38 / 321
37.約束は歌を歌って指切り
しおりを挟む
四角い塊は、魚が入ってた。白い魚なんて初めて見た。そう言うと、外側は青っぽい色をしているんだと教えてもらった。中と外で色が違うのを驚いていたら、セティが例え話をした。
「オレの肌は少し黒い。わかるか?」
「うん」
「手を切ると赤いのが出る、生き物は中と外の色が違うんだ」
言われて少し考える。叩かれた時に肌の色が変になるのは、きっと中の色が出てきちゃったからだ。理解したと説明したら、セティが泣きそうな顔をする。なんでだろう?
「もう痛い思いさせないからな」
「……? うん」
指切りという約束を教えてもらった。歌を歌って手を離すと約束できる。簡単なのは前に聞いたけど、今日のは歌が長かった。きっとすごく大切な約束に使うんだね。
魚に黄色いさくさくを付けた食べ物は、手で食べてもいい。隣の芋も同じだった。でも肉はパンに挟んで食べる。パンは手で食べていい。ひとつずつ覚えた。
セティが教えてくれるのは、世の中の人が知ってることみたい。僕は神殿にいたから知らなかったけど、周りの人を見て覚えるよりセティの声で聞きたかった。ひとつ覚えると、セティが褒めてくれる。頭を撫でてくれるのが嬉しかった。
「美味しいか?」
「おいしい」
コップに入った黄色い液体をもらう。なんだろうこれ、くんと匂えば果物みたいだった。柑橘だっけ? 酸っぱい甘い匂いに中を覗き込む。濁っていたが、セティが口をつけて「大丈夫」と教えてくれたので飲んだ。
「う……っ、果物の味!」
「そうだろ。果物をぎゅっと絞ったら、中身がこれだ。ジュースっていう。たくさん買って瓶で持っていこうな」
旅に持っていくと言われて、頬が緩んだ。なくなるのが勿体無くて、ゆっくり口の中に入れる。薄くじわっと味が広がって、それを喉の奥へ運ぶまで舌で混ぜた。美味しい。こんなの初めて飲んだ。
「イシスはもっとたくさん食べて、太って大きくならないとな」
セティは時々分からないことを言う。僕が太ったら神様に嫌われるって聞いた。大きくなったら捨てられるって言われた。でも神様なのにセティは僕を大きく太らせたいみたい。
「あんな奴らの言葉を聞く必要はない。オレの言葉だけ信じろ。わかったか?」
「うん。約束」
また長い歌を歌って約束した。セティの指が離れるのが少し寂しいけど、ご飯をお腹が苦しくなるまで食べた。前はいつもお腹空いてたけど、いっぱいになり過ぎても苦しいんだね。不思議だな。
屋台についた灯りが眩しく感じて、上を見ると夜だった。黒っぽい空にキラキラしている星、あれは絵本で見たよ。僕が知ってる形と少し違うし、大きさが小さいけど……絵本より数がたくさんで眩しい。
「ふーん、探す気はあるんだな」
ぽつりとセティが何か呟いた。でもすぐに何でもないと笑う。セティがそう言うならいいよ。ジュースの最後を飲んだところで、新しいジュースを入れてくれた。
「今日はこれでおしまい。冷たいものをいっぱい飲むと腹が痛くなる」
「痛くなるのはやだ」
「ここまでは平気だ」
セティの言葉を信じて、ジュースに口をつける。今度は違う味がする。すっきりしてて少し酸っぱいかな。でも甘い。色も白っぽかった。
「宿に帰って寝るぞ」
帰りは人が多いからと抱っこだった。僕はセティの首に片手を回して、ジュースの残りを飲む。後ろをずっとついてくる人、何だろう?
「オレの肌は少し黒い。わかるか?」
「うん」
「手を切ると赤いのが出る、生き物は中と外の色が違うんだ」
言われて少し考える。叩かれた時に肌の色が変になるのは、きっと中の色が出てきちゃったからだ。理解したと説明したら、セティが泣きそうな顔をする。なんでだろう?
「もう痛い思いさせないからな」
「……? うん」
指切りという約束を教えてもらった。歌を歌って手を離すと約束できる。簡単なのは前に聞いたけど、今日のは歌が長かった。きっとすごく大切な約束に使うんだね。
魚に黄色いさくさくを付けた食べ物は、手で食べてもいい。隣の芋も同じだった。でも肉はパンに挟んで食べる。パンは手で食べていい。ひとつずつ覚えた。
セティが教えてくれるのは、世の中の人が知ってることみたい。僕は神殿にいたから知らなかったけど、周りの人を見て覚えるよりセティの声で聞きたかった。ひとつ覚えると、セティが褒めてくれる。頭を撫でてくれるのが嬉しかった。
「美味しいか?」
「おいしい」
コップに入った黄色い液体をもらう。なんだろうこれ、くんと匂えば果物みたいだった。柑橘だっけ? 酸っぱい甘い匂いに中を覗き込む。濁っていたが、セティが口をつけて「大丈夫」と教えてくれたので飲んだ。
「う……っ、果物の味!」
「そうだろ。果物をぎゅっと絞ったら、中身がこれだ。ジュースっていう。たくさん買って瓶で持っていこうな」
旅に持っていくと言われて、頬が緩んだ。なくなるのが勿体無くて、ゆっくり口の中に入れる。薄くじわっと味が広がって、それを喉の奥へ運ぶまで舌で混ぜた。美味しい。こんなの初めて飲んだ。
「イシスはもっとたくさん食べて、太って大きくならないとな」
セティは時々分からないことを言う。僕が太ったら神様に嫌われるって聞いた。大きくなったら捨てられるって言われた。でも神様なのにセティは僕を大きく太らせたいみたい。
「あんな奴らの言葉を聞く必要はない。オレの言葉だけ信じろ。わかったか?」
「うん。約束」
また長い歌を歌って約束した。セティの指が離れるのが少し寂しいけど、ご飯をお腹が苦しくなるまで食べた。前はいつもお腹空いてたけど、いっぱいになり過ぎても苦しいんだね。不思議だな。
屋台についた灯りが眩しく感じて、上を見ると夜だった。黒っぽい空にキラキラしている星、あれは絵本で見たよ。僕が知ってる形と少し違うし、大きさが小さいけど……絵本より数がたくさんで眩しい。
「ふーん、探す気はあるんだな」
ぽつりとセティが何か呟いた。でもすぐに何でもないと笑う。セティがそう言うならいいよ。ジュースの最後を飲んだところで、新しいジュースを入れてくれた。
「今日はこれでおしまい。冷たいものをいっぱい飲むと腹が痛くなる」
「痛くなるのはやだ」
「ここまでは平気だ」
セティの言葉を信じて、ジュースに口をつける。今度は違う味がする。すっきりしてて少し酸っぱいかな。でも甘い。色も白っぽかった。
「宿に帰って寝るぞ」
帰りは人が多いからと抱っこだった。僕はセティの首に片手を回して、ジュースの残りを飲む。後ろをずっとついてくる人、何だろう?
93
お気に入りに追加
1,326
あなたにおすすめの小説
【完結】少年王が望むは…
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
シュミレ国―――北の山脈に背を守られ、南の海が恵みを運ぶ国。
15歳の少年王エリヤは即位したばかりだった。両親を暗殺された彼を支えるは、執政ウィリアム一人。他の誰も信頼しない少年王は、彼に心を寄せていく。
恋ほど薄情ではなく、愛と呼ぶには尊敬や崇拝の感情が強すぎる―――小さな我侭すら戸惑うエリヤを、ウィリアムは幸せに出来るのか?
【注意事項】BL、R15、キスシーンあり、性的描写なし
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう、カクヨム
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼投稿停止:2月18日投稿再開予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
【完結】帝王様は、表でも裏でも有名な飼い猫を溺愛する
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
離地暦201年――人類は地球を離れ、宇宙で新たな生活を始め200年近くが経過した。貧困の差が広がる地球を捨て、裕福な人々は宇宙へ進出していく。
狙撃手として裏で名を馳せたルーイは、地球での狙撃の帰りに公安に拘束された。逃走経路を疎かにした結果だ。表では一流モデルとして有名な青年が裏路地で保護される、滅多にない事態に公安は彼を疑うが……。
表も裏もひっくるめてルーイの『飼い主』である権力者リューアは公安からの問い合わせに対し、彼の保護と称した強制連行を指示する。
権力者一族の争いに巻き込まれるルーイと、ひたすらに彼に甘いリューアの愛の行方は?
【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう
【注意】※印は性的表現有ります
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完】三度目の死に戻りで、アーネスト・ストレリッツは生き残りを図る
112
BL
ダジュール王国の第一王子アーネストは既に二度、処刑されては、その三日前に戻るというのを繰り返している。三度目の今回こそ、処刑を免れたいと、見張りの兵士に声をかけると、その兵士も同じように三度目の人生を歩んでいた。
★本編で出てこない世界観
男同士でも結婚でき、子供を産めます。その為、血統が重視されています。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
【完結】僕はキミ専属の魔力付与能力者
みやこ嬢
BL
【2025/01/24 完結、ファンタジーBL】
リアンはウラガヌス伯爵家の養い子。魔力がないという理由で貴族教育を受けさせてもらえないまま18の成人を迎えた。伯爵家の兄妹に良いように使われてきたリアンにとって唯一安らげる場所は月に数度訪れる孤児院だけ。その孤児院でたまに会う友人『サイ』と一緒に子どもたちと遊んでいる間は嫌なことを全て忘れられた。
ある日、リアンに魔力付与能力があることが判明する。能力を見抜いた魔法省職員ドロテアがウラガヌス伯爵家にリアンの今後について話に行くが、何故か軟禁されてしまう。ウラガヌス伯爵はリアンの能力を利用して高位貴族に娘を嫁がせようと画策していた。
そして見合いの日、リアンは初めて孤児院以外の場所で友人『サイ』に出会う。彼はレイディエーレ侯爵家の跡取り息子サイラスだったのだ。明らかな身分の違いや彼を騙す片棒を担いだ負い目からサイラスを拒絶してしまうリアン。
「君とは対等な友人だと思っていた」
素直になれない魔力付与能力者リアンと、無自覚なままリアンをそばに置こうとするサイラス。両片想い状態の二人が様々な障害を乗り越えて幸せを掴むまでの物語です。
【独占欲強め侯爵家跡取り×ワケあり魔力付与能力者】
* * *
2024/11/15 一瞬ホトラン入ってました。感謝!
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる