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第二十二章 世界の色が変わる瞬間
第106話 ドラゴンは臆病だったらしく(1)
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雪の中に突然飛び出したドラゴンによって、吹雪が遮られた。見上げる大きさがあるが、最初に見た木竜の半分ほどしかない。しかし背を反らした堂々とした態度で、実サイズより大きく感じられた。
銀の鱗は吹雪の中に溶け込みそうな色をしている。輝く眩しい銀ではなく、燻した落ち着いた色彩だった。目の色が薄い水色なので景色に溶け込んでしまう。何も知らずに雪山で出会ったら、気づく前に叩き潰されること請け合いだ。
「角があるのだな」
「ん? そういやこの大陸の魔物は角ありが多いかも知れないな」
あまり考えたことがなかったらしい。言われて考え込んでいる。木竜は怯えて抱えた頭の上に小さなこぶのような物が乗っていたが、あれも角だった可能性が高い。
「お前たちは本当に興味がなかったのか」
ドラゴンは巨大で強い生き物だ。人族には国を滅ぼされかねない危険な魔物だが、上位魔性から見れば大きなトカゲ扱いのようだ。
雪竜は立ち止まっているが、ぎこちなく身体を伏せた。堂々と立ち塞がって見えたが、突然遭遇した強者相手に固まっただけ。やっと我に返って動いた様子だ。
「これは肉食なんだ。まあ吹雪と一緒に移動するから、草が生えてる場所に棲んでないし」
草食になる条件を満たさなかった雪竜は、気温が低く吹雪いた環境を好む。姿や音を吹雪に紛れさせて獲物を襲う類の肉食ドラゴンだった。忍び寄るのが得意なので、意外と臆病な一面も持ち合わせている。
「触れたら冷たいのか?」
「いや、意外と温かいぞ。この吹雪の中で生活できるくらいだ。体温が下がったら凍って死ぬ」
銀色で薄い感じがするから氷のように冷たいのかと思ったが、考えてみればジルの言う通りだ。変温動物の爬虫類と同じ生態なら、凍り付いて動けなくなってしまう。
「この調子だと全部のドラゴンが見られそうだ」
「リア様、水竜を探していたら氷竜を見つけましたわ」
転移してきたパウリーネが嬉しそうに報告する。褒めて欲しいと振られる尻尾の幻覚が見えるようだ。くすくす笑うと、彼女がひらりと右手を振った。
転移魔法陣が青白く輝く。その中に、半透明の白い鱗をもつドラゴンが現れた。見つけたドラゴンにマークをして、呼びつけたらしい。
吹雪く山中だったからいいが、火口で火竜を見ている時だったら大惨事だ。さすがに彼女も配慮したのか、先に周囲を確認してから転移させた。よく出来たと褒めて撫でると、ジルが羨ましそうに見ている。
こういうところは、本当に素直な子供なのだ。
銀の鱗は吹雪の中に溶け込みそうな色をしている。輝く眩しい銀ではなく、燻した落ち着いた色彩だった。目の色が薄い水色なので景色に溶け込んでしまう。何も知らずに雪山で出会ったら、気づく前に叩き潰されること請け合いだ。
「角があるのだな」
「ん? そういやこの大陸の魔物は角ありが多いかも知れないな」
あまり考えたことがなかったらしい。言われて考え込んでいる。木竜は怯えて抱えた頭の上に小さなこぶのような物が乗っていたが、あれも角だった可能性が高い。
「お前たちは本当に興味がなかったのか」
ドラゴンは巨大で強い生き物だ。人族には国を滅ぼされかねない危険な魔物だが、上位魔性から見れば大きなトカゲ扱いのようだ。
雪竜は立ち止まっているが、ぎこちなく身体を伏せた。堂々と立ち塞がって見えたが、突然遭遇した強者相手に固まっただけ。やっと我に返って動いた様子だ。
「これは肉食なんだ。まあ吹雪と一緒に移動するから、草が生えてる場所に棲んでないし」
草食になる条件を満たさなかった雪竜は、気温が低く吹雪いた環境を好む。姿や音を吹雪に紛れさせて獲物を襲う類の肉食ドラゴンだった。忍び寄るのが得意なので、意外と臆病な一面も持ち合わせている。
「触れたら冷たいのか?」
「いや、意外と温かいぞ。この吹雪の中で生活できるくらいだ。体温が下がったら凍って死ぬ」
銀色で薄い感じがするから氷のように冷たいのかと思ったが、考えてみればジルの言う通りだ。変温動物の爬虫類と同じ生態なら、凍り付いて動けなくなってしまう。
「この調子だと全部のドラゴンが見られそうだ」
「リア様、水竜を探していたら氷竜を見つけましたわ」
転移してきたパウリーネが嬉しそうに報告する。褒めて欲しいと振られる尻尾の幻覚が見えるようだ。くすくす笑うと、彼女がひらりと右手を振った。
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吹雪く山中だったからいいが、火口で火竜を見ている時だったら大惨事だ。さすがに彼女も配慮したのか、先に周囲を確認してから転移させた。よく出来たと褒めて撫でると、ジルが羨ましそうに見ている。
こういうところは、本当に素直な子供なのだ。
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