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07.婚約解消の確定が先よ
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魔王陛下と竜帝陛下には、明日以降時間をとってお話しする約束をしました。だって、王宮内でこれ以上壁や天井を壊されたら、被害額が大変なことになります。実家が公爵家だからって、無駄遣いするのはいけないわ。
「明日の午前中だな? 必ず参るゆえ、楽しみしておれ」
「承知しました、魔王陛下」
嬉しそうに笑った魔王陛下のお姿が消えます。魔法って素晴らしいですね。やっと魔力による拘束から解かれたお兄様達が、がくりと膝を突きました。同じ姿勢って地味に疲れますもの、わかります。
「あの魔王の後というのは気に食わんが、我が乙女の言葉なら仕方あるまい。午後すぐに顔を出そう」
「ええ、お待ちしています。竜帝陛下」
穏やかに見送られた竜帝陛下は、来た時と同じく窓の外へ飛び去りました。何か強制力が働いていたのか、この時点でようやく警護の兵士が飛び込んできます。遅いですわ。
「国王陛下と王妃殿下にお会いしたいので、その旨をお伝えいただけますか?」
ここで私が最初にしなくてはいけないこと。魔王陛下の乱入で中断されましたが、王妃殿下にお返事をして、婚約が解消されたことを国王陛下に念押ししなくてはいけません。
「ドラゴンが出たと聞いた! 我が姫は無事か」
「あなたの姫はいませんわ、イアン王太子殿下」
遅いです、完全に出遅れています。おかしいですね。私は悪役令嬢ですから、ヒロイン不在でも『満開の花が咲く丘』が最優先のはずでした。乱入した混線バグのラノベやゲームに、こちらの登場人物が負けるのは情けない限りです。まあ過ぎたことを言っても仕方ありません。
まずは身支度を整え、謁見していただく必要があります。ドラゴンやら魔王が攻めて来たとパニックのところ申し訳ないですが、今日中に屋敷に戻らなくてはなりませんし。
着替えようとして、壊れた窓と足元でぐったりしているお兄様達に気づきました。
「お兄様、着替えのドレスを探して来てください。アル兄様やイアン王太子殿下はお外へ。早く!!」
追い立てて男性を放り出し、窓はひとまずカーテンで覆ってもらいました。壁の一部も壊れたので歪ですが、外から覗かれなければ構いません。お使いに出したお兄様が用意したドレスに袖を通し、侍女達に化粧と髪型を整えてもらったところに、ちょうどお声が掛かりました。
「国王陛下と王妃殿下がお会いになるそうです」
「ただいま参りますとお伝えくださいね」
穏やかに微笑んで、お兄様のエスコートで王宮の廊下を進む。お父様が領地に戻っておられてよかった。もしあの夜会に居られたら……ぞっとします。文官のトップに立つ人ですが、騎士団長ですか? と聞かれるほど鍛えた肉体で、王太子殿下を吊し上げるに決まってますもの。
穏便に、確実なものとして婚約を無かったことにいたしましょう。そして明日のことは……明日考えます。
「明日の午前中だな? 必ず参るゆえ、楽しみしておれ」
「承知しました、魔王陛下」
嬉しそうに笑った魔王陛下のお姿が消えます。魔法って素晴らしいですね。やっと魔力による拘束から解かれたお兄様達が、がくりと膝を突きました。同じ姿勢って地味に疲れますもの、わかります。
「あの魔王の後というのは気に食わんが、我が乙女の言葉なら仕方あるまい。午後すぐに顔を出そう」
「ええ、お待ちしています。竜帝陛下」
穏やかに見送られた竜帝陛下は、来た時と同じく窓の外へ飛び去りました。何か強制力が働いていたのか、この時点でようやく警護の兵士が飛び込んできます。遅いですわ。
「国王陛下と王妃殿下にお会いしたいので、その旨をお伝えいただけますか?」
ここで私が最初にしなくてはいけないこと。魔王陛下の乱入で中断されましたが、王妃殿下にお返事をして、婚約が解消されたことを国王陛下に念押ししなくてはいけません。
「ドラゴンが出たと聞いた! 我が姫は無事か」
「あなたの姫はいませんわ、イアン王太子殿下」
遅いです、完全に出遅れています。おかしいですね。私は悪役令嬢ですから、ヒロイン不在でも『満開の花が咲く丘』が最優先のはずでした。乱入した混線バグのラノベやゲームに、こちらの登場人物が負けるのは情けない限りです。まあ過ぎたことを言っても仕方ありません。
まずは身支度を整え、謁見していただく必要があります。ドラゴンやら魔王が攻めて来たとパニックのところ申し訳ないですが、今日中に屋敷に戻らなくてはなりませんし。
着替えようとして、壊れた窓と足元でぐったりしているお兄様達に気づきました。
「お兄様、着替えのドレスを探して来てください。アル兄様やイアン王太子殿下はお外へ。早く!!」
追い立てて男性を放り出し、窓はひとまずカーテンで覆ってもらいました。壁の一部も壊れたので歪ですが、外から覗かれなければ構いません。お使いに出したお兄様が用意したドレスに袖を通し、侍女達に化粧と髪型を整えてもらったところに、ちょうどお声が掛かりました。
「国王陛下と王妃殿下がお会いになるそうです」
「ただいま参りますとお伝えくださいね」
穏やかに微笑んで、お兄様のエスコートで王宮の廊下を進む。お父様が領地に戻っておられてよかった。もしあの夜会に居られたら……ぞっとします。文官のトップに立つ人ですが、騎士団長ですか? と聞かれるほど鍛えた肉体で、王太子殿下を吊し上げるに決まってますもの。
穏便に、確実なものとして婚約を無かったことにいたしましょう。そして明日のことは……明日考えます。
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