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01.僕はずっと待ってる ※微
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「ん……っ、あ、やっ」
零れた声が甘くて、涙がこぼれた。身体を穿つ杭に似た彼の欲望が、深く……誰も知らない場所まで暴くのが嬉しい。このまま死ねたら最高なのに。そんな願いを口に出すことはなく、ただ必死で彼の背中に回した手で、逃げられないようにしがみつくだけ。
「やぁ……っ! ああ、ぁ」
奥の奥まで突き立てられる欲を受け止めて、意識が遠のいていく。温かく腹の底を満たす彼の想いと……汗で滑る肌の感触がすべてだった。
――ずっとこうしていたい僕の想いは、彼に届いたかな。
じゃらりと鎖の音が響いた。薄暗い洞窟は豪華な部屋になっている。神殿と呼ぶそうで、人間が何度も口にした言葉だ。住むところやご飯は不自由しないから贅沢な願いだけど、本当に欲しい物は手に入らなかった。誰か優しく撫でてくれないかな。少しでいいんだけど。
目が覚めても誰もいない。ずっと一人のまま……物を持ってくる人間はすぐに逃げてしまうし、僕はこの神殿から出られなかった。地下の薄暗い神殿しか知らずに育った僕は、今日もまた絵本を開く。文字は読めないけれど、たくさんの絵は色鮮やかだった。
出来るだけたくさん絵本が欲しい。そう告げた声に、柱の陰から承知したと返される。でも人間は姿を見せてくれなかった。いつもそう……慣れてしまったけど、一人はやはり嫌いだ。
絵本には青い空と白い雲、赤い太陽が必ず描かれていた。それからいろんな花や動物……自分の姿を見たことがないけど、僕はどれに似ているんだろう。想像しながら絵本を眺めるのは楽しかった。
長い髪を引っ張ってみる。黒くて細いのがいっぱいあるけど、絵本の中に描かれた人はみんな違う色だった。黒いから僕はここにいるのかな。ぼんやりと神殿の天井を見上げ、やはり黒いから嫌われるのかと納得した。
前に「黒い」と驚いた人間がいたから、きっと色が悪いんだ。
天井の隅が黒く見えるけど、あれは怖い。きっと僕の姿も怖いんだ。人間に無理やり近づこうとしないよう、この鎖もそれでつけられたのかも。そう考えてあまり迷惑を掛けないようにしようと決めた。だって嫌われるのはしょうがなくても、もっと嫌われるのは防げるかもしれない。
絵本をいつも広げているせいか、最近は本が増えた。綺麗な服の人が描かれていたり、柔らかそうな白い動物が描かれた本を開いて、いろいろと想像する。触って毛布みたいだったら嬉しい。ぎゅっとしたら温かい? それとも冷たいのかな。
誰も教えてくれる人がいないから、文字はわからない。でもたくさんある文字の種類は覚えた。読み方も意味もわからない。少し肌寒い気がして、ベッドへ向かった。いつも僕が本を読んでいる間に、こっそり人間が直してくれる。
一度隠れてて飛びつこうとしたせいで、今は部屋を移動すると鎖を短くされてしまう。隣の部屋に移動できないようになった。僕が悪いことをしたんだと諦めた。手を伸ばしちゃいけない。
用意されたベッドに寝ころび、お気に入りの絵本を引っ張り出した。これはいつも手の届く場所に置いていて、もうバラバラになっている。一枚ずつ確認するように開いて、また閉じた。
お話の内容はわからないけど、寂しそうな絵の人を別の人の腕が閉じ込める絵は僕の希望だ。いつか、誰でもいい。絵本の人みたいに僕に手を伸ばす人がいたらいいのに。
いつか……そう、僕はそれまで長くても待つから。
零れた声が甘くて、涙がこぼれた。身体を穿つ杭に似た彼の欲望が、深く……誰も知らない場所まで暴くのが嬉しい。このまま死ねたら最高なのに。そんな願いを口に出すことはなく、ただ必死で彼の背中に回した手で、逃げられないようにしがみつくだけ。
「やぁ……っ! ああ、ぁ」
奥の奥まで突き立てられる欲を受け止めて、意識が遠のいていく。温かく腹の底を満たす彼の想いと……汗で滑る肌の感触がすべてだった。
――ずっとこうしていたい僕の想いは、彼に届いたかな。
じゃらりと鎖の音が響いた。薄暗い洞窟は豪華な部屋になっている。神殿と呼ぶそうで、人間が何度も口にした言葉だ。住むところやご飯は不自由しないから贅沢な願いだけど、本当に欲しい物は手に入らなかった。誰か優しく撫でてくれないかな。少しでいいんだけど。
目が覚めても誰もいない。ずっと一人のまま……物を持ってくる人間はすぐに逃げてしまうし、僕はこの神殿から出られなかった。地下の薄暗い神殿しか知らずに育った僕は、今日もまた絵本を開く。文字は読めないけれど、たくさんの絵は色鮮やかだった。
出来るだけたくさん絵本が欲しい。そう告げた声に、柱の陰から承知したと返される。でも人間は姿を見せてくれなかった。いつもそう……慣れてしまったけど、一人はやはり嫌いだ。
絵本には青い空と白い雲、赤い太陽が必ず描かれていた。それからいろんな花や動物……自分の姿を見たことがないけど、僕はどれに似ているんだろう。想像しながら絵本を眺めるのは楽しかった。
長い髪を引っ張ってみる。黒くて細いのがいっぱいあるけど、絵本の中に描かれた人はみんな違う色だった。黒いから僕はここにいるのかな。ぼんやりと神殿の天井を見上げ、やはり黒いから嫌われるのかと納得した。
前に「黒い」と驚いた人間がいたから、きっと色が悪いんだ。
天井の隅が黒く見えるけど、あれは怖い。きっと僕の姿も怖いんだ。人間に無理やり近づこうとしないよう、この鎖もそれでつけられたのかも。そう考えてあまり迷惑を掛けないようにしようと決めた。だって嫌われるのはしょうがなくても、もっと嫌われるのは防げるかもしれない。
絵本をいつも広げているせいか、最近は本が増えた。綺麗な服の人が描かれていたり、柔らかそうな白い動物が描かれた本を開いて、いろいろと想像する。触って毛布みたいだったら嬉しい。ぎゅっとしたら温かい? それとも冷たいのかな。
誰も教えてくれる人がいないから、文字はわからない。でもたくさんある文字の種類は覚えた。読み方も意味もわからない。少し肌寒い気がして、ベッドへ向かった。いつも僕が本を読んでいる間に、こっそり人間が直してくれる。
一度隠れてて飛びつこうとしたせいで、今は部屋を移動すると鎖を短くされてしまう。隣の部屋に移動できないようになった。僕が悪いことをしたんだと諦めた。手を伸ばしちゃいけない。
用意されたベッドに寝ころび、お気に入りの絵本を引っ張り出した。これはいつも手の届く場所に置いていて、もうバラバラになっている。一枚ずつ確認するように開いて、また閉じた。
お話の内容はわからないけど、寂しそうな絵の人を別の人の腕が閉じ込める絵は僕の希望だ。いつか、誰でもいい。絵本の人みたいに僕に手を伸ばす人がいたらいいのに。
いつか……そう、僕はそれまで長くても待つから。
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