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第十四章 リュジアン
第44話 偽公爵家の旅行計画(1)
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公爵家の別宅は、あっという間に体裁を整えられていく。ジルの城に収納されたはずの衣装も一部移動され、執事役であるリオネルはメガネを装着していた。聞いたところ彼の美学らしいが、よく理解できなかった。
「民族衣装がいいのかしら」
収納した空間から取り出した服を前に、ライラは真剣に悩んでいる。意外と凝り性の彼女は、きっちり『サークレラ国の公爵令嬢』を演じるつもりらしい。リシュアは洋装に着替え、隣でパウリーネもドレスに着替え終えていた。
「普段は洋装ですよ。民族衣装はお祭のときや儀式の時だけです」
元国王の発言に、ライラは淡い緑のワンピースを選んだ。子供の外見にあわせた、くるぶし丈の可愛らしい服だ。貴族令嬢はデビューまではくるぶし丈より裾が長いドレスは着用しない。これは公式の場でも適用されるため、今回はライラが裾の長いドレスを身に纏う機会はなさそうだった。
「ジル様はいいとして……リア様のドレスはもう少し華やかなほうがよろしいでしょう。伯爵家ならともかく、公爵家の奥方様ですから」
「そうだよな」
先ほどジルに言い聞かせてシンプルなロングワンピースを選んだが、どうやらレースがふんだんに使われたドレスに着替えさせられそうだ。公爵家の肩書きが重くのしかかる。
「伯爵家にしてもらえばよかった」
ぼやくルリアージェに、リオネルが苦笑いした。
「それは無理ですね。ジル様やリア様が人族風情に頭を下げなくていい状況を作るには、王族にして欲しかったくらいです」
「そうね。私達はともかく、偽装だとしても人族の地位が上だなんて許せないわ」
同意するパウリーネは紫のドレスに淡いグレーの毛皮を羽織っている。顔立ちがはっきりしているので、派手な色がよく似合った。
「パウリーネは原色でも着こなすのだな」
羨ましいと告げれば、青銀の髪をシニョンに巻いた美女は微笑んだ。水色の大きな瞳は細めると優しい色になる。白い指でリアの後れ毛を直しながら、ウィンクして見せた。
「私より、リア様の方がお似合いですわ。そうね……こちらの艶があるロイヤルブルーなんていいのではありませんか?」
「オレは紺がいいと思う」
「ジル様、毛皮を濃い色になさるなら、中は派手な色の方が映えます」
それぞれにお勧め衣装を手にとってアピールする彼や彼女らに、ルリアージェは覚悟を決めた。嫌がって無理に行動するより、公爵夫人になりきって演じた方が楽しいだろう。折角の祭なのだ。それに自分が追われていなければ、こうして正体を隠す必要もなかった。
「民族衣装がいいのかしら」
収納した空間から取り出した服を前に、ライラは真剣に悩んでいる。意外と凝り性の彼女は、きっちり『サークレラ国の公爵令嬢』を演じるつもりらしい。リシュアは洋装に着替え、隣でパウリーネもドレスに着替え終えていた。
「普段は洋装ですよ。民族衣装はお祭のときや儀式の時だけです」
元国王の発言に、ライラは淡い緑のワンピースを選んだ。子供の外見にあわせた、くるぶし丈の可愛らしい服だ。貴族令嬢はデビューまではくるぶし丈より裾が長いドレスは着用しない。これは公式の場でも適用されるため、今回はライラが裾の長いドレスを身に纏う機会はなさそうだった。
「ジル様はいいとして……リア様のドレスはもう少し華やかなほうがよろしいでしょう。伯爵家ならともかく、公爵家の奥方様ですから」
「そうだよな」
先ほどジルに言い聞かせてシンプルなロングワンピースを選んだが、どうやらレースがふんだんに使われたドレスに着替えさせられそうだ。公爵家の肩書きが重くのしかかる。
「伯爵家にしてもらえばよかった」
ぼやくルリアージェに、リオネルが苦笑いした。
「それは無理ですね。ジル様やリア様が人族風情に頭を下げなくていい状況を作るには、王族にして欲しかったくらいです」
「そうね。私達はともかく、偽装だとしても人族の地位が上だなんて許せないわ」
同意するパウリーネは紫のドレスに淡いグレーの毛皮を羽織っている。顔立ちがはっきりしているので、派手な色がよく似合った。
「パウリーネは原色でも着こなすのだな」
羨ましいと告げれば、青銀の髪をシニョンに巻いた美女は微笑んだ。水色の大きな瞳は細めると優しい色になる。白い指でリアの後れ毛を直しながら、ウィンクして見せた。
「私より、リア様の方がお似合いですわ。そうね……こちらの艶があるロイヤルブルーなんていいのではありませんか?」
「オレは紺がいいと思う」
「ジル様、毛皮を濃い色になさるなら、中は派手な色の方が映えます」
それぞれにお勧め衣装を手にとってアピールする彼や彼女らに、ルリアージェは覚悟を決めた。嫌がって無理に行動するより、公爵夫人になりきって演じた方が楽しいだろう。折角の祭なのだ。それに自分が追われていなければ、こうして正体を隠す必要もなかった。
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