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第十四章 リュジアン

第47話 国同士の身勝手な事情(3)

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 物騒な話を聞いた女性3人は、宿の部屋についた露天風呂に身を沈めていた。入浴は貴族のたしなみとされる反面、ほとんどの平民にとって贅沢品だ。そのため温泉が宿に引かれたり、街中に共同浴場があるリュジアンのような国は珍しかった。

 他国の貴族用に建てられた豪華な宿は、各部屋に温泉が設備されている。それだけ高額だが、他人に肌を見せなくて済む個室温泉は人気があった。

「王族というのは、物騒な考えをするのだな」

 ルリアージェが眉をひそめて、湯の表面を指先で揺らす。国が必要とする婚姻のためなら、相手の伴侶を死に至らしめたり排除する方法を平然と選べる。それはルリアージェにとって衝撃的だった。

 筆頭宮廷魔術師だったルリアージェが巻き込まれた政治的な騒動は、彼女をどちらの陣営に取り込むかと策略をめぐらせたり、足を引っ張って地位から引きずり下ろそうとする程度だ。命や身の危険は感じなかった。もっとも彼女が鈍いだけで、襲おうとした連中はいた。

 彼女が退けた政敵が聞いたら泣き出すだろう。ルリアージェは気付かぬまま、天然さを最大の武器として敵を退けていたのだから。

「人族は、そもそも汚い考えや手段に長けていますわ」

 パウリーネがにっこり笑って指摘する。彼女の薄い胸元に親近感を持つルリアージェは、湯に身を沈めて空を見上げた。露天風呂は小さな庭に作られており、空は美しい星空が広がっている。贅沢な景色を堪能しながら、額に浮かんだ汗を湯で流した。

「騙したり嘘を吐く方法は、魔族より人族の方が上手ね。そういう意味で、リシュアはよく1000年も我慢して乗り越えたわ」

 彼ならば実力行使で周辺国を制圧する方が楽だろう。しかし人族のルールに従い、面倒で苦手な外交をこなしてきた。今となっては得意と公言しているほどだ。

「ジルも狡猾だけれど、リアを騙すことはしないもの。言わないで誤魔化すことはあるかも知れないけれど、きっとリアは気付いてしまうし」

「そうだな。アイツの誤魔化しは分かりやすい」

 嘘はつかないが、言わずに誤魔化したり別の方向へルリアージェを誘導することはある。大抵は自分のためではなく、ルリアージェのことを考えて行動を起こすので叱りにくいのが難点だった。
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