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第5章 悪魔は女神を踊らせる
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お茶を用意し、とりあえず茶菓子もつけて差し出す。
「ありがとうございます」
にっこり微笑むリンカティーナは、むっとしているシリルを気にした様子もなく、紅茶のカップを口元へ運んだ。
「あら、アッサムかしら」
躊躇う仕草もない彼女は、ある意味『強者』である。キツいシリルの視線を無視しながら、笑顔で焼きたてスコーンを味わっていた。
「シリル、機嫌直せよ」
困ったと顔に書いたライアンの声色に、シリルの怒りは恋人へ向かう。
「お前が連れてきた客だ。俺は知らない」
我が侭に言い切った恋人が立ち上がり、部屋を出て行くのをライアンは溜め息で見送った。
「悪ぃな」
「いえ、私が原因でしょう?」
申し訳ないわと謝罪されてしまえば、ライアンも苦笑するしかない。すぐに機嫌を直す方法は知っているが、だからといって女性をいきなり森の奥に放置もできなかった。
構えば構うほど、シリルの機嫌が悪くなるんだけど……しょうがない。
「ところで、リンカティーナさんは」
「リンカティーナで結構ですわ」
「あっそ、じゃあリンカティーナは何故こんな森の中にいたの?」
「……実は、ニクスとはぐれてしまいましたの」
聞き慣れない名前に、宙を睨む。結局首を傾げたライアンは、素直に目の前の栗毛美女に聞くことにした。
「ニクスって?」
「彼女ですわ」
指差された先で空中に浮いている銀髪女性に、ライアンは顔を引き攣らせる。シリルと一緒に暮らして早十数年、いまさら超常現象に驚くほどウブじゃないが……突然現れた侵入者に溜め息をついて手を差し伸べた。
「とりあえず、地上に降りてお茶にしません?」
当然とばかり手を取ってエスコートされたニクスは、すぐにリンカティーナの足元に駆け寄って膝をついた。気の強そうな美女だと思っていたので、跪く姿はライアンにとって意外で……。
「ああ、リンカティーナ様。ご無事でよかった。どれほど心配したか」
「ごめんなさい。ニクス」
会話にさらに驚いた。シリルの結界を無視して乱入したニクスが何の種族なのか知らないが、人間じゃないのは確実だ。その彼女が膝を折って『様』付けするってことは
―――リンカティーナも人間じゃない?!
「ありがとうございます」
にっこり微笑むリンカティーナは、むっとしているシリルを気にした様子もなく、紅茶のカップを口元へ運んだ。
「あら、アッサムかしら」
躊躇う仕草もない彼女は、ある意味『強者』である。キツいシリルの視線を無視しながら、笑顔で焼きたてスコーンを味わっていた。
「シリル、機嫌直せよ」
困ったと顔に書いたライアンの声色に、シリルの怒りは恋人へ向かう。
「お前が連れてきた客だ。俺は知らない」
我が侭に言い切った恋人が立ち上がり、部屋を出て行くのをライアンは溜め息で見送った。
「悪ぃな」
「いえ、私が原因でしょう?」
申し訳ないわと謝罪されてしまえば、ライアンも苦笑するしかない。すぐに機嫌を直す方法は知っているが、だからといって女性をいきなり森の奥に放置もできなかった。
構えば構うほど、シリルの機嫌が悪くなるんだけど……しょうがない。
「ところで、リンカティーナさんは」
「リンカティーナで結構ですわ」
「あっそ、じゃあリンカティーナは何故こんな森の中にいたの?」
「……実は、ニクスとはぐれてしまいましたの」
聞き慣れない名前に、宙を睨む。結局首を傾げたライアンは、素直に目の前の栗毛美女に聞くことにした。
「ニクスって?」
「彼女ですわ」
指差された先で空中に浮いている銀髪女性に、ライアンは顔を引き攣らせる。シリルと一緒に暮らして早十数年、いまさら超常現象に驚くほどウブじゃないが……突然現れた侵入者に溜め息をついて手を差し伸べた。
「とりあえず、地上に降りてお茶にしません?」
当然とばかり手を取ってエスコートされたニクスは、すぐにリンカティーナの足元に駆け寄って膝をついた。気の強そうな美女だと思っていたので、跪く姿はライアンにとって意外で……。
「ああ、リンカティーナ様。ご無事でよかった。どれほど心配したか」
「ごめんなさい。ニクス」
会話にさらに驚いた。シリルの結界を無視して乱入したニクスが何の種族なのか知らないが、人間じゃないのは確実だ。その彼女が膝を折って『様』付けするってことは
―――リンカティーナも人間じゃない?!
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