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第十八章 新たなる戦の火種
第73話 最上級の目利き(3)
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ルリアージェの目が肥えているかと尋ねられれば、魔性達は一斉に頷くだろう。これが宝飾品なら首を横に振るが、家具に関しては日常的にジルの城で最高級品に触れている。彼女の目利きは本物だった。
親方の突然の暴挙に、他の職人達がざわつく。しかし親方は意見を撤回する気はないらしい。驚いた様子のリシュアが首を横に振った。どうやら彼の目利きでも高額なのは一目瞭然のようで、呆れ顔だ。
「もらえない。これだけの傑作をタダで受け取るわけに行かない」
きっぱり言い切ったルリアージェに「強情な」と親方が舌打ちする。失礼な態度だが、ルリアージェは気にせず視線を合わせた。
「これはあなたの努力と技術が詰まった傑作品だ」
「ならば、その指輪と交換だ」
言われたルリアージェは、自分の指に嵌る赤い宝石の指輪に目をやる。安物ではないが、この家具とつりあう高額品とは思えなかった。
「しかし……」
「妻にやるから指輪を置いていけ」
不器用な親方の交渉に苦笑いしたルリアージェは、これ以上辞退すると失礼に当たると考えた。価値が分かると彼が判断した相手に、最高傑作の家具を託したいと願うなら、断り続けるのは逆に彼を怒らせてしまうだろう。
「こちらも奥方様にお渡ししてくれ」
紅石の指輪と対になっているネックレスも外そうと手をかける。しかし近づいたジルが先に手を伸ばし、器用に留め金を外してくれた。
「ありがとう。ジル」
「いいや、気にするな」
ジルにもらったネックレスと指輪を引き換えることへの感謝と詫びを滲ませた言葉に、間違うことなく受け取った答えを返す。慣れた様子でリオネルが、紺色のベルベット調のケースを差し出した。その上にネックレスと指輪を拭いてから並べる。
「お言葉に甘えて交換させていただく。このテーブルは一生、大切に扱うことを約束しよう」
「ふん……当然だ」
強気な口調だが、親方は自分の子供とも言える傑作品を眺め、ポケットから取り出した布で丁寧に埃を拭った。艶のある天板の傷がないか最終確認を済ませ、満足そうに頷く。その姿は、自らの手が生み出した作品への愛情が溢れていた。
「失礼する」
一言声をかけてから、ジルは魔道具の効果を装ってテーブルを収納した。大容量の収納用魔道具は大きな魔石や水晶を媒体とするため、持ち主が限られる。しかしサークレラの公爵家の肩書きがあれば、怪しまれることはなかった。
「城に戻ったら、すぐにベッドサイドに置こう」
浮かれたルリアージェのはしゃいだ声に、親方の表情がすこし和らいだ。
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「しかし……」
「妻にやるから指輪を置いていけ」
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「いいや、気にするな」
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