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17.初めての野宿
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ざらざらした髭の人間が短く声を出すと、前の人が出て行った。この後が僕とセティだ。見上げると笑って撫でてくれた。
セティが何かを見せる。ちらっとこちらを見て、何か言った。知らない言葉だ。助けを求める僕を、セティが抱っこした。両手を伸ばされて、嬉しくて首に抱きつく。
買ってもらった靴で歩くのも好きだけど、セティとくっつく抱っこはもっと好きだ。へにゃりと顔が崩れる。ぐりぐりと首に頬を押し付けていると、セティは歩き出した。
向き合って抱っこされたので、僕はセティの肩越しに遠ざかる壁を見つめる。カランと音を立てた飴が小さくなって、歯を立てたら割れた。びっくりした途端に、また飲み込んでしまった。
「また飲んじゃったのか?」
くすくす笑うセティの声が楽しそうで、怒られてる感じじゃない。背中をぽんぽん叩く感触が気持ちよくて、眠くなった。あまり歩いてないけど、疲れたのかな。眠くなるのは、疲れた時だった……ぼんやりとした頭で、必死に覚えたことを引っ張り出す。
「寝てていいぞ」
隣を馬に乗った人が走って行った。足元に四角い石は敷いてないけど、平らになってて草がちょっとしかない。これが道だっけ。どこかへ繋がってるんだよね。教えてもらった言葉を並べて、何とか起きていようとする。
寝てしまうのがもったいない気がした。だって、洞窟出た後のこともよく覚えてない。葉っぱがいっぱいある場所をセティは歩いたはずなのに、僕は見ていなかった。今度は見たい。その一心で必死に目を擦るが、気づいたら眠ってたみたい。
「イシス、起きた?」
もぞもぞ動いたからか。撫でる動きに目を開けた。明るかった外は暗くなってて、神殿の中を思い出す。
ざわりと音がして上に顔を向けたら、葉っぱがいっぱい。大木に背中を預けて座るセティの膝の上だった。
「うん。ここ、泊まるとこ?」
覚えたての言葉で尋ねると、今日は野宿だと帰ってきた。宿じゃないところで寝るのを、野宿って言う。また新しいことを覚えた僕に、温かい水を渡した。
「飲んでおけ、ずっと寝てたからな」
寝たら飲むの? 不思議に思いながらも、セティが言うなら間違いないと口をつける。少しだけ甘い気がした。温かい水はお湯、覚えた言葉を忘れないために確認する。
ごくりと飲んで、喉が乾いていたのに気づいた。一気に飲んでしまってから、セティの分は? と顔を上げる。しかしセティがいなくて、慌てて立ち上がった。
「おう、ちょっと待ってろ。すぐにテント立てるから」
泣きそうになった僕に、少し先の布から声が掛かった。木に縛る形で布が引っ張られて屋根が出来る。ここで寝るの? 驚いて見つめる間に、手をぱんと叩いたセティが戻ってきた。
「よし! スープ作ってパン焼こう。食べたら寝るぞ」
全部知ってる言葉だ。うんと頷いたら、いい子だと頭を撫でられた。それから頬に手が触れて温かい。目を閉じると、キスをくれた。
後でって約束したの、今だったんだ。もっと欲しくてセティの唇に舌を入れた。甘いの欲しいし、キスは優しくて好き。舌を絡めたキスを終えると、セティは僕と手を繋いだ。
セティが何かを見せる。ちらっとこちらを見て、何か言った。知らない言葉だ。助けを求める僕を、セティが抱っこした。両手を伸ばされて、嬉しくて首に抱きつく。
買ってもらった靴で歩くのも好きだけど、セティとくっつく抱っこはもっと好きだ。へにゃりと顔が崩れる。ぐりぐりと首に頬を押し付けていると、セティは歩き出した。
向き合って抱っこされたので、僕はセティの肩越しに遠ざかる壁を見つめる。カランと音を立てた飴が小さくなって、歯を立てたら割れた。びっくりした途端に、また飲み込んでしまった。
「また飲んじゃったのか?」
くすくす笑うセティの声が楽しそうで、怒られてる感じじゃない。背中をぽんぽん叩く感触が気持ちよくて、眠くなった。あまり歩いてないけど、疲れたのかな。眠くなるのは、疲れた時だった……ぼんやりとした頭で、必死に覚えたことを引っ張り出す。
「寝てていいぞ」
隣を馬に乗った人が走って行った。足元に四角い石は敷いてないけど、平らになってて草がちょっとしかない。これが道だっけ。どこかへ繋がってるんだよね。教えてもらった言葉を並べて、何とか起きていようとする。
寝てしまうのがもったいない気がした。だって、洞窟出た後のこともよく覚えてない。葉っぱがいっぱいある場所をセティは歩いたはずなのに、僕は見ていなかった。今度は見たい。その一心で必死に目を擦るが、気づいたら眠ってたみたい。
「イシス、起きた?」
もぞもぞ動いたからか。撫でる動きに目を開けた。明るかった外は暗くなってて、神殿の中を思い出す。
ざわりと音がして上に顔を向けたら、葉っぱがいっぱい。大木に背中を預けて座るセティの膝の上だった。
「うん。ここ、泊まるとこ?」
覚えたての言葉で尋ねると、今日は野宿だと帰ってきた。宿じゃないところで寝るのを、野宿って言う。また新しいことを覚えた僕に、温かい水を渡した。
「飲んでおけ、ずっと寝てたからな」
寝たら飲むの? 不思議に思いながらも、セティが言うなら間違いないと口をつける。少しだけ甘い気がした。温かい水はお湯、覚えた言葉を忘れないために確認する。
ごくりと飲んで、喉が乾いていたのに気づいた。一気に飲んでしまってから、セティの分は? と顔を上げる。しかしセティがいなくて、慌てて立ち上がった。
「おう、ちょっと待ってろ。すぐにテント立てるから」
泣きそうになった僕に、少し先の布から声が掛かった。木に縛る形で布が引っ張られて屋根が出来る。ここで寝るの? 驚いて見つめる間に、手をぱんと叩いたセティが戻ってきた。
「よし! スープ作ってパン焼こう。食べたら寝るぞ」
全部知ってる言葉だ。うんと頷いたら、いい子だと頭を撫でられた。それから頬に手が触れて温かい。目を閉じると、キスをくれた。
後でって約束したの、今だったんだ。もっと欲しくてセティの唇に舌を入れた。甘いの欲しいし、キスは優しくて好き。舌を絡めたキスを終えると、セティは僕と手を繋いだ。
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