32 / 321
31.何も言わない約束
しおりを挟む
大きな家は、扉が3つあった。目の前に階段があって、ひとつずつ両足を揃えて登っていたら、セティに抱っこされる。首にしがみついて見上げた。
「中で何も言わない、約束できるか?」
約束は絶対で、破ったらダメ。だから頷いた。たぶん、もう話さない方がいいよね。僕の考えが聞こえたのか、セティがにっこり笑ってくれた。
「少し怖いけど我慢しろ。心で呼んだら聞こえるから」
怖い? セティが怖い声になったのは、僕が袋に入れられた時だけ。だから僕に怖い声で話したことはない。平気、セティが僕を嫌いじゃなければ我慢できるよ。
首に回した手に力を入れて頷いた。セティがひとつ大きく息を吐き出した。ぶわっと冷たくなって……高さが違う。セティが大きくなったみたい。抱っこする腕も太くなったみたいで、座りやすくなった。
見つめる先で、セティの整った顔に何か絵が出た。頬とか目の周りに何か描いてあるの? 伸ばした手でゆっくりなぞるが、凸凹していない。手に色もつかなかった。赤と青の色が混じったりしながら、綺麗な模様になっている。
「きれぇ」
思わず声を出してしまい、慌てて手で押さえた。声はダメ、約束だから。そうしたら、セティがくすくす笑った。首に回した手に触れる髪が揺れる。
「後でいくらでも触らせてやる」
これも約束だ。笑いながらセティの頬に頬をくっつけた。足を止めていたセティが歩くと、後ろにひらりと揺れる服が見える。着替えたのかな。裾の長い服は黒かった。
セティの肩に顎を乗せて後ろを見ると、何人もの人が膝をついてお祈りしている。黒髪が長く足元まであって、びっくりした。
階段を登り終えると、中央の扉に手をかざす。僕も振り返って扉を見た。押しても開かないと思う。とにかく大きくて、セティの何倍もあった。重いはずの扉がすっと開いていく。後ろで悲鳴や祈りの声が響いて、首をすくめた。
あの人達、すごい驚いてる。自分が驚くのを忘れそう。開いた扉の中には、数人の白い服の人がいた。怖い、反射的にそう思ったけど……なぜか外の人みたいに膝をついて伏せる。僕に手をあげたりしないし、怒鳴ったり叫んだりもしない。姿もちゃんと見せていた。
変なの……ぐるりと家の中を見る。屋根が高くて、穴が開いてる? 外の光が入っていた。両側には綺麗な人がいっぱい描いてあって、絵本みたいだ。赤、青、緑、黄色……知っている色を数えていく。黒……紫! 僕とセティの色があった。
「荒ぶる神タイフォン様に栄光あれ」
「ご降臨に感謝申し上げます」
口々に何か難しいことを言う。セティは無視して真っ直ぐに中に入った。床には絨毯があって、正面にセティの絵がある。大きくて扉みたいな感じの板に、セティが描いてあった。その前に椅子がある。
3つしかない階段を登り、セティは無言のまま椅子に座る。この椅子、横に広くて3人くらい座れそう。僕はどうしたらいいのかな。膝に乗せられたまま、セティを見上げた。
「中で何も言わない、約束できるか?」
約束は絶対で、破ったらダメ。だから頷いた。たぶん、もう話さない方がいいよね。僕の考えが聞こえたのか、セティがにっこり笑ってくれた。
「少し怖いけど我慢しろ。心で呼んだら聞こえるから」
怖い? セティが怖い声になったのは、僕が袋に入れられた時だけ。だから僕に怖い声で話したことはない。平気、セティが僕を嫌いじゃなければ我慢できるよ。
首に回した手に力を入れて頷いた。セティがひとつ大きく息を吐き出した。ぶわっと冷たくなって……高さが違う。セティが大きくなったみたい。抱っこする腕も太くなったみたいで、座りやすくなった。
見つめる先で、セティの整った顔に何か絵が出た。頬とか目の周りに何か描いてあるの? 伸ばした手でゆっくりなぞるが、凸凹していない。手に色もつかなかった。赤と青の色が混じったりしながら、綺麗な模様になっている。
「きれぇ」
思わず声を出してしまい、慌てて手で押さえた。声はダメ、約束だから。そうしたら、セティがくすくす笑った。首に回した手に触れる髪が揺れる。
「後でいくらでも触らせてやる」
これも約束だ。笑いながらセティの頬に頬をくっつけた。足を止めていたセティが歩くと、後ろにひらりと揺れる服が見える。着替えたのかな。裾の長い服は黒かった。
セティの肩に顎を乗せて後ろを見ると、何人もの人が膝をついてお祈りしている。黒髪が長く足元まであって、びっくりした。
階段を登り終えると、中央の扉に手をかざす。僕も振り返って扉を見た。押しても開かないと思う。とにかく大きくて、セティの何倍もあった。重いはずの扉がすっと開いていく。後ろで悲鳴や祈りの声が響いて、首をすくめた。
あの人達、すごい驚いてる。自分が驚くのを忘れそう。開いた扉の中には、数人の白い服の人がいた。怖い、反射的にそう思ったけど……なぜか外の人みたいに膝をついて伏せる。僕に手をあげたりしないし、怒鳴ったり叫んだりもしない。姿もちゃんと見せていた。
変なの……ぐるりと家の中を見る。屋根が高くて、穴が開いてる? 外の光が入っていた。両側には綺麗な人がいっぱい描いてあって、絵本みたいだ。赤、青、緑、黄色……知っている色を数えていく。黒……紫! 僕とセティの色があった。
「荒ぶる神タイフォン様に栄光あれ」
「ご降臨に感謝申し上げます」
口々に何か難しいことを言う。セティは無視して真っ直ぐに中に入った。床には絨毯があって、正面にセティの絵がある。大きくて扉みたいな感じの板に、セティが描いてあった。その前に椅子がある。
3つしかない階段を登り、セティは無言のまま椅子に座る。この椅子、横に広くて3人くらい座れそう。僕はどうしたらいいのかな。膝に乗せられたまま、セティを見上げた。
262
あなたにおすすめの小説
身代わりの出来損ない令息ですが冷酷無比な次期公爵閣下に「離さない」と極上の愛で溶かされています~今更戻ってこいと言われてももう遅いです〜
たら昆布
BL
冷酷無比な死神公爵 × 虐げられた身代わり令息
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
もう殺されるのはゴメンなので婚約破棄します!
めがねあざらし
BL
婚約者に見向きもされないまま誘拐され、殺されたΩ・イライアス。
目覚めた彼は、侯爵家と婚約する“あの”直前に戻っていた。
二度と同じ運命はたどりたくない。
家族のために婚約は受け入れるが、なんとか相手に嫌われて破談を狙うことに決める。
だが目の前に現れた侯爵・アルバートは、前世とはまるで別人のように優しく、異様に距離が近くて――。
『偽物の番』だと捨てられた不憫な第三王子、隣国の冷徹皇帝に拾われて真実の愛を教え込まれる
レイ
BL
「出来損ない」と捨てられた場所は、私の居場所ではありませんでした。
ラングリス王国の第三王子・フィオーレは、王族の証である『聖種の紋様』が現れなかったことで「偽物の番」と罵られ、雪降る国境へと追放される。
死を覚悟した彼の前に現れたのは、隣国アイゼン帝国の「冷徹皇帝」ヴォルフラムだった。
婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした
水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」
公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。
婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。
しかし、それは新たな人生の始まりだった。
前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。
そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。
共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。
だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。
彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。
一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。
これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。
痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!
きっと、君は知らない
mahiro
BL
前世、というのだろうか。
俺は前、日本という国で暮らしていて、あの日は中学時代にお世話になった先輩の結婚式に参列していた。
大人になった先輩と綺麗な女性の幸せそうな姿に胸を痛めながら見つめていると二人の間に産まれたという女の子がひとりで車道に向かい歩いている姿が目に入った。
皆が主役の二人に夢中で子供の存在に気付いておらず、俺は慌ててその子供のもとへと向かった。
あと少しで追い付くというタイミングで大型の車がこちらに向かってくるのが見え、慌ててその子供の手を掴み、彼らのいる方へと突き飛ばした。
次の瞬間、俺は驚く先輩の目と合ったような気がするが、俺の意識はそこで途絶えてしまった。
次に目が覚めたのは見知らぬ世界で、聞いたことのない言葉が行き交っていた。
それから暫く様子を見ていたが、どうやら俺は異世界に転生したらしく………?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる