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第十七章 迷宮という封印
第64話 幻妖の森の所以(2)
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「触れてみて、リア」
「……いいのか?」
「ええ、あたくしの大切な主人だもの」
そっと受け取った石は予想に反して温かい。ひんやりしない程度の温度だが、なんだか嬉しくなって頬を緩めた。ルリアージェは両手で抱いた緑柱石を持ち上げ、目線の高さで声をかける。
「ルリアージェと言う。ライラの友人だ」
ライラの父母への挨拶感覚で撫でると、そっとライラの手に返した。彼女が植物の蕾の中心に宝石を戻したが、植物達はまだ緑柱石を抱こうとしない。苦笑いしたライラが宝石を拾い、無造作に服の内側へ放り込んだ。
「ライラ?」
「だって一緒にいたいなんて、親が子供みたいな主張するのよ」
くすくす笑いながら宝石がある胸元を撫でたライラは、言葉より優しい表情をしていた。どうやら両親は封印された状況であっても、娘の側を望んだらしい。
大地の精霊王が統べる対象は、宝石などの鉱石から植物や土も含まれる。ライラが精霊王の能力を受け継いでいるため、鉱石となった父母の意思を汲み取れたのだ。照れたように唇を噛むライラの頬に、ルリアージェは手を伸ばして触れた。
「素敵なご両親だ」
「ありがとう」
幻妖の森――迷い込んだら生きて出られないと恐怖された地だが、封印された『力あるモノ』は素敵な夫婦だった。色取り取りの動く植物が闊歩し、互いに日差しや栄養を奪い合う異形に守られていたのだ。
「エピソードは素晴らしいのに、どうしてこうなったのでしょうね」
リシュアが不思議そうに首をかしげた。幻妖の森はかなり古く、少なくともジルが封印される前から存在している。毒々しい植物が華やかに踊る地だと知られているが、その所以は広まらなかった。
人を避ける異形の噂を作り出すために、意図して隠したのか。
「動く植物はお父様の趣味よ、色はお母様の趣味だわ」
「うちもだが、変わった親だよな~」
ジルが感心したように唸る。大地の精霊王として踏み躙られる植物を哀れに思った男は、植物にも反撃のチャンスを与えようと動き回れる手足を与えた。その植物に毒々しい色を与えたのは、ちょっと変わり者の奥方だ。ある意味、似合いの2人だった。
「幻妖の森の中核であるご両親を連れ出して、この森は存続できるのか?」
もっともなルリアージェの問いに、反応は2つに分かれた。
「……いいのか?」
「ええ、あたくしの大切な主人だもの」
そっと受け取った石は予想に反して温かい。ひんやりしない程度の温度だが、なんだか嬉しくなって頬を緩めた。ルリアージェは両手で抱いた緑柱石を持ち上げ、目線の高さで声をかける。
「ルリアージェと言う。ライラの友人だ」
ライラの父母への挨拶感覚で撫でると、そっとライラの手に返した。彼女が植物の蕾の中心に宝石を戻したが、植物達はまだ緑柱石を抱こうとしない。苦笑いしたライラが宝石を拾い、無造作に服の内側へ放り込んだ。
「ライラ?」
「だって一緒にいたいなんて、親が子供みたいな主張するのよ」
くすくす笑いながら宝石がある胸元を撫でたライラは、言葉より優しい表情をしていた。どうやら両親は封印された状況であっても、娘の側を望んだらしい。
大地の精霊王が統べる対象は、宝石などの鉱石から植物や土も含まれる。ライラが精霊王の能力を受け継いでいるため、鉱石となった父母の意思を汲み取れたのだ。照れたように唇を噛むライラの頬に、ルリアージェは手を伸ばして触れた。
「素敵なご両親だ」
「ありがとう」
幻妖の森――迷い込んだら生きて出られないと恐怖された地だが、封印された『力あるモノ』は素敵な夫婦だった。色取り取りの動く植物が闊歩し、互いに日差しや栄養を奪い合う異形に守られていたのだ。
「エピソードは素晴らしいのに、どうしてこうなったのでしょうね」
リシュアが不思議そうに首をかしげた。幻妖の森はかなり古く、少なくともジルが封印される前から存在している。毒々しい植物が華やかに踊る地だと知られているが、その所以は広まらなかった。
人を避ける異形の噂を作り出すために、意図して隠したのか。
「動く植物はお父様の趣味よ、色はお母様の趣味だわ」
「うちもだが、変わった親だよな~」
ジルが感心したように唸る。大地の精霊王として踏み躙られる植物を哀れに思った男は、植物にも反撃のチャンスを与えようと動き回れる手足を与えた。その植物に毒々しい色を与えたのは、ちょっと変わり者の奥方だ。ある意味、似合いの2人だった。
「幻妖の森の中核であるご両親を連れ出して、この森は存続できるのか?」
もっともなルリアージェの問いに、反応は2つに分かれた。
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