【完結】紅く染まる夜の静寂に ~吸血鬼はハンターに溺愛される~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

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第6章 狙われた同胞を救え

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※流血表現があります。

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 濃厚な血の臭いに惑わされない吸血鬼を見たのは、ハンターである彼らも初めてだった。理性を保ち、自らの意思をはっきりと表明する。僅かな血に狂喜乱舞して襲い掛かる、低レベルの吸血鬼しか相手にしていないハンターにとって、リスキアやシリルのような存在は信じ難かった。

「リスキア、手伝おうか?」

 断られると承知で、一応声だけはかけておく。そんなライアンのニュアンスを間違いなく汲み取り、彼は首を横に振った。

「必要ない」

 血に濡れた右手を一振りし、上段に構える。完全に格下だと見下した態度に、ようやく我に返ったハンターが武器を取り出した。用心深く隙を探る彼らの構えを見れば、どうやってもリスキアに敵う筈がない。

「じゃ、後はよろしく」

 軽い口調でアイザックに近づこうとしたライアンが、すっと一歩だけ退いた。左側から目の前を掠めたナイフが、右奥の壁に当たって床に落ちる。カランと響いた金属音に、目を細めたライアンが振り向いた。

「裏切るのかッ!」

「吸血鬼の言いなりになるなんて」

 口々に叫ぶハンターの中、無言でナイフを投げたシャルルへ物騒な眼差しを送る。人を人と思わない、感情を窺わせないライアンの冷めた青紫の瞳は、まるでガラス玉のように光を弾いた。

「……オレに用があるようだな」

 抱き上げていたシリルを下ろし、アイザックの傍にいるように頼む。素直に頷いたシリルが身を翻すのを待って、死神と渾名あだなされた元ハンターは床からナイフを拾い上げた。

 普段自分が使うものより軽いが、使い勝手は良さそうだ。数回手の中で弄び、慣れた仕草で柄を握った。シリルと知り合ってから、何人のハンターを退けただろうか。すでに数え切れないほどの血に染まった左手を、かつての弟子へ向けてゆっくりと突き出した。

「命賭けで来い」

 無言で飛びかかるシャルルの攻撃を紙一重で避けていく。

 一見するとシャルルが押しているようだが、実際のところはライアンの手のひらの上で踊らされていた。それを見抜いたシリルは、再び床に崩れているアイザックに向き直る。心配そうに手を伸ばせば、いつもの柔らかい光を湛えた緑の瞳が「心配ない」と伝えてきた。

 ぎりぎりで避けながら、ライアンの口元に浮かんだ余裕の笑みは消えない。
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