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125.抱えきれなかった秘密
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魔族は皇族を失うと、全員がその命を絶たれる。これは呪いのひとつだ。
僕が神として魔族を庇護する中で、彼らは僕の魔力の影響を受けて変質した。
力を蓄え、その力を他者の弾圧に使い始める。魔族の中で弱い者を攻撃し、続いて他種族へ戦いを挑もうとした。妖精族や人族を守護する神々が、それを許すはずがない。攻撃を跳ね返した神の怒りが、呪いとなって魔族を覆った。
「その時ね、僕は何もしなかった。吸血鬼王を始めとする魔族が呪われるのを、ただ見ていたんだよ」
ここで僕は一度魔族を見捨てた。だが外へ力を向けられないなら、内側へと攻撃の矛先が向かう。新たに虐げられたのは、他種族との間に生まれた子だった。ミランダはこれに当たる。妖精族の血を引く彼女は、魔族の特徴が強く出ていた。
家族に攻撃された彼女は、戦う決意をする。挑んだ彼女が敗れたのは当然で、僕はそれを許さなかった。もう一度戦わせるために大量の力を与え、ミランダを変質させたんだ。守護神となった僕が、魔族を直接滅ぼすことは神々の盟約に反する。だから彼女の手を借りた。
神の代理人として戦ったミランダは勝利し、吸血鬼王とその家族が滅びた。ここまではミランダも想定していただろう。吸血種は、始祖となる王が滅びれば一族は道連れだ。しかし、ここで神の呪いが発動した。
「呪ったのは、狐神と犬神。どちらも強力な呪詛を吐いた」
王が死ねば、民が道連れになるように。強大な力を誇る魔族が、次々と息絶えた。結果を知りながら、僕は間接的に魔族を滅ぼしたんだ。当時、生き残ったのは混血した魔族ばかり。
純粋な魔族は消えた。ミランダも混血だから生き残り、今度は彼女が皇帝として祭り上げられる。新たな魔族の誕生だ。純粋ではないから魔力は弱く、不安定だった。彼女に請われて、新たな魔族の庇護を約束したよ。
エリュとベリアルの顔を見ず、シェンは一気に語った。己の罪を告白するというより、何かの物語を話すように。
「シェン様、もしかして」
「ああ。神々の呪いはまだ生きている。魔族が完全に滅びたら呪いも消えたんだけどね。混血の魔族が生き残った。だから、皇帝になったミランダの血族が途絶えると、今の魔族も滅びるだろう」
ベリアルの懸念を肯定した。僕が新たな皇族を迎え入れたのは、幼いエリュにこの業を背負わせたくなかったから。彼女のせいで滅びたなんて言わせたくない。シェンの言葉を黙って聞いていたエリュが、手を伸ばした。
シェンの頬に触れて、撫でるように動かす。
「泣いて。そうしたら楽になるから」
言われて驚く。この子は話の残虐さや、己の過酷な運命を嘆いていない。友人であるシェンの気持ちを押し測ったのだ。苦しい気持ちを吐き出して、楽になって欲しいと。蛇神という守護神だからではない。友人であり仲間である自分への気遣いに、シェンの頬を涙が濡らした。
「シェンは頑張ってるもん。私はそんなシェンが好きだよ」
ミランダが過去に口にした言葉が過ぎった。あの時、彼女も同じような意味で告げたのだろうか。今になってその響きが胸に満ちる。
――君が何を選んでも、私は君の味方だ。
僕が神として魔族を庇護する中で、彼らは僕の魔力の影響を受けて変質した。
力を蓄え、その力を他者の弾圧に使い始める。魔族の中で弱い者を攻撃し、続いて他種族へ戦いを挑もうとした。妖精族や人族を守護する神々が、それを許すはずがない。攻撃を跳ね返した神の怒りが、呪いとなって魔族を覆った。
「その時ね、僕は何もしなかった。吸血鬼王を始めとする魔族が呪われるのを、ただ見ていたんだよ」
ここで僕は一度魔族を見捨てた。だが外へ力を向けられないなら、内側へと攻撃の矛先が向かう。新たに虐げられたのは、他種族との間に生まれた子だった。ミランダはこれに当たる。妖精族の血を引く彼女は、魔族の特徴が強く出ていた。
家族に攻撃された彼女は、戦う決意をする。挑んだ彼女が敗れたのは当然で、僕はそれを許さなかった。もう一度戦わせるために大量の力を与え、ミランダを変質させたんだ。守護神となった僕が、魔族を直接滅ぼすことは神々の盟約に反する。だから彼女の手を借りた。
神の代理人として戦ったミランダは勝利し、吸血鬼王とその家族が滅びた。ここまではミランダも想定していただろう。吸血種は、始祖となる王が滅びれば一族は道連れだ。しかし、ここで神の呪いが発動した。
「呪ったのは、狐神と犬神。どちらも強力な呪詛を吐いた」
王が死ねば、民が道連れになるように。強大な力を誇る魔族が、次々と息絶えた。結果を知りながら、僕は間接的に魔族を滅ぼしたんだ。当時、生き残ったのは混血した魔族ばかり。
純粋な魔族は消えた。ミランダも混血だから生き残り、今度は彼女が皇帝として祭り上げられる。新たな魔族の誕生だ。純粋ではないから魔力は弱く、不安定だった。彼女に請われて、新たな魔族の庇護を約束したよ。
エリュとベリアルの顔を見ず、シェンは一気に語った。己の罪を告白するというより、何かの物語を話すように。
「シェン様、もしかして」
「ああ。神々の呪いはまだ生きている。魔族が完全に滅びたら呪いも消えたんだけどね。混血の魔族が生き残った。だから、皇帝になったミランダの血族が途絶えると、今の魔族も滅びるだろう」
ベリアルの懸念を肯定した。僕が新たな皇族を迎え入れたのは、幼いエリュにこの業を背負わせたくなかったから。彼女のせいで滅びたなんて言わせたくない。シェンの言葉を黙って聞いていたエリュが、手を伸ばした。
シェンの頬に触れて、撫でるように動かす。
「泣いて。そうしたら楽になるから」
言われて驚く。この子は話の残虐さや、己の過酷な運命を嘆いていない。友人であるシェンの気持ちを押し測ったのだ。苦しい気持ちを吐き出して、楽になって欲しいと。蛇神という守護神だからではない。友人であり仲間である自分への気遣いに、シェンの頬を涙が濡らした。
「シェンは頑張ってるもん。私はそんなシェンが好きだよ」
ミランダが過去に口にした言葉が過ぎった。あの時、彼女も同じような意味で告げたのだろうか。今になってその響きが胸に満ちる。
――君が何を選んでも、私は君の味方だ。
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