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51.無事でよかった
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目が覚めた僕は、外の様子がおかしいことに気づいた。濡れた布で顔を拭きながら、乱れた大地をじっくり眺める。寝てる間にだれか来たのかも。動物とか、他の旅人だと思う。生えてた草を踏んだり蹴った跡がたくさん残ってた。
「朝はパンと飲み物だけだ。ごめんな」
「ううん。美味しいから平気」
僕がスープを好きだから、セティはごめんねって言ったんだ。でも朝は忙しいし、すぐに歩く準備しないといけない。時間がかかるスープを作るのは無理だもん。
「セティと食べると美味しい」
硬いパンでも、噛むのが大変なお肉でも、セティが一緒だと美味しい。手をよく洗ってから受け取ると、黒いパンに野菜と薄い肉が挟まってた。かいでみると、黒いパンは甘い匂いがする。セティの膝に乗った僕は、両手でパンをもって齧った。
真ん中に何か挟んだパンは、ちゃんと持たないと中の野菜とか落ちちゃう。注意しながら齧ったらパンは柔らかかった。野菜もお肉も美味しい。にこにこ笑う。食べてるときに口を開けて話すと、全部零れちゃうから。でも美味しいって早く伝えたいから笑うんだ。
ぐりぐりと頭を撫でてくれるセティも、同じ物を食べていた。一緒の物を一緒に食べるの、すごくドキドキする。嬉しくて「うわぁああ」って言いたくなる。甘いジュースも貰って、残さず全部食べられた。
テントを一緒に片付けて、セティが荷物をしまったら準備完了だ。僕は靴を履いて、上着を着て待っていた。手を繋ぐ。これは外を歩く時のルールみたい。前に知らない人に捕まって怖かったから、セティと手を繋いでるとほっとできる。
「……別口、か」
呟いたセティが僕を抱き上げた。歩いていくと思ったのに、どうしたんだろう。首をかしげて待つ僕の髪をセティが撫でた。
「首に手をまわして、絶対に離すな。約束だ」
「うん」
飛び出したのは黒い服の人が1人、また1人、もう1人……。セティの首に手をまわして力を入れ、離れないようにしがみ付く。この人達、僕とセティを離そうとしてる? そんなの嫌だ。
「その子供を渡せ」
「今度は喋るのか……まあ関係ないが」
セティが何かを取り出した。長い棒で、先にきらきらする三角がついてる。飛びかかってきた男をそれで突き飛ばしたら、ばっと赤い水が出た。血……あれは痛い証拠だ。でもセティがケガしてないからいい。
変な声出した男が動かなくなり、次の男も棒の部分で叩かれた。倒れたところを突き刺そうとしたら、別の奴が邪魔する。睨みつけた僕と目が合った。驚いた顔をするなんて変なの。その男が驚いてる間に、セティの足が蹴飛ばした。
転がった男がぎらぎらする短い棒を握って、嫌な感じの目をした。
「セティ、後ろっ」
叫んだ僕の声で、セティが振り返って後ろの奴をやっつける。蹴飛ばして棒でどんと突いたら動かなくなった。ぐっと力を込めたセティが棒を抜くと、また赤い血が流れる。緑の葉っぱに赤い血がたくさん飛んで、変な臭いがした。
「イシス、ありがとうな」
助かったと笑ってくれるセティの顔を見つめて、僕はふにゃりと顔を崩した。安心しすぎて体も力が抜けちゃう。抱っこしたままのセティの背中や腕を手で撫でて確認した。
「ん?」
「セティは痛くない?」
「なんともない。イシスが教えてくれたからだ」
優しく撫でる手が嬉しくて、自分から頭をこすりつけた。セティが無事でよかった。
「朝はパンと飲み物だけだ。ごめんな」
「ううん。美味しいから平気」
僕がスープを好きだから、セティはごめんねって言ったんだ。でも朝は忙しいし、すぐに歩く準備しないといけない。時間がかかるスープを作るのは無理だもん。
「セティと食べると美味しい」
硬いパンでも、噛むのが大変なお肉でも、セティが一緒だと美味しい。手をよく洗ってから受け取ると、黒いパンに野菜と薄い肉が挟まってた。かいでみると、黒いパンは甘い匂いがする。セティの膝に乗った僕は、両手でパンをもって齧った。
真ん中に何か挟んだパンは、ちゃんと持たないと中の野菜とか落ちちゃう。注意しながら齧ったらパンは柔らかかった。野菜もお肉も美味しい。にこにこ笑う。食べてるときに口を開けて話すと、全部零れちゃうから。でも美味しいって早く伝えたいから笑うんだ。
ぐりぐりと頭を撫でてくれるセティも、同じ物を食べていた。一緒の物を一緒に食べるの、すごくドキドキする。嬉しくて「うわぁああ」って言いたくなる。甘いジュースも貰って、残さず全部食べられた。
テントを一緒に片付けて、セティが荷物をしまったら準備完了だ。僕は靴を履いて、上着を着て待っていた。手を繋ぐ。これは外を歩く時のルールみたい。前に知らない人に捕まって怖かったから、セティと手を繋いでるとほっとできる。
「……別口、か」
呟いたセティが僕を抱き上げた。歩いていくと思ったのに、どうしたんだろう。首をかしげて待つ僕の髪をセティが撫でた。
「首に手をまわして、絶対に離すな。約束だ」
「うん」
飛び出したのは黒い服の人が1人、また1人、もう1人……。セティの首に手をまわして力を入れ、離れないようにしがみ付く。この人達、僕とセティを離そうとしてる? そんなの嫌だ。
「その子供を渡せ」
「今度は喋るのか……まあ関係ないが」
セティが何かを取り出した。長い棒で、先にきらきらする三角がついてる。飛びかかってきた男をそれで突き飛ばしたら、ばっと赤い水が出た。血……あれは痛い証拠だ。でもセティがケガしてないからいい。
変な声出した男が動かなくなり、次の男も棒の部分で叩かれた。倒れたところを突き刺そうとしたら、別の奴が邪魔する。睨みつけた僕と目が合った。驚いた顔をするなんて変なの。その男が驚いてる間に、セティの足が蹴飛ばした。
転がった男がぎらぎらする短い棒を握って、嫌な感じの目をした。
「セティ、後ろっ」
叫んだ僕の声で、セティが振り返って後ろの奴をやっつける。蹴飛ばして棒でどんと突いたら動かなくなった。ぐっと力を込めたセティが棒を抜くと、また赤い血が流れる。緑の葉っぱに赤い血がたくさん飛んで、変な臭いがした。
「イシス、ありがとうな」
助かったと笑ってくれるセティの顔を見つめて、僕はふにゃりと顔を崩した。安心しすぎて体も力が抜けちゃう。抱っこしたままのセティの背中や腕を手で撫でて確認した。
「ん?」
「セティは痛くない?」
「なんともない。イシスが教えてくれたからだ」
優しく撫でる手が嬉しくて、自分から頭をこすりつけた。セティが無事でよかった。
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