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第十三章 龍炎と氷雷の舞
第39話 幻獣だらけの戦場(2)
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魔力を込めたジルの血が、色を変えて茶色い種になる。そこへさらに魔力を注ぎ続ければ、あっという間に芽吹いて蔦を伸ばし、ジルの左腕に絡みついた。そのまま可憐な白い花を咲かせる。ルリアージェが白い花を好むので、魔力を操作して色を変えて咲かせたのだ。
「植物なら、あたくしの得意分野ね」
大地の精霊王の娘はそう告げると、ジルの腕に絡みつく蔦へ触れて魔力を流した。強大な魔力を浴びて蔦を伸ばす薔薇に似た花は、ひとつの実をつけて熟し、二つに割れる。零れ落ちたのは新たな種ではなく、精霊のような小さな子供だった。
「可愛い」
喜ぶルリアージェが手を伸ばすと、素直に抱っこされた。抵抗する様子はない。
頭の上にいくつも白い花を咲かせた蔦の冠を載せ、真っ白なドレスを身に纏っている。髪は緑で、肌は薄い茶色だった。手は人と同じなのに、足は引っこ抜いた根のように複数に分かれている。
「これを龍やら虎の形で作るか、人型で作るかだ。今回は人に似せたが、眷族と違って自我はない」
戦うための人形だ、とジルは淡々とした口調で告げる。
まだ5~6歳に見える少女は、無表情のまま上空へ視線を向けた。炎龍と水虎が戦う左側ではなく、わずかに視線は右にそれている。魔力に反応したのだろう。
リシュアと対峙する『氷雷レイリ』の姿があった。露出度が高いビキニタイプの鎧を身に纏ったレイリは、大きな胸を強調するように見せ付ける。その姿にジルとルリアージェは同時に鼻に皺を寄せた。
下品で悪趣味だと指摘するジルの隣で、ルリアージェは声に出さずに願う。大きな胸なんて滅びればいいのに。呪詛に近い強い思いが滲みでるルリアージェの様子に、ライラは首をかしげた。
「どうしたの? リア」
「なんでもない」
即答されたため、それ以上追及できなくなったライラは「そう」と相槌をうった。ほかに選べる言葉が思いつかない。ルリアージェは鋭い視線で上空の女魔性をにらみ付けた。
「何度でも言うけど……オレはリアが理想だから」
大きい胸に見惚れることはないと断言するジルへ、「わかった」と返事をするが顔を向けない。女性にとって胸の大きさがどれほどコンプレックスなのか、男であるジルには理解できなかった。だがルリアージェが気にするなら、二度と女性の胸は見ないようにしようと心に誓う。
「あの女魔性は?」
「一応二つ名があるわ。『氷雷のレイリ』――その名の通り、氷と雷に特化しているの」
「二つの属性を?」
「ええ、彼女はどの魔王にも組していないわ」
魔王の派閥に属して眷属となれば、己の主に属した魔法や魔術を使う。だが彼女は氷が得意な水の魔王にも、雷を司る風の魔王にも属さなかった。龍炎のラヴィアが、火の魔王マリニスに首を垂れないのと同じだ。彼も彼女も己の主として、魔王を認めていない。
「リシュアは大丈夫か?」
「植物なら、あたくしの得意分野ね」
大地の精霊王の娘はそう告げると、ジルの腕に絡みつく蔦へ触れて魔力を流した。強大な魔力を浴びて蔦を伸ばす薔薇に似た花は、ひとつの実をつけて熟し、二つに割れる。零れ落ちたのは新たな種ではなく、精霊のような小さな子供だった。
「可愛い」
喜ぶルリアージェが手を伸ばすと、素直に抱っこされた。抵抗する様子はない。
頭の上にいくつも白い花を咲かせた蔦の冠を載せ、真っ白なドレスを身に纏っている。髪は緑で、肌は薄い茶色だった。手は人と同じなのに、足は引っこ抜いた根のように複数に分かれている。
「これを龍やら虎の形で作るか、人型で作るかだ。今回は人に似せたが、眷族と違って自我はない」
戦うための人形だ、とジルは淡々とした口調で告げる。
まだ5~6歳に見える少女は、無表情のまま上空へ視線を向けた。炎龍と水虎が戦う左側ではなく、わずかに視線は右にそれている。魔力に反応したのだろう。
リシュアと対峙する『氷雷レイリ』の姿があった。露出度が高いビキニタイプの鎧を身に纏ったレイリは、大きな胸を強調するように見せ付ける。その姿にジルとルリアージェは同時に鼻に皺を寄せた。
下品で悪趣味だと指摘するジルの隣で、ルリアージェは声に出さずに願う。大きな胸なんて滅びればいいのに。呪詛に近い強い思いが滲みでるルリアージェの様子に、ライラは首をかしげた。
「どうしたの? リア」
「なんでもない」
即答されたため、それ以上追及できなくなったライラは「そう」と相槌をうった。ほかに選べる言葉が思いつかない。ルリアージェは鋭い視線で上空の女魔性をにらみ付けた。
「何度でも言うけど……オレはリアが理想だから」
大きい胸に見惚れることはないと断言するジルへ、「わかった」と返事をするが顔を向けない。女性にとって胸の大きさがどれほどコンプレックスなのか、男であるジルには理解できなかった。だがルリアージェが気にするなら、二度と女性の胸は見ないようにしようと心に誓う。
「あの女魔性は?」
「一応二つ名があるわ。『氷雷のレイリ』――その名の通り、氷と雷に特化しているの」
「二つの属性を?」
「ええ、彼女はどの魔王にも組していないわ」
魔王の派閥に属して眷属となれば、己の主に属した魔法や魔術を使う。だが彼女は氷が得意な水の魔王にも、雷を司る風の魔王にも属さなかった。龍炎のラヴィアが、火の魔王マリニスに首を垂れないのと同じだ。彼も彼女も己の主として、魔王を認めていない。
「リシュアは大丈夫か?」
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