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44.どっちの色もセティなら好き

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 神様のお家である教会の前で、セティは髪と目の色を変えた。黒髪は長くて艶々してて、紫の目はとても優しい。どっちの色でも僕はセティなら好き。顔は変わらないのに、色が違うと全然違う人みたいだ。

 ぱちんと指を鳴らして、セティは魔法を使った。後で教えてもらったけど、黒髪の時は魔法が楽に使えるみたい。神様の姿だから?

 階段の上に立って、中央の一番大きな扉を開く。触れる前に開いた扉を潜ると、また白い服の人がいっぱいいた。みんな床にぺたんと平らになって頭を下げる。変な格好だね、虫みたい。

 そう考えたら、抱っこしてるセティの肩が揺れた。振り仰いだらセティが笑ってる。何か楽しいことあったんだね。僕は笑ってるセティ大好きだよ。頬を首に寄せてすりすりと擦った。

 真っ直ぐに歩いて、前回と同じ椅子に座る。僕は膝の上にお座りした。昨日買ってもらった本をぎゅっと抱きしめる。黒と紫が使われた絵本だ。

「顔をあげよ」

「タイフォン様におかれましては」

「挨拶は無駄だ。見つかったのか」

「はっ、はい。実は……」

 何か説明を始めた。難しくて知らない言葉がいっぱいだ。セティは顔を顰めて時々質問した。

 僕に話す時と声も話し方も違う。なんか遠い人みたいだけど、僕に向ける眼差しは優しい。大丈夫、いつものセティだった。本を膝の上に置く。長い黒髪の人が一番上に描いてある。もしかしたらこれ、セティのこと?

 上を見上げてセティの顔を見て、絵本を近づけて眺める。似てるかな、同じじゃないけど。本物のセティのが綺麗。セティが右手を握って軽く振った。出てきたのは飴、昨日のジュースと同じ紫だ。

「あーん」

 口を開く。セティが僕にくれるのは当たり前だもん。疑いもなく口を開けて、ころんと中に甘い味が広がった。ジュースと同じ匂いだ。本を膝の上に戻し、また眺める。

 まだ1回も開いていない本を、セティが捲ってくれた。中も色がついていて、絵本の人は白い服を着ている。これ、嫌だな。

 すぐにセティがまた捲る。今度は青い服だった。今日のセティと同じだ。僕も同じ青……飴が口に入ってる時は噛まない、何か言わない。だから嬉しくても声を出さないよ。でも足が少しぶらぶら揺れた。

 頭の上で交わされた言葉はほとんど聞いていない。だって難しい話より、絵本のセティが素敵なんだ。えいって手を振る仕草して、何かたくさんの人をやっつけてる。武器もった人と戦うセティのお話みたいだった。

 夢中になってページを捲る。最初以外は、白い服が出てこなくてよかった。ほっとして最後まで眺めた本を閉じる。顔を上げると、白い服の人に睨まれた。

 怖い。どうしよう、怖くて動けない。本を握る手に力が入った。目を何かが覆う。温かい、セティの手? そのまま抱き寄せて向きを変え、僕が目を開けるとセティしか見えない。ほっとしてぎゅっと首に手を回した。

 後ろでばたばた音がして誰かが叫んでたけど、僕の耳はセティが覆っていた。だから僕が知ってるのは、温かいセティの体温だけ。

 セティが僕を捨てませんように。嫌いになりませんように。心の中で神様に祈った。
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