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第九章 魔の森

第23話 魔の森のお茶会(11)

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 魔物を閉じ込めた球体だとは分かるが、先ほどから濁っている。青や緑を帯びていた球体の中が徐々に赤く、やがて黒に近い色に変わる様は興味を引かれた。

「ああ、襲撃者の残りを結界で『遮断』したんだ」

 遮断……閉じ込めたという意味に取ったルリアージェは深く考えずに「そうか」と納得した。しかし意味を知るライラは溜め息をつく。

 遮断した――簡単に説明されたが、要は世界から隔離したという意味だ。魔族は基本的に散らされても元に戻れる生き物であり、ジルは止めを差さずに彼らを隔離した。

 空気も時間もない結界内で、魔物は死んで魔力を散らすだろう。そして結界により隔離された空間で魔力は再び核に集まり、魔物は復活する。だが同じ空間の中でまた殺されるのだ。繰り返す終わりのない生と死は、襲撃した魔物に対するジルのだった。

 彼にとって、罰ですらない。邪魔だから隔絶した結界に閉じ込めただけ。その結果を知りながら、虫の羽を千切るように残酷な子供の意識で放置する。

『我は還っても構わぬか?』

 アズライルの問いかけに、ジルは少し考える。それから左手を伸ばして柄を掴んだ。

「毎回呼ぶの不便だから、こっちにいたら?」

『呼べばいつでも応えるが』

 言外にこちらの世界にいたくないと示されれば、これ以上引き止める理由はない。あっさりと柄を離した。宙に浮いた鎌はそのまま風景に溶けるように薄くなって消える。

「あいつ、付き合い悪いよな」

「しかたないでしょう。モノなんだから」

 者でもなく、物でもない。意思がある武器は、世界の核を生み出した闇帝あんていの手にあったと謳われる伝説の存在だ。

「さて、お茶も終わったしお祭りに行きましょう♪」

 浮かれたライラの提案に、ジルも「そうだな」と同意する。しかしルリアージェは不安に駆られていた。

 もしかしたら、アスターレン同様サークレラにも『災厄』を持ち込もうとしているのではないか?

「リア、手を取って」

 ジルに促されて素直に手を取る。後ろのテーブルや食器を片付けてジルの亜空間に放り込んだライラは、少女の外見に似合わぬ豪快な所作で手を叩いた。

「片付けは終わったわ」

 狐に似た大きな尻尾を左右に振るライラが足元に魔法陣を描く。彼女の緑の魔力が魔法陣にいきわたるより早く、ジルは己の足元に出現させた魔法陣で転移した。
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