付けてくれるからよ。これも仕事だ」
何かに背中が触る。僕の背中に大きくて硬い物が触れた。そこへ縛り付けられる。胸や腹にぐるぐると紐が巻かれて痛かった。
動けないで震える僕の腕にちくっと痛みが走る。見えないから余計に怖くなった。どうしよう、セティがいない。僕、セティがいないと無理だ。怖い。
腕が冷たくて、濡れてるみたい。足音は徐々に遠くなった。音があまりしなくて、いつもの癖で左右を見ようと首を動かす。でも目は覆われて見えなかった。縛られた手を動かして、顔を下に向けたら届くかも。
失敗して、顔も引っ掻いちゃったけど、やっと布を掴めた。痛いけど引っ張ると目を覆ってる布が落ちる。薄暗い森……? セティはどこなの。さっきの人はセティじゃなかった。ゲリュオンも違う。
寒い。さっき痛かった腕を見ようとしたけど、暗くてよく分からなかった。森の中から音がする。震えながら目を向けた先に、大きな動物がいた。牙を見せて僕に唸るのは、どうして? 徐々に数の増える動物を見ながら、僕は神様に祈った。
お願いです。セティに会わせてください。
赤い光が中で何回も光って、眩しいくらい。継ぎ目がない指輪は僕の指にぴったりだった。
「気に入ったみたいだな」
くすくす笑いながら、後ろにセティが座る。ここの宿はベッドが窓の下にぴったりくっついてた。だから座ると窓の外がよく見える。セティが足を伸ばして僕を閉じ込める格好だから、寄りかかったらセティが温かく包んでくれた。
上を見上げると、綺麗なセティの顔がある。今日は外へでないからと黒い髪だった。僕も同じ色に戻ってる。セティは普段短くした赤毛なのに、神様の黒髪に戻ると長くなった。今もベッドの上に髪の毛が広がってる。それを指先で掬って、指輪のように夕日に翳した。
艶がある髪は、指輪と違うけど輝く。セティはどこもかしこも綺麗でかっこいい。
「僕はセティのお嫁さん?」
「ああ。そうだ、オレの嫁だ」
嬉しい。ずっと一緒にいて、好きでいてもいいんだ。それが許されるのが結婚で、僕はもらってもらうお嫁さんになる。絵本を読んでもらって良かった。セティが僕を好きになってくれて嬉しい。
「なにがあっても絶対に、オレが守ってやる。怖くなったら心の中で、オレを呼べ」
「セティが来るなら怖くない」
「いい子だ」
約束したセティが笑った。釣られて僕も笑う。後ろから抱っこされるの、すごく好き。背中もお尻も足もセティにくっついてるし、首にセティの髪が触る。それにお腹にもセティの手が回されてた。
僕、まるでセティにくっついた服みたい。
ノックの音が聞こえて、セティが溜め息を吐く。料理を運んできたと告げる外の声で、温かった背中からセティが離れた。振り返るとセティがドアを開けて、誰かと話している。そして白い布が僕の口を塞いで、叫ぶ前に目の前が黒くなった。
ゆらゆらと揺れる。お腹が痛くて、気持ち悪い。目を開けようとしても見えなくて、急に怖くなった。触ってる手はセティじゃない。
誰?
セティはどこ?
どさっと乱暴に下されて、お腹の苦しいのが少し楽になった。僕の両手は前で縛られてるみたい。動かそうとしてもダメだった。目も覆われてるのかな。布でなにも見えない。がさごそと何か動く音がした。
「誰……?」
小さな声で尋ねると、ガサガサした声が答えた。
「悪いが、ここで死んでくれ。すぐに野獣が片付けてくれるからよ。これも仕事だ」
何かに背中が触る。僕の背中に大きくて硬い物が触れた。そこへ縛り付けられる。胸や腹にぐるぐると紐が巻かれて痛かった。
動けないで震える僕の腕にちくっと痛みが走る。見えないから余計に怖くなった。どうしよう、セティがいない。僕、セティがいないと無理だ。怖い。
腕が冷たくて、濡れてるみたい。足音は徐々に遠くなった。音があまりしなくて、いつもの癖で左右を見ようと首を動かす。でも目は覆われて見えなかった。縛られた手を動かして、顔を下に向けたら届くかも。
失敗して、顔も引っ掻いちゃったけど、やっと布を掴めた。痛いけど引っ張ると目を覆ってる布が落ちる。薄暗い森……? セティはどこなの。さっきの人はセティじゃなかった。ゲリュオンも違う。
寒い。さっき痛かった腕を見ようとしたけど、暗くてよく分からなかった。森の中から音がする。震えながら目を向けた先に、大きな動物がいた。牙を見せて僕に唸るのは、どうして? 徐々に数の増える動物を見ながら、僕は神様に祈った。
お願いです。セティに会わせてください。
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