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29.僕と同じ色だ!

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 眩しくて目を開けたら、朝だった。目の前にあるセティの顔に手を伸ばそうとしたら、ぎゅっと抱っこされている。動けないけど、すごく嬉しくなった。

 僕おかしいのかな。動けないのが嬉しいんだ。セティの肌が触れて、息が温かくて、ぎゅっとする強い抱っこが好き。じっと見つめていると、セティの目が開いた。

 紫色――僕と同じ色だ。驚いた僕の顔に気付いたのか、瞬きしたらセティの目は青になっていた。でも絶対に紫だった。間違えてない。

「紫?」

 どう尋ねたらいいか分からない。だから首を傾げたら、苦笑いしたセティが身を起こした。抱っこした手が離れたのが寂しい。一緒に起き上がると、膝の上に向かい合わせに抱っこしてくれた。手を伸ばして、セティに抱きつく。

 僕からも抱っこだ。

「イシスに隠す必要はないか」

 綺麗なセティの顔は同じなのに、赤い髪が黒くなった。僕と同じ色だ。

「うわぁ! 一緒だ」

「目の色も同じだぞ」

 言われて、やっぱり紫色だった目を覗き込む。すごい、僕と同じだ。肌の色が僕は白いけど、セティは少し濃い色だった。それ以外は一緒の色なのだ。嬉しくて笑顔になった。

 今まで同じ色の人は見たことがない。白い服の人も、みんな違う色だったから。この色のせいで嫌われるんだと言われた。叩かれるのも、殴られるのも、鎖をつけられたのも色のせいだって。

 ずっと悪い色だと思ってたけど、セティと同じならいい。僕は一番いい色をもらったんだ。

「どうして違う色なの?」

 普段は違う色にしていた。赤い髪と青い目、それも綺麗で似合うけど、黒髪と紫の目の方が似合う。

「タイフォンを象徴する色だからな。人間の前では不都合が多い」

 不都合、って何だろう。象徴する色? よく分からない。

「いけないの?」

「いや。オレが人じゃなくて神だとバレるだろ?」

 笑って抱きしめてくれる。強く力を込めたセティの腕が嬉しくて、僕もセティの背中に回した手をぎゅっとした。手が届かないくらいセティは大きくて、優しい。

「セティは神様なの? タイフォン様?」

「そうだ」

 嘘だと思わない。だって神様に祈ったらセティが来てくれた。あれはセティに直接聞こえてたんだね。だから神様にお願いすれば、セティが叶えてくれる。

「誰にも言うな、オレとお前の秘密だ」

 秘密は内緒、誰にも言わない。頷いた。約束は絶対だから、約束してもいい。

「今日は神殿に行く。だから色はこのままだ」

 驚いてセティの顔を見上げると、瞼と頬、唇にもキスしてくれた。目が零れ落ちそうだと言われたけど、大きく開くと落ちちゃうなら気をつける。

「食事は後回しだから、飴でも舐めておけ」

 口に大きな飴を入れられて頭を撫でてもらう。セティが見えない部屋から服を出して渡すので、袖を通して。あれ? 今気づいたけど、僕……裸で寝てたの?
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