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47.大きくて広い世界
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口の中が痛くなる食べ物を齧って、びっくりした。驚きすぎて泣いた僕を、セティがキスで治してくれる。
「また外で泊まろうか」
移動するんだ。僕はたくさん歩けるようになったから、今度は手を繋いでいける。緑の葉っぱも、綺麗な花もセティと見たい。
「うん!」
宿に泊まるのも好き。お湯のお風呂に入れるし、近くにお店もいっぱいある。でもセティと2人きりになる外も好き。
手を繋いで、余ったご飯を鞄に入れる。代わりにセティが布の袋を取り出した。そこに絵本を入れて、僕の肩に掛ける。セティとお揃いの格好だった。
「気に入ったんだろ?」
くすくす笑うセティが嬉しくて、僕も笑う。手を繋いで歩くと、靴が小さな音を立てた。見上げるような門を出て、森の中へ続く道の端を歩く。大きな荷車が走っていき、セティは僕の歩く速度に合わせてゆっくり進んだ。
「遅い?」
「平気だよ。足が痛くなったら言うんだぞ。休憩するからね」
約束したからちゃんと知らせる。でもまだ平気なので、そのまま歩いた。途中で赤い花を摘んで、ずっと握っていたらくたりと元気がなくなった。セティが水筒の水で濡らした布を巻いたら元気になる。今度は布ごと握って歩いた。
「この辺で休もうか」
「僕、足痛くないよ」
「でもお腹が空いたんじゃないか?」
言われて、ご飯を食べてないと気づいた。上を見るとお日様は半分より向こうにあって、ご飯の時間を飛ばしたみたい。道から少し入った場所で石の上に座った。ぶらぶら足を揺らす僕の靴を脱がせ、セティが膝をついて確認する。
「よし、今夜は早めに休もう。明日は早いぞ」
「わかった!」
早く休む日は、セティがお鍋を使う日だ。大きなお鍋という黒い入れ物で、温かいスープを作ってくれる。楽しみだな。
わくわくしながら、渡された串焼きとパンを食べる。甘いジュースを飲んで、お腹がいっぱいになったら眠くなった。目を擦ると、セティが慌てて止める。
「傷になる。ほら、今日はおんぶだ」
「おんぶ……」
何、それ。首を傾げた僕に背中を見せて座るセティが、乗っかるように言った。えいっと背中に飛び付いたら、紐で僕をセティに縛る。手を離しても落ちない。すごいと喜んだ僕は、さらに驚いた。
「うわぁ!」
セティが立ち上がったのだ。僕、セティより高い。目の前にある赤毛に頬擦りして、セティの横から見つめた世界は広かった。僕が知ってる世界より、セティの高さは遠くまで大きい。
「花を落とさないようにな」
さっきの赤い花はだいぶ元気になってて、それを右手で持った。セティが歩くと僕は揺れるけど、花も一緒に揺れる。上にある木の緑が近くて、すっかり目が覚めてしまったみたい。
寝ないなら歩いた方がいいのかな? でもセティは降りろって言わないから。僕はそのままセティにくっついてた。温かくて大きい背中はとても安心で、やっぱり眠くなっちゃうね。
「また外で泊まろうか」
移動するんだ。僕はたくさん歩けるようになったから、今度は手を繋いでいける。緑の葉っぱも、綺麗な花もセティと見たい。
「うん!」
宿に泊まるのも好き。お湯のお風呂に入れるし、近くにお店もいっぱいある。でもセティと2人きりになる外も好き。
手を繋いで、余ったご飯を鞄に入れる。代わりにセティが布の袋を取り出した。そこに絵本を入れて、僕の肩に掛ける。セティとお揃いの格好だった。
「気に入ったんだろ?」
くすくす笑うセティが嬉しくて、僕も笑う。手を繋いで歩くと、靴が小さな音を立てた。見上げるような門を出て、森の中へ続く道の端を歩く。大きな荷車が走っていき、セティは僕の歩く速度に合わせてゆっくり進んだ。
「遅い?」
「平気だよ。足が痛くなったら言うんだぞ。休憩するからね」
約束したからちゃんと知らせる。でもまだ平気なので、そのまま歩いた。途中で赤い花を摘んで、ずっと握っていたらくたりと元気がなくなった。セティが水筒の水で濡らした布を巻いたら元気になる。今度は布ごと握って歩いた。
「この辺で休もうか」
「僕、足痛くないよ」
「でもお腹が空いたんじゃないか?」
言われて、ご飯を食べてないと気づいた。上を見るとお日様は半分より向こうにあって、ご飯の時間を飛ばしたみたい。道から少し入った場所で石の上に座った。ぶらぶら足を揺らす僕の靴を脱がせ、セティが膝をついて確認する。
「よし、今夜は早めに休もう。明日は早いぞ」
「わかった!」
早く休む日は、セティがお鍋を使う日だ。大きなお鍋という黒い入れ物で、温かいスープを作ってくれる。楽しみだな。
わくわくしながら、渡された串焼きとパンを食べる。甘いジュースを飲んで、お腹がいっぱいになったら眠くなった。目を擦ると、セティが慌てて止める。
「傷になる。ほら、今日はおんぶだ」
「おんぶ……」
何、それ。首を傾げた僕に背中を見せて座るセティが、乗っかるように言った。えいっと背中に飛び付いたら、紐で僕をセティに縛る。手を離しても落ちない。すごいと喜んだ僕は、さらに驚いた。
「うわぁ!」
セティが立ち上がったのだ。僕、セティより高い。目の前にある赤毛に頬擦りして、セティの横から見つめた世界は広かった。僕が知ってる世界より、セティの高さは遠くまで大きい。
「花を落とさないようにな」
さっきの赤い花はだいぶ元気になってて、それを右手で持った。セティが歩くと僕は揺れるけど、花も一緒に揺れる。上にある木の緑が近くて、すっかり目が覚めてしまったみたい。
寝ないなら歩いた方がいいのかな? でもセティは降りろって言わないから。僕はそのままセティにくっついてた。温かくて大きい背中はとても安心で、やっぱり眠くなっちゃうね。
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