【完結】紅く染まる夜の静寂に ~吸血鬼はハンターに溺愛される~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)

文字の大きさ
上 下
20 / 92
第3章 守護者の見極めと嫉妬

20

しおりを挟む
「どうした? シリル」

 腕を伸ばしてシリルを抱き寄せ、少し低い位置にある紅い瞳の上に接吻ける。不満そうな態度が嫉妬に見えて、嬉しくなって頬にもキスを贈った。

「……なんでも、ない」

「愛してるよ」

 囁いて唇を重ねれば、シリルがぎゅっと首に手を回した。身長差の所為で引き寄せられ、そのまま腰に手を回して抱き上げてやる。

 甘えた仕草は珍しく、常に2人でいると嫉妬さえ忘れてしまうのだと、今更ながらに思い知った。出会った当初のシリルの無表情の意味が、ようやく実感できる。長い時間を生きていると、徐々に感情が刺激されなくなり希薄になるのだろう。

「……これが、あのシリル・ヴィンクヴィストとは……到底信じられん」

 愕然とした様子のリスキアに首を傾げるライアンは、以前のシリルを知らない。だからリスキアの驚きは実感がなく、そんなに違ったのだろうか? と疑問が浮かぶ程度だった。

 首筋に唇の温もりを感じたライアンは、そっとシリルを抱え直した。

 触れやすいよう、頚動脈を晒してやれば、血を飲み下す微かな音が聞こえる。鼓動の音に似て安心できる音――本来自分の血を分け与えることは、死に繋がる恐怖を生む筈なのに、正反対の想いが込み上げていた。

 この血がシリルの体を生かしていると知っているから、吸血行為はキスと同じ愛情を伝える行為でしかない。

 ライアンの血を飲んで頬を桜色に染めるシリルを下ろしてやると、右手の爪で左手首を軽く切る。シリルの行為を予想していたライアンは、少し眉を顰めたものの無言で見守った。

「リスキア、傷を」

 差し出される左手をリスキアの右手の傷の上に置く。垂れた血が癒していく傷口は、瞬く間に消えてしまった。完全に傷が消えると、シリルは無造作に左手をライアンに差し出す。

「ライアン」

 恭しく接吻けて、表面の血を舐め取った。シリルの傷はリスキアのそれより早く消えてしまう。ライアンの体液が持つ治癒能力は、吸血したシリルにも遺憾なく発揮されていた。

「助かった」

 アイザックの礼を受け流し、ライアンは格闘の所為で荒れた室内を見回し、廊下を目で指し示す。

「奥でお茶でも飲もうぜ。ここは散らかり過ぎだ」

 同意した3人を伴って、部屋を後にした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

【完結】うたかたの夢

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
 ホストとして生計を立てるサリエルは、女を手玉に取る高嶺の花。どれだけ金を積まれても、美女として名高い女性相手であろうと落ちないことで有名だった。冷たく残酷な男は、ある夜1人の青年と再会を果たす。運命の歯車が軋んだ音で回り始めた。  ホスト×拾われた青年、R-15表現あり、BL、残酷描写・流血あり  ※印は性的表現あり 【重複投稿】エブリスタ、アルファポリス、小説家になろう 全33話、2019/11/27完

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

偏食の吸血鬼は人狼の血を好む

琥狗ハヤテ
BL
人類が未曽有の大災害により絶滅に瀕したとき救済の手を差し伸べたのは、不老不死として人間の文明の影で生きていた吸血鬼の一族だった。その現筆頭である吸血鬼の真祖・レオニス。彼は生き残った人類と協力し、長い時間をかけて文明の再建を果たした。 そして新たな世界を築き上げた頃、レオニスにはひとつ大きな悩みが生まれていた。 【吸血鬼であるのに、人の血にアレルギー反応を引き起こすということ】 そんな彼の前に、とても「美味しそうな」男が現れて―――…?! 【孤独でニヒルな(絶滅一歩手前)の人狼×紳士でちょっと天然(?)な吸血鬼】 ◆ダブル主人公・人狼と吸血鬼の一人称視点で交互に物語が進んでゆきます。 ◆現在・毎日17時頃更新。 ◆閲覧ありがとうございます。小説投稿は初めてですがのんびりと完結まで書いてゆけたらと思います。「pixiv」にも同時連載中。 ◆未来、エチエチシーンは部分的に挿絵や漫画で描けたらなと考えています☺

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

処理中です...