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第二十二章 世界の色が変わる瞬間

第107話 龍とドラゴンは別種族(1)

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「よしよし、ちゃんと帰してやるからな」

 可哀そうになって声をかけるルリアージェだが、リシュアは首をかしげる。

「コレクションなさるのでは?」

「しない!」

 彼らの毛皮コレクションを知るだけに、ドラゴン皮を集めようとするんじゃないかと怖い。そんなの要らないし、王族のようにバッグや防具を作る予定もない。聞き間違いや解釈違いが起きないよう、端的に断った。

 魔性とは生活環境や思考の違いから、逆方向へ暴走することがある。経験があるため、重ねて否定することにした。

「ドラゴンは殺さない。傷つけない。コレクションもしない」

「やだわ、リアったら。あたくしは非道なことしないわよ」

 きょとんとしたリシュアに言い聞かせるルリアージェに抱っこされ、大きな尻尾を振りながらライラが笑う。しかし彼女の笑顔は、次のリシュアの言葉で凍り付いた。

「……では、どうしましょうか」

 殺さず、傷つけずに処分する方法を考え始めるリシュアに、ジルが答えを提示した。

「簡単だ。逃がせばいい」

「さすがはジル様。リア様のお望みは誰よりご存じなのですね」

 ふふんと得意げな顔するジルは、手放しの誉め言葉に満更でもないらしい。しかしライラは「そんな話じゃなかったわ」とぼやいた。

「くひゃぁ……ひやぁ」

 雷という武器を持つくせに情けない声で命乞いするドラゴンは、金色の美しい鱗を持っていた。初めて見るドラゴンに近づく無防備なルリアージェに、ライラが護身の結界を張る。その外にジルが別の結界を重ねた。

 どちらか片方でもドラゴンの全力ブレスに対抗できる。守られている感覚に「ありがとう」と礼を告げて、そっと手を伸ばした。

「ひ、ひぃい、きゅあぁ」

 怯えるドラゴンの必死な姿に、ルリアージェは触るのを諦める。これ以上脅かしたら、逃がした途端にパニックになりそうだ。残念そうなルリアージェが手を下したのを見て、ドラゴンは金の瞳をぱちくりと瞬かせた。それから彼女の腕をじっとみる。

「くひゃ……くひぃ」

 先ほどと鳴き声が違うと首をかしげると、ドラゴンの視線を追って……腕輪を揺すって見せた。目を輝かせる様子から、どうやら水晶にいるジェンに反応したのだと気づく。

「ジェン、おいで」

 囁くようにして開放する。腕に絡みつく青白い炎龍に、ライラがすとんと地面に降り立った。かりかりと結界の表面を掻いて興味を示すドラゴンへ、ジェンを差し出す。ライラが許可し、ジルが肩を竦めて許可したため、ジェンが外へするすると泳ぎ出た。空中を泳ぐ形で金のドラゴンと向き合う。
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