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第二十二章 世界の色が変わる瞬間
第99話 選択とは常に悩ましい(2)
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リシュアとリオネルがくすくすと笑う。
「リア様は子供みたいに純粋ですわ。好奇心が旺盛で、他者を気遣うことを当たり前にされるでしょう? 本当に優しい方なのだと思います」
パウリーネがうっとりと呟いた。
「……人がいない間に噂をするなんて」
照れて拗ねた口調が割り込んでくる。気づかないフリで褒めていたパウリーネが「あら」と言いながら振り返ると、リシュアやリオネルも頬を緩めた。
さっさと立ち上がったジルが近づき、部屋を仕切る扉を開ける。休んだはずの銀髪美女が、シンプルなワンピースで壁に張り付いていた。
「起きたなら、ちょうどいいから付き合ってよ」
ワンピースの肩に手を回し、くるりと回転する勢いを利用して膝下を持ち上げる。ルリアージェが驚いている間に、回った身体はジルの腕の中だった。お姫様抱っこされたルリアージェは不安定な姿勢に、思わずジルの首に腕を回す。
「び……っくり、した」
「落とすわけないでしょ。リア」
テーブルに肘をついたライラが、フルーツの果汁で作ったワインを取り出した。甘口で女性受けするワインをリシュアが受け取り、リオネルが用意したグラスに注いでいく。美しいピンクの液体に気づいたルリアージェが目を瞬かせた。
お酒はあまり強くないが、飲むこと自体は大好きなのだ。甘い香りはひどく魅力的だった。
「軽く飲みましょうよ。いいアイディアが出るかもしれないわ」
ジルは円卓の椅子を魔法陣で収納し、猫足のソファを代わりに置いた。寝そべるサイズのソファにリアを下ろし、当然のように隣に陣取る。
「リアはドラゴン探しとお祭り巡り、どっちを優先したい?」
「どちらでも対応できるよう、ご用意させていただいております」
リオネルがグラスを渡しながら微笑むと、チーズを並べるリシュアが皿を用意し、パウリーネが燻製の魚を薄くカットして並べた。
「お祭りを優先したい……時間はたくさんあるから」
ルリアージェは最後の言葉を幸せそうに噛み締めた。時間はたくさんある。彼や彼女らと一緒に過ごす楽しい時間は、もっと短いのだと諦めていた。人族の寿命なんて彼らにとって羽虫のごとき軽さで、すぐに終わってしまう。死後の彼らを心配するくらい、大切な存在だった。
だから寿命を気にせず過ごせるなら、好きなことを大好きな人達と楽しみたい。思う存分時間をかけて、人の身では経験できない時間を過ごしたいのだ。
言葉より雄弁に語るルリアージェの表情を読み取りながら、魔性達は嬉しそうに頷いてくれた。
「リア様は子供みたいに純粋ですわ。好奇心が旺盛で、他者を気遣うことを当たり前にされるでしょう? 本当に優しい方なのだと思います」
パウリーネがうっとりと呟いた。
「……人がいない間に噂をするなんて」
照れて拗ねた口調が割り込んでくる。気づかないフリで褒めていたパウリーネが「あら」と言いながら振り返ると、リシュアやリオネルも頬を緩めた。
さっさと立ち上がったジルが近づき、部屋を仕切る扉を開ける。休んだはずの銀髪美女が、シンプルなワンピースで壁に張り付いていた。
「起きたなら、ちょうどいいから付き合ってよ」
ワンピースの肩に手を回し、くるりと回転する勢いを利用して膝下を持ち上げる。ルリアージェが驚いている間に、回った身体はジルの腕の中だった。お姫様抱っこされたルリアージェは不安定な姿勢に、思わずジルの首に腕を回す。
「び……っくり、した」
「落とすわけないでしょ。リア」
テーブルに肘をついたライラが、フルーツの果汁で作ったワインを取り出した。甘口で女性受けするワインをリシュアが受け取り、リオネルが用意したグラスに注いでいく。美しいピンクの液体に気づいたルリアージェが目を瞬かせた。
お酒はあまり強くないが、飲むこと自体は大好きなのだ。甘い香りはひどく魅力的だった。
「軽く飲みましょうよ。いいアイディアが出るかもしれないわ」
ジルは円卓の椅子を魔法陣で収納し、猫足のソファを代わりに置いた。寝そべるサイズのソファにリアを下ろし、当然のように隣に陣取る。
「リアはドラゴン探しとお祭り巡り、どっちを優先したい?」
「どちらでも対応できるよう、ご用意させていただいております」
リオネルがグラスを渡しながら微笑むと、チーズを並べるリシュアが皿を用意し、パウリーネが燻製の魚を薄くカットして並べた。
「お祭りを優先したい……時間はたくさんあるから」
ルリアージェは最後の言葉を幸せそうに噛み締めた。時間はたくさんある。彼や彼女らと一緒に過ごす楽しい時間は、もっと短いのだと諦めていた。人族の寿命なんて彼らにとって羽虫のごとき軽さで、すぐに終わってしまう。死後の彼らを心配するくらい、大切な存在だった。
だから寿命を気にせず過ごせるなら、好きなことを大好きな人達と楽しみたい。思う存分時間をかけて、人の身では経験できない時間を過ごしたいのだ。
言葉より雄弁に語るルリアージェの表情を読み取りながら、魔性達は嬉しそうに頷いてくれた。
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