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38.女ったらしと忠実な男の差
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美味しくご飯を食べて別れた。アランを連れて帰るレイモンドに手を振る。尻尾を振り返された。
「アランが同じ世界出身じゃなくて残念だったね」
慰めるようなブレンダの言葉に、アイカは首を横に振った。
「いいの。女にだらしない人間は嫌いだもん」
「はぁ、そんなもんかのぉ。子孫を残す意味では有望じゃぞ。ただ、おなごに好かれねば無駄か」
積極性は認めるけど、女性に嫌われたら意味がない。トムソンの呟きに、ブレンダは肩をすくめた。実際のところ、誰にでもいい顔をして言い寄る男を好きな女は、少ないんじゃないかな。人間の感覚だけでなく、獣人でも同じようだ。
「そういえば、この世界の獣人って基本的に獣姿だよね。人化しないの?」
「ひとか?」
聞き慣れない単語に首を傾げるブレンダの仕草は、普段ならアイカが行う。逆になった光景に、トムソンも加わった。同じように首を傾げる。
「あのね。こういう感じ」
多少歪だが、人の姿を描いて耳や爪をつける。あと尻尾や手首から先が獣もありだっけ? 漫画やアニメの知識を総動員して、アイカは自分が知る獣人の姿を伝えた。じっくり眺めた後、二人は顔を見合わせる。
「これが、ひとか……」
「うん。誰か知らない?」
「この世界にはおらん」
そっか、ウサ耳のお姉さんとかいないんだね。確かに出会う獣人は、すべて獣の二足歩行だった。獣化と呼べるか分からないが、四つ足で走る種族もいる。トムソンとか。
アイカは考えを纏めて、近くにいたブランを抱き上げた。白い毛皮を撫でながら、「もふもふの世界も悪くないか」と笑う。
「どうしたんだい」
いきなり笑ったアイカに、ブレンダが不思議そうな顔をした。自分が知る「獣人」は人化していることを説明する。
「へぇ、アイカの世界にも獣人がいたんだね」
「あ、いや……いないんだけど。空想の存在というか、想像の産物? 絵本の主人公みたいな感じ」
アニメを伝える方が苦労してしまい、伝え終わるまでに時間がかかった。ブランは飛び降りて、毛繕いしてから家に駆け込む。見送ったタイミングで聞こえた羽音に、空を仰ぐと、レイモンドがいた。
「あれぇ? どうしたのぉ!?」
大声でアイカが話すも、羽音で聞こえないようだ。着地する様子を見せたので、慌てて離れた。ヘリコプターの爆風ほどではないものの、服の裾や帽子があれば飛ぶくらいの強風が吹く。
「すまん、アランが不快な思いをさせなかったか……心配になってな」
戻ってきてしまった。そう笑うレイモンドに、アイカはじわりと胸が温かくなる。だが、ブレンダは違う懸念を口にした。
「何やってんだい、日が暮れる前に帰りな! あんたらは夜飛べないんだからね!!」
大声で叱られ、暮れ掛けた空に慌てて舞い上がる。ありがとうと手を振って、アイカはにやける頬を両手で包んだ。
「ふむ、ぎりぎり合格じゃな」
「及第点ってところだね」
アイカに聞こえないよう、トムソンとブレンダは呟く。やや辛めの評価を受けたレイモンドは、すごい速さで遠ざる。影が見えなくなるまで、アイカは見送った。
「アランが同じ世界出身じゃなくて残念だったね」
慰めるようなブレンダの言葉に、アイカは首を横に振った。
「いいの。女にだらしない人間は嫌いだもん」
「はぁ、そんなもんかのぉ。子孫を残す意味では有望じゃぞ。ただ、おなごに好かれねば無駄か」
積極性は認めるけど、女性に嫌われたら意味がない。トムソンの呟きに、ブレンダは肩をすくめた。実際のところ、誰にでもいい顔をして言い寄る男を好きな女は、少ないんじゃないかな。人間の感覚だけでなく、獣人でも同じようだ。
「そういえば、この世界の獣人って基本的に獣姿だよね。人化しないの?」
「ひとか?」
聞き慣れない単語に首を傾げるブレンダの仕草は、普段ならアイカが行う。逆になった光景に、トムソンも加わった。同じように首を傾げる。
「あのね。こういう感じ」
多少歪だが、人の姿を描いて耳や爪をつける。あと尻尾や手首から先が獣もありだっけ? 漫画やアニメの知識を総動員して、アイカは自分が知る獣人の姿を伝えた。じっくり眺めた後、二人は顔を見合わせる。
「これが、ひとか……」
「うん。誰か知らない?」
「この世界にはおらん」
そっか、ウサ耳のお姉さんとかいないんだね。確かに出会う獣人は、すべて獣の二足歩行だった。獣化と呼べるか分からないが、四つ足で走る種族もいる。トムソンとか。
アイカは考えを纏めて、近くにいたブランを抱き上げた。白い毛皮を撫でながら、「もふもふの世界も悪くないか」と笑う。
「どうしたんだい」
いきなり笑ったアイカに、ブレンダが不思議そうな顔をした。自分が知る「獣人」は人化していることを説明する。
「へぇ、アイカの世界にも獣人がいたんだね」
「あ、いや……いないんだけど。空想の存在というか、想像の産物? 絵本の主人公みたいな感じ」
アニメを伝える方が苦労してしまい、伝え終わるまでに時間がかかった。ブランは飛び降りて、毛繕いしてから家に駆け込む。見送ったタイミングで聞こえた羽音に、空を仰ぐと、レイモンドがいた。
「あれぇ? どうしたのぉ!?」
大声でアイカが話すも、羽音で聞こえないようだ。着地する様子を見せたので、慌てて離れた。ヘリコプターの爆風ほどではないものの、服の裾や帽子があれば飛ぶくらいの強風が吹く。
「すまん、アランが不快な思いをさせなかったか……心配になってな」
戻ってきてしまった。そう笑うレイモンドに、アイカはじわりと胸が温かくなる。だが、ブレンダは違う懸念を口にした。
「何やってんだい、日が暮れる前に帰りな! あんたらは夜飛べないんだからね!!」
大声で叱られ、暮れ掛けた空に慌てて舞い上がる。ありがとうと手を振って、アイカはにやける頬を両手で包んだ。
「ふむ、ぎりぎり合格じゃな」
「及第点ってところだね」
アイカに聞こえないよう、トムソンとブレンダは呟く。やや辛めの評価を受けたレイモンドは、すごい速さで遠ざる。影が見えなくなるまで、アイカは見送った。
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